2018.05.29
仕事中にツイッターをやってもいい?―― けんすうさんと考える、遊びの延長で働く7つのヒント

仕事中にツイッターをやってもいい?―― けんすうさんと考える、遊びの延長で働く7つのヒント

Twitterの『質問箱』で多くの質問に答えることでも話題となった「けんすう」こと古川健介さん。多い時には1日10件近い質問に回答。その時間もまちまち。仕事中もずっとツイッターをやっているのでは…という疑いも。なぜやっている? できている? そこから見えてきたのは遊びの延長として働くヒントだった―。

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「遊び」と「仕事」の境をなめらかする、7つのヒント
・趣味ツイートは仕事になる
・仮説を持ってやった方が楽しい
・アイデアは一旦忘れる
・「手段のための目的」の方が頑張れる
・習慣化は9割失敗する
・今は「行動する人」が有利な時代
・ヒット率が低くてもサービスを作り続ける

趣味ツイートは仕事になる

古川健介さん古川健介。Supership株式会社取締役。1981年生まれ。学生コミュニティの「ミルクカフェ」レンタル掲示板「したらばJBBS」、ハウツーサイト「nanapi」などのWebサービスを生み出したWebクリエーター。

ツイッターのイメージが強く、「ツイッターに住んでる?」「非実在?」という憶測まで飛んだけんすうさん。なぜ、昼夜問わず、ツイッターをやり続けているのだろう。

「ふざけて“ツイッターの合間に仕事をしています”と言っていたんですけど、怒られちゃうので今ではあまり言わないようになりました(笑)。ただ、そこまでたくさんつぶやいている自覚はないんですよね。朝だったり、隙間だったり、余裕ができた時間に、楽しいからやっているだけだったりします。だから仕事をサボっているわけではないんですよ。違うんですよ。誤解なんです。本当に。仕事はちゃんとしています。仕事をサボっているわけではありません。誤解です。大丈夫です。」

つぶやきの内容もさまざま。そもそもけんすうさんにとって遊びや趣味と、仕事に大きな差はないのかもしれない。

「遊びではじめたことでも仕事っぽくなっていったりします。例えば“この漫画を読んでいます”とつぶやいたら、出版社さんから「漫画についてインタビューしたい」とお声がけいただいたり、“『nanapi』で漫画の記事を書いてください”と社員から依頼されたり。」

ユーザーの気持ちや反応を知る。そのためにもツイッターは重宝する。

「サービスをリリースした時も、すぐにユーザーの反応が知れるし、ツイッターを見ていくのは重要だと思います。ただ、ツイッターは目的意識があってやってきたわけではなく、ずっとダラダラやっていて。やっと昨年くらいから“どうすればフォロワーを10万人まで増やせるだろう”と思い立って、いろいろと実験したりはしましたが。」

仮説を持ってやったほうが楽しい

古川健介さん

そして、2017年初頭には10万人に満たなかったツイッターのフォロワー数は、2018年5月現在13万6000人超へ。

目標を立てて、どう達成するか、試行錯誤のプロセスを楽しんでいるといってもいいのかもしれない。それは『質問箱』も同じだ。

「やるからにはなにかしら仮説をもってやったほうが楽しいかなと思っています。『質問箱』をがんばると、フォロワーの中でも“なんとなく情報を欲しい”という人は減り、熱量の高い学生が残るんじゃないか?という仮説は持ってやってました。実際DMとかの内容も変わってきたので、だいたい合っていたと思います」

ちなみに来る質問は、キャリアの相談から恋愛相談まで幅広い。

「彼氏がひどいのだけれど、こういう点があるので別れられませんどうしたらいいですか?って質問が来まして、そういう人たちって、絶対数年以内に別れるから、別に今別れてもあんまり変わらないですよって回答をしたんです。その質問では時間軸をどう見るかっていう話なのかなと思って、回答しました」

アイデアは一度忘れる

古川健介さん

もうひとつ、けんすうさんならではのツイッターの使い方がある。

「アイデアも思いついたらツイッターでもブログでもすぐアウトプットするようにしてます。それで一回、忘れちゃうようにする」

それは頭の中のアイデアを外に仮置きするイメージだという。

「頭の中に考えとかがあると、それ以上の考えが浮かばない。脳はハードディスクというよりメモリーみたいなものだと思っています。メモリーに情報ってたくさん置いておけないですよね。重くなって処理が遅くなっちゃうので。あとでブログやツイッターから引き出していく。検索してなるほどなと思って読んだ記事が、実は自分の書いたものだったこともありましたね(笑)」

「手段のための目的」のほうが頑張れる

古川健介さん

どうやらけんすうさんのモチベーションは、目的を達成することではなく、どうその目的を達成するか。プロセス・手段に目を向けているようにも感じる。以前、こんな話もしてくれた。


最終的な「主なる目的を入れ替える」ことが楽しいんじゃないかな。「目的のための手段」ではなく、「手段のための目的」のほうが頑張れることに気付きました。”僕変わっていますよアピール”みたいで恥ずかしいので、普段はほとんど言わないんですけどね(笑)。
https://careerhack.en-japan.com/report/detail/833

