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STORYS.JPチームがビットコイン事業を始めたワケ|スタートアップの人・物・金・時間を再考する。

2014-10-10

STORYS.JPチームがビットコイン事業を始めたワケ|スタートアップの人・物・金・時間を再考する。

スタートアップが軌道に乗ったプロダクトとは別の新規事業を立ち上げる可能性とは?ビットコイン事業をローンチしたSTORYS.JPチームに話を伺った。スタートアップの新規事業のキーとなる考えは、ヒト・モノ・カネ・ジカンという限られた資産の認識にあった。

「1スタートアップ=1プロダクト」?

「スタートアップならば、一つの事業・プロダクトに集中するのが基本線」

プロダクト名と社名が同一となっている通り、多くのスタートアップは一つのプロダクト、ドメインに注力して急成長を目指す。

nanapiが手掛けるアンサーやクックパッドなどの例は挙げられるが、成長軌道に乗ったプロダクトとは別のサービスを、スタートアップが"新規事業”として手掛ける可能性はあるのか?

そんな疑問を問うべく話を伺ったのは、レジュプレス社CEOの和田氏とCMOの大塚氏。ユーザー投稿型メディア・STORYS.JP(ストーリーズ)を2012年から手掛け、ビットコイン売買・決済サービスcoincheck(コインチェック)を2014年8月にローンチしたチームだ。

スタートアップが新規事業を考えるきっかけとその要件、考え方とは?

スタートアップが新規事業を始めたわけ

― レジュプレスがビットコイン事業に乗り出したのには少し驚きました。STORYS.JPも順調に成長している中で、どうして新規事業を始めようと?


和田:
会社として、成功確率を最大化することを考えた結果、新事業を始めることがベストだと考えました。新規事業をやろうとする前に、メンバーそれぞれの得意分野、投入する時間に対してどれだけの価値が見込めるかということはとことん考えましたね。エンジニアならば、どの開発フェーズが得意なエンジニアか?という感じで。

例えば、これからSTORYS.JPに新機能を追加したり、テクニカルな改善を技術メンバーで継続していくことと、新しいプロダクトをゼロから生み出していくことを天秤にかけた時、後者のほうが圧倒的に高い価値を生み出すのではないかと考えたんです。

スタートアップは人月開発ではないので、どんなエンジニアがどのフェーズの開発に携わるのか?というポイントは重要ではないかと。


レジュプレス CEO&CMO

左:CMO 大塚雄介氏 右:CEO 和田晃一良氏


大塚:
また、STORYS.JPが新しいフェーズに入り、改善サイクルとノウハウの一般化で一定の成長が見込めるようになったことも、この決断を後押ししてくれました。いま中心となっているメンバーはインターンとしてチーム入りしたのですが、ビジネスデベロップメントからフロント開発まで1人でこなせるようになったんです。


― とはいえ、「スタートアップなら一つの事業に集中するのが鉄板」という事も言われます。


大塚:
確かに多くのスタートアップがそうですね。
スタートアップは圧倒的に足りない「ヒト・モノ・カネ・ジカン」という資源を1つの事業に集中することで、事業の成功確率をあげようとします。

しかし、自分たちも思考停止して1つの事業である必要はないという結論に至ったんです。
では、自社の資源(ヒト・モノ・カネ・ジカン)を考えた場合、どの方法が成功確率が高いか?私たちの結論は、成長したメンバーにSTORYS.JPの運営・改善を任せ、和田と私を含めたファウンダー陣は、新たな課題を発見して、自分たちの強みを活かしたプロダクトを、市場が必要としているタイミングで提供するということでした。


和田:
それから1ヶ月近く、お互いに事業案やプロトタイプを制作しました。市場規模・課題の顕在度・テクノロジーの進化・自社の強み等を考慮した結果、ビットコイン事業「coincheck」に注力することにしました。

国内スタートアップのビットコイン事業に勝算はあるか?

― coincheckはSTORYS.JPとは全く違うドメイン。なぜ決済事業をこのタイミングで狙おうと?


