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オープンソース・ソフトウェア(OSS)でエンジニアに幸せな世界をつくる|MOONGIFT 中津川篤司

2015-04-07

オープンソース・ソフトウェア(OSS)でエンジニアに幸せな世界をつくる|MOONGIFT 中津川篤司

オープンソース・ソフトウェア(OSS)を毎日紹介する『MOONGIFT』中津川篤司さん。「エンジニアにとって幸せな世界をつくる」ことを目指す。なぜOSSを紹介し、コミュニティに貢献するのか?エンジニアが幸せになるために必要なこととは?中津川の思いに迫った。


[プロフィール]
中津川篤司 / 株式会社MOONGIFT 代表取締役

プログラマ、エンジニアとしていくつかの企業で働き、28歳のときに独立。2004年、まだ情報が少なかったオープンソースソフトの技術ブログ『MOONGIFT』を開設し、毎日情報を発信している。2013年に法人化、ビジネスとエンジニアを結ぶエバンジェリスト業「DevRel」活動をスタートした。

エンジニアにとって幸せな世界をつくる

MOONGIFT_中津川篤司さん


― MOONGIFTでは、「オープンソース・ソフトウェア(OSS)」をサイトのテーマにしたのは、どうしてですか?


それは単純に私がオープンソースを好きだからです。それと、私が最後に勤めていた会社でのミッションは、限られた予算の中で、社内のITシステムを整えることだったのですが、そこでOSSを活用していました。自分で色々調べて・試して、こういうのがあるのかと知っていくなかで、これをブログで世に情報を出したら、誰かの役にも立つんじゃないかなと思って、はじめたのがMOONGIFTです。

毎朝5時頃におきて、6時半の電車に乗るまでMOONGIFTやって、7時半には出社し、他の社員が出社するまでには1日分の自分のタスクを終えてしまう。その後プラスアルファの仕事をして、残業はほとんどせずに帰宅。夕飯たべてフロに入ったらまたMOONGIFTやって……という生活を毎日、約3年間続けました。


― 本業の仕事はキッチリこなしつつ、時間を創出してMOONGIFTをしていたのですね。そのモチベーションはどこからきていたのでしょうか?


もともとMOONGIFTを副業にしようとか、金儲けしようとはしていなくて、趣味として運営をはじめました。ただ、当時はOSSの情報源自体が少なくて、毎日情報を更新していたら、トラフィックがどんどん上がっていった。それはたまたまです。何をやれば、どうヒットするというのもわかりません。

MOONGIFTの理念としては「エンジニアにとって幸せな世界をつくる」というのがあります。

エンジニアが、もっと良い生き方をすれば、世の中がもっと良くなっていくと思うんですね。なぜなら、今の世の中ってエンジニアが一番下の底を支えているので。実際、いままでスクラッチで作っていたものが、オープンソースを使うことでずいぶん工数が減るとかあるわけです。例えば、以前ならオリジナルのCMSを作っていたのが、WordPressを使いましょうとかですね。そういう風に、オープンソースの情報を知らしめることで、世の中ってもっと良くなると思うんです。

でもね、よく「MOONGIFTでメシ食えるんですか?」って聞かれるんですけど、それはムリです(笑)。ブログメディアでメシなんか食えないですよ。他のブロガーさんのことはわかりませんが、技術系ブログは難しいと思いますよ。ITリテラシーが高い人は、広告枠が見えないように目に特殊なフィルタがかかってるんじゃないかと思いますね(笑)サイト内広告のクリック率めちゃくちゃ低いですからね。たぶん普通の1/10くらいじゃないですか。MOONGIFTは本当に趣味以外のなにものでもなくて、強いていうなら自分自身の宣伝ですね。

自分の価値は開発力ではなく、コンサルや情報発信

MOONGIFT_中津川篤司さん


― MOONGIFTとして独立してから、しばらくは受託開発をされていたようですが、途中からしなくなったそうですね?


はい。ある時期から「人様のために手を動かさない」と決め、最近はぜんぜん受託開発はしていません。私ひとりで書けるコードの量には限界がありますし。自分の価値は開発力ではなく、コンサルや情報発信のところだと思っています。

この業界の問題としてよくあるのは、クライアントと開発会社とのプロジェクトスコープがズレることなんです。クライアントは、開発されたシステムを使って収益を生むのがプロジェクト、一方で開発会社は、システムを作って検収して納品するまでがプロジェクトというパターン。開発会社は、とにかくスクラッチでゼロから組むのを好むのですが、そんなのいらなくて、どこかのASPをもってきてカスタマイズを頼んだ方がいい。そうすると開発に1年かかりそうと言っていたものが、3ヶ月で終わっちゃったりする。

