2014.07.08
コードをディスり合える仲間がいますか?|クロコス 柄沢聡太郎(Sotarok)

コードをディスり合える仲間がいますか?|クロコス 柄沢聡太郎(Sotarok)

クロコス CTO 柄沢聡太郎(Sotarok)さんへのインタビュー。現在28歳となる柄沢さんは、学生時代に技術書を共著し、成長著しいグリーに新卒入社すると約1年後にはクロコスを共同創業。CTOを務め、わずか1年半でヤフーに売却している。そんな彼はこれまでの人生をどのように振り返るのか?

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20代にして、技術本執筆・起業・バイアウトを成したエンジニア

「なぜあの人をCAREER HACKで取り上げないんですか?」

この言葉を、読者や取材対象者から何度訊かれたことだろう…。その人物こそSotarokこと、クロコス CTO の柄沢聡太郎さんだ。

現在28歳となる柄沢さんは、激動のエンジニア人生をそれこそ「爆速」で駆け抜けてきた人物。そんな彼はいま、自分のキャリアをどう振り返り、これからのキャリアで何を企んでいるのか?


[プロフィール]
クロコス CTO 柄沢聡太郎 Sotaro Karasawa @sotarok
大学入学後、本格的にプログラミングを学び、若手ハッカー集団「nequal」のメンバーと共に様々なウェブサービスを開発。大学院に在学中はオープンソースの活動にも参加し「パーフェクトPHP」を共著で出版。成長著しいグリーに新卒入社し、約1年後クロコスを共同創業。CTOを務め、わずか1年半でヤフーに売却。

イタズラが起業のきっかけに

― クロコスはnequalが中心となって創業されたんですよね。当時、技術者集団が中心となって起業、更に短期間で大企業に買収されることは珍しいことだったと記憶しています。


nanapiのけんすう(nanapi社長 古川健介氏)がきっかけをくれたんです。学生時代、彼の作ったサイトに“いたずら”したのを機に仲良くなって。
※日本におけるハッカーのビジネス、またはSotarokと僕 ― nanapi社長日記

ある時、nequalのメンバーが開発した「リルム」というサービスをけんすうに見もらった時、「これは面白い、いいね」っていう話から、エンジェルの小澤さん(ヤフー 執行役員 小澤 隆生氏)っていう人紹介してもらうことになったんです。

当時はエンジェルっていわれても天使?って感じだったし、ブログを見て、「なんかちょんまげの変な人」っていう(笑)。それだけの印象でまずは会ったんです。そしたらもう、強烈に話が面白いんですよ。自分たちが知らない世界とか、ビジネス・会社の仕組みとか。そこから本当に乗せられたっていうかですね…(笑)。小澤さんとのつながりからクロコスの社長で元楽天のシリアルアントレプレナーの岡元淳さんとも出会って、起業しました。

小澤さんも、岡元さんもビジネスや経営に関する知識や経験がすごかった。nequalというエンジニア集団が、自分たちとは全く違う能力や経験を持つ人と出会ってチームを組めたのは、人生を大きく変えた出来事でした。


― お話を伺っていると、nequalのメンバー、エンジニアの方々とずっと一緒にやってこられたことも非常に大きな意味を持つのかなと。


そうですね…。「遠慮しない人」がそばにいるかは重要かもしれません。開発していると、ああだこうだいろいろあるじゃないですか。「そんな構造じゃダメだ」とか「自分ならこうする」とか。成果物とかプロセスとかそういうものを遠慮なく、罵り合えるというかディスり合える関係です。エンジニアはコードをディスっても人間性が壊れるわけではないですよね。信頼できる仲間同士だからこそ、コードに対して真剣に、プロダクトにまっすぐ、向かい合えるんです。

自信と挫折を繰り返す波の連続

― 学生時代に技術書を執筆したり、拡大期のグリーを経てクロコスを創業してヤフーに売却するなど、柄沢さんは20代にして濃い経験をいくつもされていますよね。起業だけでなく、数々のターニングポイントがあったんだろうなと思います。


「いけるかも」という自信と次に訪れる挫折の波、人との出会いそれぞれが、自分のターニングポイントだったのかもしれません。

学生時代は、妙な自信と無駄に高いプライドがあったんですね。

例えば、ある程度プログラミングを勉強して、「もうPHPで何でもできるんだ」みたいな、ある種の万能感みたいなやつを持った時期があって(笑)、でも決まってそういう万能感が訪れると、次には自分よりもっとできる人を知って挫折するんです。「俺、全然ダメだ…」みたいな感じになってっていうのを結構繰り返してきたかなって。

よくある話ですが、ある程度のレベルまでいかないと見えないことって結構あるんですよね。結局「井の中の蛙」状態で、じゃあ蛙が外に出て大海を知ったと思ったら、その大海も実は井の中だったりする。


― フリーザ→セル→魔人ブウと、次から次に出てくるってやつですね。


そう(笑)。nequalを一緒に立ち上げて、クロコスの共同創業者でもあるriaf(佐藤佳祐氏)はまさに、僕を挫折させた一人。

僕が使っていたフレームワークの情報を、彼がブログでよく書いてたんです。あまりに詳しいので、てっきり年上の人かと思っていたら、「ハタチになりました!」っていうエントリを書いてて。当時僕は22歳だったかな…、まさか年下なんて思いもよらずかなりショックを受けましたね。

はじめて勉強会に行ったときも本当に衝撃でした。自分はPHPができる人間だと思ってたのに、参加者が何の話をしているのかさえ、ほとんどわからなかった(笑)。

相当な数のショックを受けてきましたけど、僕は本当に負けず嫌いな性格なんです。這い上がっては挫折し…そんな経験を今でも続けている気がします。

20代、守りに入るには少し早すぎる

― 最後に。例えば、いま柄沢さんが自分より下の世代に掛けるアドバイスがあるとしたら?


ありきたりですが、まずは変化を恐れないこと、そして目的に応じて手段を講じることでしょうか。

やっぱりビジネスの環境も、エンジニアとしての環境も移り変わってますよね。例えばPHPっていつまで使えるかなんて分からない。「ウェブよりもネイティブアプリ」っていう文脈も、いつまでこの状態かなんて分からないです。

たぶん、環境の変化っていうのはものすごく速いけれど、自分自身が変わることを恐れてはいけないと思います。それは20代終わっても30、40になっても、恐れずに挑戦し続ける心…みたいなものは持ち続けなきゃいけないと思ってます。

まあ20代っていったら、守りに入るには少し早すぎる世代ですよね。

そういう意味では、「今やらずしていつやるんだ」と思うところはあります。別に起業した方がいいと言ってるわけじゃないです。もし、やりたいことが「会社のルールでできない」みたいなことがあったとしても、それを言い訳にせず、行動に移すべき。若い今だからこそ失敗できるんです。怒られたとしても、何度でも取り返しがききます。自分で壊せる壁はどんどんぶっ壊せばいいと思う。

なんだか下の世代にというより、自分自身も常にそうやって挑んでいきたいと、自戒の意味を込めてですが(笑)。


― 濃い20代を過ごしている柄沢さんだからこそ語れるお話だったと思います。ありがとうございました!


[取材・文] 松尾彰大 


編集 = 松尾彰大


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