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大企業こそ副業を推奨せよ!?「専業禁止」を掲げるエンファクトリーの成果。

2015-02-26

大企業こそ副業を推奨せよ!?「専業禁止」を掲げるエンファクトリーの成果。

専業禁止を掲げ、パラレルワークを推奨するエンファクトリー。専業禁止とは、複数の事業を掛け持つ「複業」の推奨を指す。半数の社員が複業を実践し、キャリアを主体的にデザインしている。会社にとってメリットしかないという専業禁止。新しい雇用の在り方に迫った。

新しい個人と会社のつながり方、専業禁止。

「副業禁止」を規則とする企業が多いなか、真逆の「専業禁止」を謳う会社がある。オンラインショッピング事業を中心に手掛ける、株式会社エンファクトリーだ。

専業禁止。厳密には、自社の仕事だけをする社員を雇わないわけでも、解雇するわけでもない。一般的には副収入を得る手段として語られる副業だが、同社の場合は複数の事業を掛け持つことを推奨している。

実際に社員の半数以上が、別の働き口を持っている。もうひとつの仕事で、月収数十万を稼ぐ人材もいるとか。小遣い稼ぎの副業とは異なり、本腰を入れた事業を掛け持っている。

専業禁止という働き方を取り入れた背景は?会社としてのメリット・デメリットは?エンファクトリー社長の加藤健太氏と副社長の清水正樹氏へのインタビュー。

これから先、生き方・働き方をどうデザインするか。そのとき、会社とはどのような関係を築いていくのがベターか。新しい雇用の在り方・働き方のヒントを探る。

副業の推奨は、会社にとってもメリットしかない。

エンファクトリー 社長 加藤健太氏


― 「専業禁止」ってインパクトがありますよね、会社が宣言するには。……どうしてそんなこと言い切っちゃったんですか?


加藤:
センセーショナルな響きではあるんですが、人材の自立を促そうと考えたときに成るべくして出来上がったものなんですよ。「色々なことをやっていいじゃないか」「むしろ推奨しよう」という話から振り切って。

個人が会社に尽くしきることって、リスクのある世の中だと思うんです。リーマンショックのときもそうでしたけど、多くの企業がリストラを実施しましたよね。その中で副業の禁止を外す会社も出てきて。ひとつの会社で一心不乱に働くことでの保障がなくなる、不確実な時代だと実感しました。

だからこそ、人生や仕事を自分自身でデザインする必要がある。主体的な選択肢を持っておくことって、個人として必須だよねっていう考えです。

もうひとつが、どこの会社でもあることだと思いますが、優秀なヤツほど辞めていっちゃう。やりたいことがみつかると、他社や個人で挑戦するという選択をします。だから会社にいながら、やりたいことができる道を用意しようと思ったんです。優秀な人材と自社がつながっていく狙いもありました。


― 個人と会社、双方のメリットを期待して用意されたわけですが、実際に会社側のメリットはあったのでしょうか?


加藤:
残業時間が20%くらい減った事実はありますが、それ以上に人材の自立や育成としての利点が非常に大きいんですよ。

社員の能力を伸ばそうと思ったら、実務の他に考えられるのって、いわゆる研修じゃないですか。でも研修って一時的には盛り上がるけど、持続性がない。限界があるんですよ。だったらもう外で、他流試合をやることによって自ら伸びていくほうがよっぽど効果がある。

外でやるヤツは、色々な意味でしっかりしてきました。プロとしてお客さんと対峙して、値決めもそうですし、お金をちゃんともらって儲かってるのかってやるし。世の中の仕組みで言えば確定申告とかの話もして、リテラシーが格段に上がるんです。

ジェネラルにやることで、経営者目線を持てるようになるってことなんですけど。仕事の進め方や予算に対しても目線が上がる。自分の体験として経営を捉えられるようになるんですよね。

パラレルワークを取り入れることで、個人として力をつけて会社に還元できるようになる。もたれ合うとかじゃなくて、対等な立場で企業と個人が向き合えるようになるって、良い関係ですよね。

パラレルキャリアは、個人と会社の均衡を図るツール。

エンファクトリー


― 現状でメリットしかないという専業禁止ですが、運用方法や事例について聞かせてください。


加藤:
まず約束事として、何をやっているかオープンにさせています。数ヵ月に一回、ピッチみたいな形で全員に報告をしてもらう。どんなことをやっていて、それこそどのくらい儲かってるかまで。

オープンにすることで、悪いことができなくなりますよね。会社の仕事もオープンにしているんで、おろそかにできない。「アイツなんだよ、副業ばっかやって」っていう話になるので。本人としても、会社の仕事で成果出さないとかっこ悪いって、そんな循環で全体は回ってますね。

清水:
具体的な事例をひとつ挙げると、ユーザーサポートの社員なんですが、彼は複業でパグやフレンチブルドッグの洋服やグッズを手作りしてネットで販売してます。

加藤:
芸能人の坂上忍さんが飼っているパグゾウに着てもらってね。

清水:
自分から「ファンです!」みたいな形で送って、使ってもらうっていう手法でしたね。会社ではカスタマーサポートなんですけど、パラレルの方ではマーケティング活動まで経験してるっていう。

やっぱり視野が広がっていくんですよね、パラレルキャリアで事業主としてやるっていうことは。マーケティングをやるし、営業をやるし、つくる部分も販売することも自分でやらないといけない。

加藤:
副収入の副じゃなくて、いわゆるパラレルの発想ですよね。単純にバイトするとかだったら、会社の仕事に集中して給料あげる方がよっぽど効率的じゃないですか。それよりも、自分の能力を高める取り組みになっているんです。


