最新の海外テック・トレンドを発信している、ポッドキャスト「Off Topic(オフトピック)」。スタートアップ・テック界隈で、リスナーが急増中!「Off Topic」とは一体なに?いま注目のポッドキャストのウラ側に迫りました。
2018年11月に配信をスタートして以来、わずか1年ほどでAppleとSpotify Podcastのテクノロジー部門別1位を獲得したポッドキャストがある。
その名も「Off Topic(オフトピック)」。デジタルガレージ出身の元VC2名が個人活動として立ち上げた、アメリカの最新テックニュースやトレンドについて解説する番組だ。
さらに、JAPAN PODCAST AWARDS 2020では「Spotify NEXT クリエイター賞」も受賞。
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— Spotify Japan (@SpotifyJP) March 5, 2021
JAPAN PODCAST AWARDS
Spotify NEXTクリエイター賞
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"Off Topic // オフトピック" (@OffTopicJP)
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また、6月からは、Spotifyオリジナルから速報性を重視したテックニュース系ポッドキャスト「bytes by Off Topic」をスタート。スタートアップ・テック界隈でも、彼らのポッドキャストのリスナーが増えてきている。
誰もが音声コンテンツを発信できるいま、なぜ「Off Topic」は人気を集めている?
「Off Topic」が誕生した経緯、制作の舞台裏について、配信者の草野美木さん、宮武さんにお話を伺った。
「Off Topic」は、アメリカを中心に最新のテックニュースやスタートアップ、ビジネス情報、カルチャートレンドについて、深堀りしながら解説する番組だ。
配信者の草野美木さんと宮武徹郎さんは、もともとVCとして働いたバックグランドを持つ。当時から海外テックのトレンドやニュースについて情報共有していた2人。何気ない雑談から「Off Topic」ははじまった。
草野美木さん(以下 草野さん):
わたしも宮武さんも海外のテックニュースが大好きで。よくslack上で情報シェアしあったり、オフィスであったときは雑談したりしてたんですよね。
宮武さんは月に2回ほどアメリカに出張で行ってたので、現地で得たシリコンバレーの生の情報がすごくおもしろくて。アメリカのテックニュースって、日本だとあまり流れてこない情報ですし、Podcastで配信したら、聴いてくれる人いるんじゃないかと思いました。
宮武徹郎さん(以下 宮武さん):
そのときちょうど「音声市場がこれからさらに伸びていきそう」だなと思って、市場を見ていたタイミングで。配信者として体験してみたいキモチがありました。草野さんから声をかけてもらって、けっこうとんとん拍子ではじまった気がします。
いまでこそ音声コンテンツがたくさん出てきているが、2018年当時は日本ではまだ少なかったはず。音声市場の成長性をどう捉えていたのだろう。
宮武さん:
2019年にSpotifyが買収したポッドキャスト配信プラットフォーム「Anchor(アンカー)」には、2016年ごろから注目していました。アメリカでユーザー数を伸ばしていて、そのぐらいのタイミングから音声市場について、アンテナを張っていたような気がします。
草野さん:
私はもともとポッドキャストを聴くのが好きで。アンドリーセン・ホロウィッツとか「TechCrunch」とかが配信しているポッドキャストを聴いてました。
アメリカはおもしろい音声コンテンツがたくさんあるんですよね。それなのに、日本に情報が流れてないのはもったいないなというキモチもありました。要約したり、まとめて編集したりして、日本に提供するだけでも価値はありそうと考えてました
2018年の11月に配信をスタートして以来、徐々にリスナーを増やしてきた「Off Topic」。1回につき、40分程度。なかなかのボリュームだが、それでもリスナーの心を掴む理由とは。
草野さん:
情報を届けるとき、コンテキストがとても重要だなと感じています。たとえば、“古着フリマアプリ「Depop」がEstyに買収された”というニュースの裏には、Z世代の環境問題やサステナビリティへの関心やみんなと同じありきたりさより、1点ものやオリジナリティが大切という価値観が分かってくる。そこからクリエイターエコノミーのような新しいトレンドが見えてきます。
つまり、「なぜ、それが起きているの?」という部分。ここが、「Off Topic」では届けられたらいいなと思っていて、もしかするとリスナーの方にも聴いていただけているところなのかもしれません。
「アンドリーセンのVCメディア戦略」「オープンメタバースへの大きな壁」「Netflix 創業物語」... 彼らの取り上げるトピックはとてもユニークだ。独自のコンテンツはいかにして生まれているのか。企画の源泉について「インサイト」というキーワードが出てきた。
宮武さん:
ファクトだけじゃなくて、なにか面白いインサイトがあるかは重視しているところですね。ファクトはググればいくらでも得られるので。
ぼくらの発信しているコンテンツにふれたことで、聴いた方になにか新しいアイデアだったり、戦略に繋がったり、何かしら新しいきっかけにつながったら嬉しいなと思っています。
過去に何度か登場している「Disney+」を事例に、宮武さんがインサイトを得たきっかけについて語ってくれた。
宮武さん:
