2019.11.20
音楽は続ける、仕事もやめない|文園太郎の2つの顔

音楽は続ける、仕事もやめない|文園太郎の2つの顔

スタートアップスタジオ『quantum』のプロダクト・ストラテジストとして働く文園太郎さん。彼にはもう一つの顔がある。ヒップホップ界でその名が広まりつつあるクルー『パブリック娘。』の活動だ。両立はやはり大変....?そんな疑問を投げかけると「両方あるから頑張れるんですよね」と一言。彼の価値観に迫った。

「卒業したら解散!」とはならず...

ー 音楽活動も続けながら、仕事もする。どちらか一つに絞らず、パラレルに働く道を選んだのはなぜですか?

正直なところ、最初は「就職してからも音楽活動を続けたい」という意思がすごくあったわけではなかったんです。むしろ、仕事のために辞めたほうが良いかなと思っていたくらいです。

「パブリック娘。」は大学時代にサークルの仲間と一緒にはじめたラップユニットで。

在学当時はサークル活動の一環でやっていました。

仕事を始めたら、本格的に続けていくのは難しいんじゃないかなって思ってて。「誰かが結婚したら、その二次会の余興でやろうね」って、笑いながら言ってたんです。「卒業後も絶対に続けていこう!」みたいな意思はそんなになかったと思います。

ただ、在学中にネットで曲を発表していたら、いろいろな人が聞いてくれてました。クラブでDJでかけてくれたり、トラックメイカーがリミックスをしてくれたり。

そのおかげで、ありがたいことにライブやDJのオファーがどんどん増えて。なんだかこういったら生意気ですけど、就職した後も、辞めどきがわからない状態になってました(笑)

大学卒業前、最後にリリースした「そんなことより早く、このパーティを抜け出さない?」。

職場の人にも気持ちよく応援してもらうために

ーとはいえ、仕事との両立はやはり大変なときもあるのでは...?

そうですね...とくに社会人1~2年目の頃は、仕事がめっちゃくちゃ忙しかったので両立するのは大変でした。仕事の合間に「すいません、2時間抜けます!」って言って、恵比寿まで行ってライブして会社に戻ってきたり。ライブのために、スタッフさんにお願いして仕事のスケジュールをズラして頂いたり。色んな人にご迷惑をおかけしていたと思います。両立できるようになったのは最近ですね。

ー社内では音楽活動をオープンにしていたのでしょうか?

新入社員の時は、会社に「音楽活動をしている」と言っていいのかどうかわからなかったんです。恥ずかしかったし(笑)。ただ、会社の人が、僕が社員と知らずにfacebookで「パブリック娘。」のことを「面白いラッパーを見つけた」と書き込んでくれたりして。そこから周りの同僚や上司も「ラップやってるの?」って面白がって声をかけてくれたり、ライブやレコーディングのことも素直に相談できるようになりました。本当に周りの人達の理解と支えに助けられて、音楽と仕事ができていたなと思います。

ー続けていくためには、仕事場からの理解も大切ですよね。

そうですね、仕事場でも音楽活動を応援してもらえることは大事だと思います。そのためにも、ちゃんと仕事に打ち込む。そして成果を出す。

仕事を音楽のせいにしないし、音楽を仕事のせいにしちゃいけないなって、最近は思うようになりました。僕も最初の頃は音楽上手くいかないのも仕事のせいかなとか、仕事が手につかないのは音楽のせいかなって思うときもあったんですが、逆ですよね。両方とも頑張れば、両方とも上手くいくと思います。...なんだか偉そうなこと言ってすみません...(笑)。

創作意欲を爆発させる。ファンが力をくれる。

ーとはいえ仕事も音楽も続けていれば、もちろん休みもないですよね。大変でも続けていく、その原動力になっているのはなんなのでしょうか?