和田:
coincheckは、「来るべき未来を予想し、そこに必要なサービスを作る」という未来逆算的なアプローチからサービスを創り出しました。EC市場は、昨年、ヤフーショッピングの無料化や、BASEやSTORES.JPの躍進がありました。これにより、多くの商品やサービスがインターネットで買えるようになりました。今後、ECの領域は飛躍的に拡大していくと思われます。次の課題は、集客と物流と決済です。決済に関しては、予想される未来として、10,000円で商品を売れば、販売した人は10,000円受け取れる世界です。しかし、現在は中間業者の中抜きにより9,000円位しか販売した人は受け取れません。ここに課題が顕在化しています。

イノベーションの歴史を紐解くと、爆発的に伸びるプロダクトの多くは、類似したマーケット環境にあります。例えば顕在化した未解決の課題があったり、プラットフォームの変化・法改正・テクノロジーの革新など。EC決済のマーケットは、まさにこれらの線が交わる点だと思いました。

現状、ビットコインを保有している方の多くは投資目的での購入者や、採掘したエンジニア。まず、その人たちが購入するモノからビットコイン決済は利用されると考えています。そのため、その市場にサービスを提供していきます。また、PaypalやSquareもビットコイン導入に踏みきっており、世界的に見ても、ECの10%位はビットコインが担う時代が、そう遠くない未来に来るのではないかと。

ただビットコインというと、まだまだ不確定要素の多い事業領域で、よくわからないと思われる方も多いですよね。実際、私たちもはじめはそうでした(笑)

レジュプレス CEO&CMO


大塚:
更に、マーケットで自社の経営資源を活かし勝ち抜けるかも重要なポイントです。開発メンバーには、金融の専門知識を持つエンジニア、もの凄い早さでサービスを開発するエンジニアがおり、チームとして最大限のパフォーマンスを発揮できるマーケットであると確信して、このマーケットに参入しました。ビットコインというワードに話題性があるため、そこに目がいきがちですが、最適な解決策が、ビットコインであっただけで、他の最適な解決策があれば、別の解決策でも良かったんです。


― なるほど。STORYS.JPの経験が生きる部分、逆に全く新しいポイントは?


和田:
試行錯誤の段階ですが、ゼロからサービスを立ち上げた経験や起業家たちとの人脈は大いに活用しています。まだまだサービスの改善が必要ですが、大変なことは技術的な部分以上に、法律や慣習といった独自のルールを「知る」ところから始めなければいけなかった部分ですね。


大塚:
そうそう。弁護士の方にビットコインに関しての見解を伺ったり、国会議員に国としてどうビットコインを捉えるかというのをヒアリングしたり。STORYS.JPでは体験し得ない経験を積んでいるところですね。プロダクトをつくり上げるまで、まさか国会議員さんと一緒に何かをやるとは思わなかったですから(笑)。

スタートアップと投資家の関係性

― 少し話題がそれますが…。スタートアップが新規事業をするとなると、投資家への説明責任もある程度負うのではないかと思います。レジュプレス社の場合どんなやりとりがあったんですか?


和田:
僕たちの話が参考になるか…(笑)、というのもcoincheckは投資家への説明抜きにすぐに作り始めてローンチしたんです。

どんなVCから投資を受けているかにもよりますが、僕たちの場合、プロダクトというよりもチームに投資いただけているのではないかと。なので、常に味方をしてくれますし、相談があれば親身になって課題解決に力を貸してもらえる。僕たちの投資家はそんな関係です。


― 国内スタートアップの決済サービスとして一層注目されることになるかと思います。今後の注力ポイントを教えてください。


大塚:
注力ポイントは、導入サイトを増やす事です。導入メリットの出せる業界は明らかになりましたので、ある業界では爆発的に導入サイトが増やせるとみています。プロダ゙クトのブラッシュアップ゚は当然のことなが゙ら、ビットコインに関する法律や海外の動向などを伝える啓蒙活動も同時に行ない、健全な市場を創り出したいと思っています。インターネット黎明期も、情報がオープンになるリスクが指摘されていました。実名SNSもプライバシーリスクが指摘されていました。しかし、今ではリスクよりも利便性・価値が見いだされ、より良い未来が創りだされています。新しい概念は否定されるのが世の常。より良い未来を創り出すためにチームで挑戦を続けていきたいと思います。


― スタートアップならではの、限られた資産をどこに投資するかという視点は多くの方に参考になるのではないかと思います。ありがとうございました!


[取材・文] 松尾彰大




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