「目的があるものに対して、エネルギーがあんまり出ないんですよね。「HUNTERXHUNTER」という漫画があって、それでも似たようなことが書いてありました。主人公の父親が、最初はある目的にむかって冒険をしていたんだけれども、いろんな仲間が集まったり、みんなで一生懸命やったというそのプロセスこそが宝物だぞ、みたいなシーンです」

なかなか人生で成すべき目的なんて見つかるものではない。けんすうさんが言うように、その都度、プロセスを楽しむのもいいのかもしれない。

「目的が大事、とよくいったりするんですが、人生に目的がある人ってそこまで多くないと思っています。せいぜい、1~2割じゃないでしょうか。みんながみんな、人生を掛けてまで何かを成し遂げたいってわけじゃないですからね」

習慣化は9割失敗する

古川健介さん

以前、“モチベーションでパフォーマンスが左右されるのはプロではない―”ということを聞いたことがある。理屈はわかるものの…どうしてもモチベーションの低下を実感してしまうことも。そんな時、習慣がそれを補ってくれる。

「疲れている時とか、ストレスが高い時って“無意識の習慣”における行動率が増えるらしいんです。そういう意味でもよい習慣を増やしておくのがいいと思います。モチベーションが低いと生産性が下がる。生産性が下がると忙しくなる、忙しくなると生産性が下がる…こういったネガティブループに入らないためにも」

ただ、そう簡単に習慣化できないもの。その時、まずは簡単なことからはじめる、行動を変えていくといい。筋トレを例に話をしてくれた。

「ハードルの低いことからやっていくのがいいと思うんです。筋トレなら、まずは“あの場所でウデ立てしよう”と思いながら“見るだけ”でもいい、としちゃいます。目線を変えるだけなので、たぶん誰でもできます。

そして、その次はその場所に立つ。ウデ立ての姿勢になる。そんな風に少しずつステップを踏んで、毎日ウデ立てをするところまで持っていく。あとはやりはじめるたらやる気が出てくるので、できちゃったりします。部屋の掃除もやり始めるまでは億劫ですが、やり始めると止まらない。人は何かを始めると惰性で動くから、止める方が面倒くさい感じてしまうんですね」

ただ、気をつけたいのが「気張らない」ということ。

「まあでも習慣化って9割失敗します(笑)筋トレも100回ぐらい挑戦して、どこかで1回習慣化できればいいくらいに僕は思っています」

今は「行動する人」が有利な時代

古川健介さん

考え方ではなく、行動を変える。行動をする。そんなコツについて教えてくれたけんすうさん。特に今は「行動する人」と「しない人」の差が激しい時代でもあるという。

「仮想通貨が流行ったときに、“あれ?何か面白そうだぞ”ってすぐに仮想通貨のブログを始めましたみたいな人の方がキャリアが開けていますよね。昔に比べて行動するコストは低く、でもやる人はむしろ減っている感じがします。リターンは大きくて、チャンスの数も増えている。相対的に行動する人の方が有利なゲームになっているのだと思います」

ただ、注意したいポイントも。

「起業家の中には適当に行動しちゃう人がいたりします。リスクを取るのは大事とよくいわれますが、リスクって避けるものでも、むやみにとるものでもないと思っているんですよね。大事なのは、リスクが管理できていることだと思っています。リスクはあるものだと理解して、不慮の事態も想定しておく。リスクが管理できていれば、より大胆な行動が出来ますよね。」

あとはどこに飛び込むか。何を面白がれるか。

「今ってどんどん遊び感覚で仕事をして、すごいパフォーマンスを発揮する人たち増えていて。そういう人が勝つゲームだと思うんです。嫌なことも努力でカバーしまう、という能力では太刀打ちができないですよね。なぜなら楽しんでやる人は、1日15時間とか、20時間とか平気でぶっこんできますから。そう思うと、未来も今も、自分にとって楽しいと思えることをとことんやるほうが有利なのだと思います。」

ヒット率が低くても、サービスを作りつづける。

古川健介さん

けんすうさん自身の“サービスづくりも遊びの延長”だ。

「これはあまり言っていないですが、こういうサービスがあったらどうかな?というのをプライベートでも知人にアイデアを渡して、サービスを作って出してもらったりしています。気になったものは試したいというか。遊びで得られた知見のほうが大切だったりもするので。別に利益はなくても、そのアイデアを実現した結果、どうなるかを見たいだけだったりします。」

この考え方は20代の頃に培われた部分も大きい。

「僕が20歳前後くらいに会っていた人たちが大きいかもしれません。彼らって別にお金儲けがしたいからとかじゃなくて、コレあったら面白そうっていう感覚でモノづくりをしていて。面白そうだったら作れば良い、流行らなくてもリスクは無い、当たったら面白い。本当にそれだけなんですよね。意外と無用な心配をしてやらないケースって多い。それが一切無かったのは良かったですね。僕も何かしらずっと作っている。ヒット率が低くても、作っていると分かることがたくさんありますから。」

「遊び」と「仕事」の境をなめらかする、7つのヒント

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photo by Kohei Otsuka


文 = 白石勝也
編集 = まっさん


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