「もう一つの地球をつくる」そんなぶっとんだプロジェクトをスタートさせた佐藤航陽さん。彼を突き動かすのは「未知」に対する好奇心。その好奇心を加速させるための7つのキーワードとは?
仮想地球プロジェクト「EXA(エクサ)」について
佐藤航陽さんがスタートさせた、仮想空間にもう一つの地球を作るプロジェクト。人工衛星から取得した衛星データとブロックチェーン技術を活用する。位置情報と連動してトークンが発掘され、その仕組みは現実世界の経済とは逆相関させる。つまり、現実世界において都市に富が集約すればするほど、貧しい地域の方の成功する確率が高まるということ。プロジェクト発表後、facebookのグループページでコミュニティメンバーを募集。発足わずか3ヶ月でその規模は約3000名にまで拡大している(2018年8月現在)。宇宙ビジネスに携わる人、データサイエンスやトークンエコノミーに関心のある技術者が集結、衛星データの新たな活用の可能性を模索する。プロダクトのリリースは2018年内を計画。
仮想地球プロジェクト「EXA」を開始してから、このプロジェクトに取り組む理由を良く聞かれるんですが、私の中の答えは非常にシンプルで。「未知なるものを知りたい」というその一点に尽きます。
言ってしまえば、5歳児が疑問に思うことを突き詰めているだけなんです。世界はなぜ存在するのか。世の中はどういう仕組みで動いているのか。
私自身、世界各国でいくつかの事業を展開してきて思うのが、どの国や都市も非常に似通った部分が多いということ。その中で、ある種のパターンというか、世界全体の構造が自分の中である程度イメージできるようになってきた。最近は、次なる関心領域として宇宙に注目しており、プロジェクトとして取り組むに至った次第です。
仮に、宇宙というものが自分自身の手で再現できるのであれば、それは私が宇宙を理解したと言えるのだと思いますし、再現できないのであれば、まだ理解できていないということ。
世界のIT企業の経営者の中には宇宙ビジネスを志す人も多い。もしかしたら、彼らも「もうわかりきったこと」に飽き飽きしていて、わからないことを欲しているのかもしれません。常に未知を追い続けていたい、その気持ちは私も強いですし、すごく理解できますね。
仮想地球プロジェクト「EXA」は、イーサリアム・ブロックチェーン上で発行したトークンを活用することで、独自の経済圏を構築することを目指しています。
今回のトークン設計について、あえて既存の経済理論は無視しました。おそらく意味がないだろう、と。
トークンに限らず、通貨システムをゼロから設計できる人は、経済学者でもほとんどいないといっていい。彼らは既存の経済を分析することは得意ですが、通貨システムの設計を理解できていない。経済学者が通貨システムの設計が出来るのであれば、彼らはすでに億万長者になっているはずです。
人間がどのような状況においてどのような行動を選択するか、そういったシミュレーションはIT企業でゲームコンテンツを制作しているような人間の方がはるかに上手(うわて)だなと感じています。既存のフレームにとらわれて頭でっかちになっていては、新しいチャレンジはできません。
学者が経済に詳しいのなら、なぜみんな研究費に困ってるのか。その知見を使って自分でどうにかすれば良いだろうに。
— Katsuaki Sato (佐藤 航陽) (@ka2aki86) 2018年6月27日
仮想地球プロジェクト「EXA」においても、ブロックチェーン技術を部分的に取り入れていますが、完全にプロジェクトの目的を達成するための手段として用いています。
インターネットの世界においては、データは基本的にはコピーできるものですが、ブロックチェーン技術を活用することで、オンライン上でコピーできない形でデータに希少価値を持たせることが出来る。その機能性のみを取り入れるというスタンスで、ブロックチェーン技術を採用しています。
逆に言うと、それ以外の部分については、ブロックチェーン技術を使う必要は基本的にはない。中央集権システムが得意な領域をわざわざブロックチェーン技術で置き換える必要はまったくありません。
非中央集権性の実現が目的である場合と、目的を実現するために非中央集権性を用いる場合と、似てるからごっちゃになりやすい。何が「目的」で何が「手段」であるかを整理するだけでもブロックチェーン系プロジェクトの動きは全然変わってくる。
— Katsuaki Sato (佐藤 航陽) (@ka2aki86) 2018年7月20日
新しいことに取り組む場合、法規制が追いつくのを待っていても仕方がない。むしろ、既存の法規制を踏まえるよりも、「何に該当するのかわからないもの」に取り組む方がよっぽど価値が高いと考えています。