創作意欲をおもいっきり爆発させられることだと思います。僕は仕事でプロダクトとかサービスづくりに携わっていて、大勢のチームでモノを作ることもすごく楽しくて好きなんですが、いろんな関係者の意見をまとめていかないといけません。自分の考えが100%反映されるかというとそうではない。

「もっとこうしたかったな」みたいな消化しきれない気持ちが、創作の原動力になっているところはあると思います。

それともうひとつ、僕らの音楽を聴いてくれるファンの存在が大きくて。「パブリック娘。」をやっていると、ライブでファンが一緒に歌ってくれたり、「いつも聞いてます!」って褒めてくれる人もいる。だから、仕事で失敗して落ち込んだとしても、「でも俺の音楽いいって言ってくれる人もいるし」って根拠のない自信みたいなものを取り戻して。また仕事に対してポジティブに向き合えるんです。


「パブリック娘。」のメンバーと。右から文園太郎さん、清水大輔さん、斎藤辰也さん

アイデアの池

―プロダクトやサービス開発の仕事と音楽活動。それぞれ異なる領域ではありますけど、両方やることによる相乗効果のようなものってあるのでしょうか?

それはかなりあると思いますね。僕の中では、「音楽」と「仕事」って別々に切り分けているものではなくて。とくにアイデアはずっと地続き、シームレスだからこそ、いい影響をしやっているんじゃなかなと思います。

たとえば、人と話したり、本を読んだり、映画を見たり、ラジオを聞いたりする時、思いついたアイデアは音楽にも活かすし、仕事にも活かしています。ライブに来てくれる高校生の話を聞いて、「そんなのが流行ってるんだ!仕事でも使えそう」とメモしたり。逆に仕事の打ち合わせ中に「この先輩の言った言葉、カッコいいな。ラップに入れよう」とか(笑)

アイデアの池みたいなのがあるんですよね。その池から「これは仕事で使おう」とか「これは音楽で使おう」みたいな、出し分けているようなイメージでものを作ってます。

あとは、細かいところですけど、仕事で使うツールを音楽制作に活かしたりしていて。アルバム制作の時も、データはすべてGoogle Driveで管理。制作のタスク管理、制作費管理など...仕事のスキルが音楽に活かせる部分はあるなと。なんだったら、家計の収支計算など、私生活のデータもGoogle Driveで管理しています。

仕事をしている僕らだから、つくれる歌があるはず

ー音楽に集中するため、仕事を辞めるという選択を考えたことは...?

それは1回もないですね。もちろん僕の周りでも音楽だけやっていこうと決めて頑張っている友だちもいて、自分もそうする選択があったのかな、と思うときはあります。ただ、自分にはその選択をする根性も、気合も、スキルもありませんでした。だから、音楽を仕事にしている友達をとても尊敬してます。あとは、仕事がめっちゃ好き。だから辞めたくない。

それに、仕事と音楽を並行して取り組む僕らだからこそ、つくれる曲があるんじゃないかなと思っています。ラップの歌詞に、仕事の悩みやモヤモヤする気持ちをぶつけてみたり。僕らの等身大の生活がありのままに書かれていることも多い。

たとえば、「あるく」っていう曲は、「フレックス退社」っていう歌詞からはじまるんです。僕自身がフレックス制で曲作りのためにコアタイムよりも一時間早くに退社して、みんなで歌広場でレコーディングして、ドンキで夕飯を買って帰ったときのことを書いています。

2019年7月にリリースしたセカンドアルバム「Aquanaut Holiday」は、平日8時の仕事終わりに、みんなで渋谷の歌広場に集まって作りました。歌詞も曲の雰囲気も仕事との両立に試行錯誤しているのが映し出されているかもしれません。あと、歌広場のポイントがめっちゃ貯まりました(笑)

両立できているかというと、まだまだこれから

ー仕事も音楽にも、本気で向き合い、両方にいい影響を与える。そんなふうにどうしたら両立できるのでしょう?

正直、僕は両立しようと思ってやってきたつもりはなく...。仕事も音楽も、どっちも大好きで、とにかく何でもやりたいという感覚に近いんです。

バズりたいとか、有名になりたいとか、そういうモチベーションも昔はありました。最近はどちらかというと、音楽をみんなと作るのが楽しい、という気持ちが強くなっています。

そして、僕自身が両立できているかというと、まだまだだなと思っています。仕事に関しては、自分が作りましたと言えるサービスをまだ生み出せていない。そういう仕事をまずは一つ、自分で手掛けていきたいですね。

音楽に関しては、引き続きパブリック娘。の活動を頑張っていきたいです。また、新しい挑戦として、ソロでの楽曲制作にも力を入れていきたいなと思っています。

あとは、最近結婚したので幸せな家庭を築いていけるよう頑張りたいです(笑)。


文 = 野村愛
取材 = 黒川安莉


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