そういうのは、開発会社は提案できないんですよ。自分たちにとってお金にならないので。私がコンサルに入る場合は「いやいや、そんなのいらないですから」と機能を削っていって、できるだけミニマムでできる方法を提案しています。

開発者向けPR/エバンジェリスト代行業のDevRel(デバロッパーリレーションズ)も同じ理念で、世の中には色んな技術の選択肢があり、その選択肢の中で、現場の人たちが、より良いと思えるサービスを取捨選択して採用できるのが良いと思うんです。「選択肢を与えるという行為は、迷いを与える」っていう話もありますけど、そもそも知らないのはマイナスで、知ること、考えることを拒否しちゃうのが、いちばん悲しいことだと思います。

「仕事」は会社へのアウトプット、「勉強」は自分へのインプット

― エンジニアの働き方について、ご提言とかありますか?


みなさん、仕事しすぎだと思いますね。「自分が働かないと、仕事が、会社がダメになる」と思いこんでいる人が多いと思います。でも実際はそうじゃなくて、なんとかなるんです。

効率性の問題もあると思います。仕事の完成度を80%の状態から100%まで仕上げるってすごく時間がかかるのですが、いちど80%の状態で誰かにレビューをもらった方が100%まで早くいけるんですね。そういう工夫をもっとすべきだと思います。

また日本の会社は「ウチの会社は特殊だから」と言って、ガラパゴスであることを喜んでいる風潮があります。例え話ですが、海外だとSAPのシステムを導入したら、システムに合わせて業務フローを決めますが、日本だとSAPのカスタマイズをしようとする。そうじゃなくて、むしろシステム側に合わせちゃった方が効率は良くなり、効率が良くなればエンジニアの生活もだいぶ良くなると思います。


― エンジニアとして幸せになるために、なにが必要なのでしょう?


ここ数年「エンジニアにとって食いっぱぐれない方法」みたいなネタが時々バズるんですよ。個人的にはその答えはひとつしかないと思っていて、勉強する姿勢を忘れないことだけなんですね。

いま世の中には約40万人のプログラマがいるといわれていて、そのうちの約半分が「職業エンジニア」といわれています。自宅にパソコンがなく、会社にいって、パソコンうって、家に帰ったら釣り竿やゴルフクラブを磨いて「来週どこにいこうかな~」…っていうタイプの人たちのことです。職業エンジニアにとっては、勉強ってすごい苦痛で、Javaで食っていけるなら、Javaだけで生きていきたいと思っているそうです。

でも世の中は、変化しまくっているので、今は良いですけど、30年後に同じスタイルで生活できているわけがなくて、流動にあわせて自分のスタイルもかえていかないとすぐ置いていかれちゃうんですよね。トレンドに合わせて、自分でも何か新しいトレンドをつかめるようなものを作るということも大切です。

例えば、昔だったらPerlで作るのが当たり前だったものを、Ruby on Railsでやるとか、場合によってはNode.jsでやるとか、それぞれ用途に応じて特性があるわけです。「なにがなんでも○○で作る」というのは自分たちにとってもクライアントにとっても不幸だと思います。開発会社やエンジニア側が何を使えるかは重要ではなく、クライアントや世の中にとって、どの技術が一番ベストかというのを常に考えなくてはいけないと思います。そのために自らも成長していかないといけません。

WEBやIT業界のキャリアロールモデルって見えていないですし、これからも見えない状態がずーっと続くのだと思います。私たちが定年を迎える頃に、今のこの状態が続いてるって、ぜったいにありえないじゃないですか。10年前まで「Flash最高!」って思っていたFlasherの人がたくさんいたのに、スマホが普及したらFlasherの仕事がなくなっちゃうような、そんなことが今後も起き続けるわけです。

勉強は終わりのない世界ですし、学校のお勉強と違って、無理やり強制されるものじゃない。自分の好きなものを勉強すればいいと思います。「仕事」は会社へのアウトプットですが、「勉強」は自分へのインプットであって、勉強で得たナレッジは決して誰にも奪われるものではないですからね。

私としては、MOONGIFTで発信した情報を、ただ読んでもらうより、実際の業務に活用してもらったり、ブログ記事で「MOONGIFTで紹介されてた○○を試してみました」って書いてくれる方が嬉しいです。ただ知って終わりじゃなくて、実際に手を動かして考えるキッカケになってもらえると幸いです。


― OSSを使うことよって、エンジニアの仕事が効率化し、効率化してできた時間を使って、さらに勉強していける……そういうサイクルにMOONGIFTが貢献しているわけですね。これからも頑張ってください。ありがとうございました!


[取材・文] 鈴木 健介



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