「EXA」に関しては、どこかの国の法律の枠組みで考えている時点で、プロジェクトの趣旨から外れてしまう。日本でダメなら他でやるだけ。法規制が追いつくのを待ってから取り組むのは論外で。あまりにスピード感に欠けますし、イノベーションから取り残されてしまいます。
メタップス子会社でICO(イニシャル・コイン・オファリング)*を実施しましたが、現時点では、会計制度がまったく追いついていない。体感としてもこれは長い時間がかかるだろうなという気がしています。
(*)「ICO」は「IPO」になぞらえてつくられた造語であり、企業が独自のデジタルトークンを発行することにより、資金調達を行う仕組みのことを指す。
どのように着想を得ているか、ここもよく質問されるのですが、私の場合、本当になんでもない些細なことから。その中でも注目しているのが、過去と現在の差分です。
たとえば、3年前の自分は何を思っていたのかなと思い出したりもします。時間がどのように流れていて、人間はどのくらいの期間でどのくらい変化するか。Facebookの4年前のタイムラインを50人くらい見ると、みんな同じような流れで同じように価値観が変わっていることがわかります。
その他では、過去のカレンダーのアポを引っこ抜いてきて、自分がいつ何をしていたかを振り返ってみる。自分の価値観の変化を客観的に観察します。どのような速度でどのように自分の価値観が変わっていくのか分析するようにしています。
未来は予測できないと言われますが、技術的にどの方向に世の中が向かっていくか、ある程度のパターンがあると思っています。
基本的には、世の中は利便性が高まる方向に向かう。既存の概念を維持するために要するコストと、それを代替するために要するコストが置き換わる瞬間が必ずやって来る。そのタイミングを見極めることが重要です。
周りの反応も見ます。イノベーターが騒いで、アーリーマジョリティが騒いで、マス層が反応し始める。この一連のプロセスの中で、今、自分たちはどの付近にいるのか、俯瞰的に眺めるようにしています。
多くの人は、固定概念に縛られています。幼少期の頃から、教科書に書いてあることが“正しい”し、そう信じ込まなければ試験で高得点が取れない。評価もされない。生きていきづらい仕組みになっています。
社会はある種の「幻想」によって成り立っていて、それが解けないようにガッチリと抑え込まれているといってもいい。
なぜ人が動くのか、なぜお金が降ってくるのかという仕組みが全然わかっていないし、わかる必要もない。
そこから「はみ出る」というのは実際にはかなり難しい。既存の仕組みで安定していることを壊してまで、わざわざ外に出ようとするモチベーションは普通は生まれないですし、恐怖もあるかと思います。よくできた仕組みでもあります。
ただ、経済がどういうものであって、どのような仕組みで回っているか、理解ができると、むしろ飛び出したくなるし、飛び出すことにも恐怖心はなくなるはず。仕組みさえわかれば、 生活に困ることはありませんし、既成概念も突破できるのだと思います。
実際は人間って死ぬギリギリの間際まで世の中の幻想に縛られて他人の時間を生きてしまう生き物なんだろうな。何の制約もない圧倒的な自由に対する潜在的な怖れのようなものがどこかにあるんだろう。
— Katsuaki Sato (佐藤 航陽) (@ka2aki86) 2018年8月9日
私の行動原理は一貫していて、経済やお金のあり方を変えて、新しい世界を創ること。これを人生のミッションとして掲げています。具体的には、経済的格差を解決する新たな社会システムを作ることです。
それが商業的に成功できるようなモデルであれば、企業として取り組みますし、企業の枠組みの中で不可能なことについては、ミッションに準拠した形で別の方法を考えていく。
すごくシンプルなのだと思います。すべてはミッションに帰結する。メタップスで取り組んでいる事業も、「EXA」もミッションを実現するための手段の一つに過ぎません。その先についてはまだわからないのですが、「EXA」で一区切りになるはず。年内に実際のプロダクトとしてリリースできればと考えています。
佐藤航陽、好奇心を加速させるための7つのキーワード
・探究心が全て
・頭でっかちになるな
・ブロックチェーンは手段にすぎない
・法規制が追いつくのを待つな
・過去と現在の差分を見よ
・精神の罠から逃れよう
・行動原理は新たな仕組みを創ること
文 = 勝木健太
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