最初は、「Disneyって、すでにNetflixでも配信してるのに、なんでわざわざ独自のプラットフォームで配信するんだろう?」っていう疑問がきっかけだったという。
そのとき、ちょうど別件でD2C領域をリサーチしていたタイミングで、ふと「ビジネスのコンセプトとして、D2Cと似てるかも?」って思ったんですよね。
ユーザーと直接繋がることによって、ユーザーの属性や好みのデータが得られる。それらをもとに、自分たちでプラットフォームを改善出来たり、新しい収益モデルがつくれたりする。こういった、D2Cのコンセプトが、ストリーミング業界にも生まれているのではないかと捉えました。そこからいろいろな文献にあたって、リサーチしていきました。
情報が溢れかえっている今、いかに最先端の情報やトレンドをキャッチアップしているのか。2人が普段インプットしている情報源についても尋ねた。
宮武さん:
Twitter、YouTube、ポッドキャスト、Newsletter、あとはアメリカにいる知り合いのVCに直接ヒアリングしたりもしています。とくに、Newsletterはアメリカでここ1~2年でかなり活発になっていて、VCだったり、テックメディアがこぞって配信しています。
Twitterでは、テック・スタートアップ領域に精通している方々をフォローして、いまどんなトピックがホットなのか、それに対してどういう発言をされているのかキャッチアップしています。
草野さん:
私も宮武さんと同じで、Twitterやポッドキャスト、Newsletterも見てるんですけど、けっこう「おもしろい」と感じるかどうかは大事にしているかもしれません。
本屋さんにいって面白そうな本を探したり、たまたま読んでいた記事で見つけたおもしろそうな会社を詳しく調べてみたり。
あとは、個人的にD2Cとか次世代の新しいブランドを見るのが好きなので、instagramで情報インプットすることが多いです。たとえば、「Glossier」というコスメブランドのCEO、Emily WeissさんのInstagramを見ていると、新しいブランドがたくさんアップされていて、そこから自分で調べたりしてます。
「Off Topic」の特徴に、コンテンツの届け方がある。ポッドキャストに限らず、ニュースレターサービス「Substack」も活用している。さまざまなアプローチをとる、その狙いとは。
草野さん:
もともと戦略立てていたわけではなくて、自然といまの形になっていきました。
最初はポッドキャストだけやっていたんですけど、なかなか再生回数が伸びなくて。そもそもポッドキャストの存在を認知してもらえてませんでしたし、音声コンテンツの特性上ある程度聞いてみないと中身がわからないので「聴いてもらう」てけっこうハードルが高い。
まずは、自分たちの存在を知ってもらって、「この人たちのつくるコンテンツ、有益そうだな」と思ってもらえるようなきっかけが必要だなと思って。そこからnoteを書くようになりました。
宮武さんの書いた記事が、Twitterでめっちゃシェアされて。そこから、少しずつポッドキャストの存在を知ってもらえたのかなと思います。
宮武さん:
私たちも実際にやってみて気づきましたが、テキストはテキストの、音声は音声の、それぞれ特性があると思います。たとえば、図を出したりするのはテキストのメディアの方がいいですし、ポッドキャストだとたくさんの情報量を早く届けられますし。どんなコンテンツを、どう届けていくといいのか、わたしたちもまだまだ模索中ですが、今後もより良いアプローチを探して実践していきたいです。
ポッドキャストをはじめて約2年半。配信を続けるなかで得られた経験、広がったチャンスがあったという。
宮武さん:
もともと僕自身、「Off Topic」をはじめるまでTwitterもやってませんでしたし、情報発信を一切してなかった人なので、「Off Topic」をはじめたからこそ、出会えた人がたくさんいます。
クリエイターの方でしたり、上場会社やスタートアップの経営者、VCをされている方とか。「メタバースについて詳しく教えてほしい」とか「事業のコンサルをしてほしい」とか、DMでご相談いただくこともあります。
草野さん:
私も宮武さんと同じで、会いたかった人に会えるのは本当に大きいですね。たとえば、最近ゲストに来ていただいた10Xの矢本真丈さんとかまさにそうで。私も矢本さんのポッドキャストを聞いたことがあったので、まさかお声がけいただいて、お話しできるとは思ってもみなくて、嬉しかったです。
2021年3月に「Off Topic」を法人化した2人。最後に、今後の展望について教えてくれた。
草野さん:
海外、とくにアメリカのテックニュースやスタートアップの情報は、まだまだ日本でシェアされていません。それは、すごく勿体ないと思っていて、なんとなく「アメリカの●●はすごい」と壁をつくってしまったり、新しいビジネスやプロダクトのヒントを得られる機会を失ってしまいます。
もちろん、アメリカで成功していることがそのまま日本で成功するとは限らないのですが、「知ること」で得られるものはたくさんあるはずです。面白い情報っていうのは沢山あるので、少しでも気づきが得られたり発見のあるコンテンツを増やしていきたいと思っています
宮武さん:
これから日本のスタートアップが、ユニコーン化したり、世界を舞台にビジネスをしていくためには、最新のテック・ビジネストレンドやカルチャーについて知ることが必ず武器になると思っています。
今まで限られた人たちしか情報にアクセスできていなかったと思うので、できるだけ分かりやすく、入口を広げるためにも、僕たちが早く深くコンテンツを届ける役割を担っていけたらと思っています
取材 / 文 = 野村愛
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