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CAREER HACK

「そのものづくりにロマンはあるか」カイブツが操縦可能ロボット『クラタス』をプロデュースするワケ。

2014-02-27

「そのものづくりにロマンはあるか」カイブツが操縦可能ロボット『クラタス』をプロデュースするワケ。

デジタル全盛の時代、一風変わった存在感を放つクリエイティブカンパニーが『カイブツ』だ。そんな彼らが携わるプロジェクトでも異彩なのは操縦可能な巨大ロボット『クラタス』のプロデュース。広告デザインに端を発する彼らがなぜ…そこにはクリエイターの根底に宿るロマンがあった!?

▼カイブツ木谷友亮氏へのインタビュー第1弾
定食屋のおばちゃんに気に入られることも大事!?カイブツ木谷友亮に訊く突き抜けるクリエイターの条件。

クリエイターは何者であるべきか?

デジタルクリエイティブの世界において『カイブツ』は知る人ぞ知る存在。「何だかわからないが、面白いことをやっている」といった印象を持つ人も少なくないだろう。

銀座メゾンエルメスに小さなスケートリンクをつくる。クールなキャンペーンサイト『NURO DEVILMAN』をプランニングする。Hondaの展示会にて小便小僧ならぬ、水素小僧という巨大なオブジェを置く…

アートディレクターの木谷友亮氏は「できるだけ自分たちが面白いと思えることをやる」と語る。そんなカイブツが携わるプロジェクトでも異彩を放っているのが、ロボット『クラタス』のプロデュースだろう。


倉田光吾郎 水道橋重工プロジェクト


『クラタス』は現代芸術家・倉田光吾郎氏が制作した操縦可能な巨大ロボット。風の噂ではアラブの富豪からも実際に購入に関する問い合わせがあったとかなかったとか。

カイブツは、なぜ、そんな『クラタス』のプロデュースを担うのか。彼らが広告の枠を越え、活動領域を広げるワケとは?その裏にはクリエイターの根底に宿る「ロマン」があった!?

ロマンのあるお節介。

― カイブツが携わるプロジェクトの中でも、ひと際面白いと思うのが『クラタス』のプロデュースなのですが…すぐにお金になるクライアントワークとは別物ですよね。


あれは完全に自社プロジェクトですね。お金とかは関係ないですね。


― それでもやる意味はどこにあるのでしょうか?


…うーん、もともとは単なるぼくのお節介なんですよね。『クラタス』をつくった倉田さんをサポートしたいという動機しかない。一番最初にスケッチじゃなくて、いきなり模型を見せられて、「これ作ろうと思うんだけど」と言われて、この人ならできるだろうな、と思って。

やってみて改めて感じたんですけど、『クラタス』には夢しかない。一台売れたら2億円弱で…100台売れたら200億円。1万台売れたら2兆…。なんだこのスケールは!と燃えますよね。

そうなったらぼくはとりあえずランボルギーニアヴェンタドールを買いますね。5000万円くらいするけど、先日その時のためにも試乗をしてきました。


これは勝手な思いですけど、遠くにいる誰かじゃなくてもっと身近な人をみんな大事にしたらいいのに、と思っています。遠くにいる誰かを助けるというのも尊いとは思うけど、ぼくは身近にいる人をぼくのできることで精一杯応援したい。そのほうがリアリティもあるし。

倉田さんは本当に天才なんですよ。ハンパじゃない。そんな人が本当にスゴい物、つくりたい物だけをつくれたらいいのにと思って。ぼくは工業高校出身なんですが、全くあんな感じにはつくれなかった。子に夢を託す親の気持ちがわかりましたね、ぼくのほうが年下だけど。

もちろん『クラタス』は、ぼくたちにもプラスはあって。プロデュースの手法をゼロから考えるとか、イベントを運営するとか、未知の領域ばかりなので、すごくいい経験になっています。

広告業界以外にもたくさん知り合いが増えたのもとても大切なこと。これからもっと面白いことをやろうと思った時に、広告業界以外の色々な人とつながって作れたり、発信できたりした方がいいと思うので。


― 数字では表れないところで自社に好影響がある、と。


そうですね。まあ全く狙ったわけではないですが、ぼくにとっても、カイブツの社員にとっても、『クラタス』みたいな仕事は寝ないでも絶対にやったほうがいい。

倉田さんのように「自分でお金を出して、自分でひたすらつくる」という本物のクリエイターと長い期間にわたって一緒にいられるのは超貴重です。ものづくりへの本当の熱に触れられる。それは何があってもプラスしかないです。

贅肉を削ぎ落とし、最も効果的な広告アプローチを。

― そういった自社プロジェクトから、クライアントワークに活きるものはあるのでしょうか?


