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CAREER HACK

仕組みで変えるな、フンイキで変えろ―pixiv片桐流 社員が活きる組織の作り方[1]

2013-01-25

仕組みで変えるな、フンイキで変えろ―pixiv片桐流 社員が活きる組織の作り方[1]

ユーザー数が590万人を超え、海外にも広まるイラストコミュニケーションサービス『pixiv』。新しいSNSの世界を切り拓いたピクシブ代表の片桐氏は、組織づくりにおいても独創的な自論を持っている。指示を出さなくても、現場から自然発生的にアイデアが湧き出てくる組織は、こうして作られた――。

成功を生み出す組織のつくり方。

『pixiv(ピクシブ)』はイラストの投稿・閲覧が楽しめるイラストコミュニケーションサービス。簡単に言えば“イラストのSNS”だ。

2007年のサービス開始から順調にユーザーを増やし、今や590万人を突破。海外ユーザーが12%以上を占めるなど、その人気は海を渡りつつある。

コアなファンが本社オフィスへ“pixiv詣”をするほどまでにユーザーに愛され、成長してきた『pixiv』だが、サービス立ち上げ当時は、特定のセグメントに特化した専門SNSが乱立し、かつ、いずれも上手くいかずにクローズしていくという難しい環境にあった。

そんな中で、いかにして成功を収めたのか。そこには、指示を待たずとも、現場から次々にアイデアや意見が湧きあがるという同社の組織風土が大きく関係している。

理想的な組織はいかにして作られるか。これまであまり語られたことのない、ピクシブ株式会社代表 片桐孝憲さんの組織論を、前編・後編に分けてたっぷりとお届けする。

くだらないことでも、言えてしまう。

前回のインタビューで、ピクシブでは現場のエンジニアから「こういうことをやりたい」という声が自主的に、しかも次々に挙がってくる、というお話を伺いました。変化の激しいWEBサービスの世界において、それは非常に理想的な組織風土だと思うのですが、そういった組織にするためにどのようなことに取り組んでいらっしゃるのでしょうか。例えば何か仕組みづくりをしているとか?


僕は、仕組みよりも、雰囲気づくりのほうが重要だと思っているんです。“社内から新規事業を募集する制度”とかって、よくあるじゃないですか。でもああいうものよりも、そもそも皆が自由に意見を出せる雰囲気をつくること。そっちのほうが大切だと思うんですよね。



― “言える空気”をつくってしまえば、自ずとアイデアも出てくると。


その通りです。だから、どんなくだらないことでも些細なことでも言えちゃう雰囲気をいかにつくるか、ということに僕自身は結構チカラを入れています。

社員同士の仲を深める、というのもそのための方法の一つで、仲が良くなるための取り組みが社内にはいっぱいあるんです。

たとえば、もう6年ぐらい前からずっと続いているんですけど、毎週水曜日のお昼は皆で一緒に弁当を食べるんです。食事をしながらの会話って、わりと素になれるじゃないですか。最初の頃は数名だったので余裕だったんですが、今は50人ぐらいになっているので、席を決めるのもけっこう大変ですけど。いつも同じ人同士が集まってしまわないように、席順をランダムに決めるシステムを、社員が勝手に開発しました(笑)

それから、新卒入社の社員には、毎年社員旅行の企画・引率をすべてやってもらっています。


― 新卒が社員旅行を、ですか。


アメリカの某大学の寮で、寮生が皆で過酷な体験をして、結束を強める、っていうのあるじゃないですか。アレとおんなじです。

50人以上の社員を取りまとめるために、緻密な計画書を作ったり、旅行中も頻繁に新卒同士でミーティングをしたり。社員旅行を経て、彼らは一気に仲良くなりましたよ。

今度の社員旅行でも、社員全員で何かを体験しようって考えてるんです。皆で富士山に登ったりとか、屋久島の屋久杉を皆で見に行こうかな、とか。深い森の奥にある屋久杉を目指して、あえて厳しいルートを通ったりして、脱落しそうなヤツの体を支えて「あとちょっとだ!頑張れ!」とか言って(笑)

大手企業だと、最初はみんな営業職を経験したりするじゃないですか。だからその後にいろんな部署に散っていっても、営業時代のツライ体験とかが会社全体の体験として存在する。

でもピクシブって、作っているモノはひとつのプロダクトと言えるかもしれないけれども、やっていることは皆違ってバラバラなんです。だからこそ、共通体験できる機会を意識的に設けています。

そういうふうに社員同士の仲が深まって、共通の話題が増えると、必然的に発言も多くなりますよね。



― いやー、その社員旅行はぜひ行ってみたいですね。では、イベント的なこと以外で、普段から意識されていることってありますか?


いっぱいあるんですけど、たとえばマジメな開発会議とかで、僕が率先して結構くだらないことを発言する、とかですね。

この間は、「僕が壁にぶち当たったときどうするか」というのを会議で話しました。内容はちょっと言えないくだらないことなのですが…(笑)

僕は、一見くだらないと思えるような日常の心理状態や行動からパターンを見つけて応用することにすごく興味があって、よくそういう話をするんです。そうすると、他の社員も「そんな話でもしていいんだ」みたいな、何を言ってもいい雰囲気になる。

そうすると、発言も活発になりますよね。その中から、「それいいじゃん!」みたいなアイデアも結構出てくるんですよ。

ずっとそうやって雰囲気づくりをしてきたからだと思うんですけど、ピクシブの社員って、他のチームのミーティングとかにも平気で飛び入り参加したりするんです。



― よそのチームのミーティングに、ですか?普通はしないですよね。というか、できない(笑)


ですよね。オフィスを見ていただくと分かる通り、パーテーションが無いじゃないですか。ミーティングスペースと個人デスクとの距離も近いし。だから結構、会議の内容とかが聞こえてくるんですよね。

それで、「なんか面白そうなこと話してるな」って思ったら、コーヒーを取りにいったついでに話に参加しちゃったりしてる。で、言いたいことだけ言って、また勝手に席に戻っていったり(笑)もうそれが普通になってますね。

このまえ、他社の人と僕が打合せしてたんですけど、そしたらその人のことを知っている社員がたまたま通りかかって、そのまま打合せに参加し始めたんです。もう僕らにとって普通のこと過ぎてて、ごく自然にそうなったんですけど、打合せが終わったあとにその人から「いつもこんななの?」ってビックリされて。「僕は知り合いだからいいけど」って。それで、「ああ!そうか!」って気づくという(笑)

まあ、お客さんとの打合せに参加してしまうというのは極端な例ですけれども、社内の会議ならむしろ好ましいというか。チーム外でも、いろいろな人の意見が混ぜ合わされるほうが、何か面白いものが生まれやすくなると思いますから。


― それって、組織規模って関係ないですか?今よりもっと人が増えても、維持できそうでしょうか。


うーん…それは正直分からないです。でもできるんじゃないかなぁ、と。いま実験中です。

(つづく)
▼片桐さんの組織論インタビュー第2回はこちら
オシャレなオフィスは作るな―pixiv片桐流 社員が活きる組織の作り方[2]



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