― 複業をなさっている方って、本業との切り分けはどうしてるんですか?残業時間が減ったということは、複業に使える時間を捻出したってことでもあるかもしれませんし。


清水:
僕自身も複業を持っているんですが、日中はエンファクトリーの仕事をして、帰宅後に一時間、複業をやるぐらい。あとは週末に作業っていうのが基本ですね。必要であれば業務時間中に複業をやるのも、禁止していません。

自分の中では本業と複業を切り分けてる印象はなくて、いろんな事業をやってるというのがイメージとして近いかもしれません。社内で複数事業を並行していますし、複業もいくつかやってるんですね。両方を併せて複数の事業に携わり、事業ごとに条件や制約は変わってくるなっていう印象で働いてます。

加藤:
もちろん複業があるから会社の仕事を減らしてあげるとか、評価のときに手心を加えるなんてことはやってないです。むしろ厳しいくらい。だから複業をやっていない社員から、清水みたいによっぽど稼いでいない限り妬まれることもない(笑)。

清水:
儲けられるにこしたことはないんですが……。そもそもパラレルワークって、自分の実力がどのレベルにいるのかを確認するための、実験という要素があるんじゃないでしょうか。そういう観点でみたら、クラウドソーシングみたいな副業からのスタートでも良いと思うんですよ。

ちょっとやってみて、何ができるか、何をやっていたら心地良いのかを確かめていく。続けるうちに自分はどういう人生を歩んでいきたいのかを考えるようになる。色々な意味での実験であり、きっかけなんじゃないかな。

会社と個人の力関係って、やっぱり会社がすごく強いですよね。っていうのが、もう少しバランスが取れてくると良いのかなって。そのためのパラレルワークであり、専業禁止なんだと思っています。

個人が人生を主体的にデザインするためのパラレルワーク。

エンファクトリー


― パラレルワークが個人にも会社にもメリットがあるのは理解できました。逆に想定しているリスク、それに対する打ち手は何があるのでしょうか?


加藤:
退職していくリスクですよね。優秀なヤツが辞めないようにという考えはあるんですが、自分の事業が軌道に乗れば、会社の仕事は少しすぼめたいな、退職しようかなってなるのも自然じゃないですか。

それを僕らフェローって呼んでいるんですけど、退職後も協業したり情報交換したり、緩やかにつながっていく仕組みを入れました。中が中心で外でもやる。外が中心だけど、中と連携する。あとは普通にパートナー的な関わり方。個人と会社をつなぐ緩やかな輪があって、情報やスキル、ビジネスのやり取りをできるほうが、企業体として安定していくだろうと思います。

対して個人にとってのリスクはないと思いますけど。将来について、あまりにもビビってる人たちが多いじゃないですか。だったら、こういうことやりゃいいじゃんって思うんですよ。ビビらなくていいじゃないですか。


― 片方で会社に属しているという、ある種の安定や安心を持ちながら。


加藤:
そうそう。会社がそういう場を提供していけば、色々な問題に対応できるようになると思いますよ。例えば大企業。余裕あるんだし、大企業の隙間ワーカーが、中堅中小のお手伝いすることによって底上げになりますよね。

人材いないから、ちょっとしたスキルとかを提供するだけで全然伸びる。食ってける人が増えて、年金とか社会保障とかレガシーコストも下がりますよね。


― 従業員のことを本気で考えたら、そういう発想をして実行する経営者が増えても良いですよね。


加藤:
経営に近い人が、そういう発想で伝えていけることが大事だと思うんですよね。個人としてスキルとかリテラシーを高めることが必要なんだよって。一歩引いて従業員の立場になったらわかるわけですよ。


― どうやったらそういう会社が増えますかね。もしくは、どうして増えないのか。


加藤:
大企業にはサラリーマン上がりの「逃げ切り世代」が、50代……じゃないですか。わざわざそんなジャッジしなくても逃げ切れるし、本当の意味で「若い世代」のことを考えてないのではないでしょうか!?

もちろんウチなんて20名くらいの会社だから、全部を見れるんですよ。規模が大きくなったら、同じやり方じゃ難しいでしょうね。何か違う仕組みなり。方法にしないと。例えば35歳からは「副業禁止規定」が外れて、個人も違う働き方に精をを出してみるとか。そのための練習として、複業に挑戦しておくとかね。


― これからパラレルワークに挑戦しようと思う人に対して、こういうところから手を出せばいいよっていうアドバイスはありますか?本業とはまったく違うことをやれとか。


加藤:
身近なところからじゃないですか。簡単じゃないですよ、両方を本気でやるって。二人の女性と同時に付き合うようなもので(笑)。


― わかりやすい。それは大変ですよね(笑)。


加藤:
苦労するのがいいんですよ。苦労しないと意味ない。ぎりぎりのところで乗り越えましたっていう経験が、「どこでもやってけるかな」みたいな感覚になって強くなるんですよ。社長や役員に対して、「いいよ、辞めたって」っていうような感じで、意思決定ができるくらいに。

そこで初めて、ビジネスパーソンとしてリスクをもってジャッジできるだろうし、覚悟を持ってやっていける。そういう人材に育つことが、個人の複業が会社にもたらすプラスの部分なんです。

そういう意味で、パラレルワークを取り入れること自体が正解じゃない。世の中や環境が変わり続けていて、不確実な状況でも生きられることが大事なんで。人生をデザインするっていうのは、選択肢を持った上で意思決定することなんですから。


― お二人の考え方や取り組みが世の中のスタンダードになってくると、不安よりも自信を持って生きる人が増えそうですね。パラレルワークは、人生をデザインするための選択肢を増やす手段。とても勉強になりました。


[取材・文] 城戸内大介
[撮影協力] TENOHA代官山



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