クライアントの視点が特に気になるようになりました。誤解を恐れずに言えば、もの凄く真面目に考えるようになる。もちろん、広告も真面目にやってきたつもりですけど、まだまだ贅肉があって。特に若い頃は「面白いからいいだろ」と思って、いろいろやりたくなるんですけど、結局は人に届いてナンボなんですよね。

「このバナーには本当に意味があるか」「PR会社に頼む必然性はあるか」とか…限られた予算と日程で何をやればいいか。考えること一つひとつ、本当に意味があるかどうかをすごく考えるようになりました。

『クラタス』だって、どういうタイミングで知ってもらえば話題になるか、倉田さんとかなり話し合っているんですよ。主にSNSですが、そこでの動きを見て、自分の動きを変えていく。そう思うと、発信者側もどれだけ世間の動きにアンテナが張れるか。マーケティング的な発想がないとダメなのかもしれないですね。

「クリエイティブの戦国時代」を生き抜くために。

― 今だと広告業界でもアートに近いというか、実験的なことをする会社も増えていますよね。それこそ自社プロジェクトとかで。


「凄いものが作れます。これを使って何かやりませんか?」とパトロンじゃないですけど、お金を出してくれるところを探すやり方もあって。それで業界全体の価値が上がったり、若い人たちがそういうクリエイターを目指したり、それはそれでいいことですよね。

広告出身の人がスターになりやすい時代なのかもしれません。今は作り手に凄く注目が集まっている気はしますね。昔はそれこそコピーライターとか、アートディレクターで限られた人だけが有名になれるだけだったし。

ただ、人によってはプロダクションでひたすら広告をつくるという選択肢もあって。なにしろ誰かにお金をもらってものがつくれるなんて…こんな贅沢な話はないですよね。

ぼくも昔ながらのお得意さんから出されたお題を打ち返すとか、きちんと広告で結果を出してあげたいという思いも強くある。だから、あまり表に出なくても良いんじゃないかという気もしていて…。業界全体のことを考えれば「もっとアピールしろ」とお叱りを受けるかもしれませんが。


― 最後にこれから広告業界を目指す若いクリエイターにアドバイスがあれば。


困りますね(笑)

…この業界に身を置くことでせっせと築いてきた自分の本質を見失うこともあると思います。

結局、Appleのような訴求力の強いプロダクトが出ない限り、「商品にレッテルを貼って、よく見せる」という部分が少なからず広告にはあるから。

ぼくは自分が大事にしていることからブレたくないから、それに定期的に気づくためにも、広告業界の外で『クラタス』とか地に足の着いたものづくりに携わっている。カイブツのみんなにはずっと「“つくる”ということは何だろう」ということを考えていてほしいし、感じていてほしい。

結局、「つくること」ってロジックだけでは通用しないし、そしてずっと楽しいわけでもない。いかに熱量をかけ続けられるかだし、かといって全部が全部報われるわけじゃない。だけど、その熱量ができるだけ報われるような世の中とか業界になるといいですね。

世渡り上手だけが生き残るなんて嫌ですよね。

昔、「定食屋さんで大盛りをタダにしてもらえる人は広告の世界で伸びる」と言われていて…近所の定食屋に通いつめて、カニクリームコロッケをタダでもらえるようになった僕は、世渡り上手かもしれないけど(笑)


― どんな道を歩むかは自分で決めるしかありませんが、本質的な「ものをつくる」という部分は共通する。キャリアの前にその姿勢や向き合い方が問われるのかもしれませんね。本日はありがとうございました!



(おわり)


[取材・構成]白石勝也 [文]山本翔



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