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CAREER HACK

「子どもは起業しちゃダメ?」「ダメじゃないよ」12歳の加藤くんが、お母さんと起業を決めた日

2019-01-24

「子どもは起業しちゃダメ?」「ダメじゃないよ」12歳の加藤くんが、お母さんと起業を決めた日

加藤路瑛くんは12歳。「何をやっても長続きしない子だったんですよ」と語ってくれたのは加藤くんのお母さん。ある日突然「会社をつくりたい」という彼からの相談にびっくり仰天。「ほんとに?」「うん」ーーこうして始まった加藤くんとお母さんの起業奮闘記。「やってみたい」をやってみる。そこにはステキな親子関係がありました。

「ぼくは、社長になる」

僕は起業します。社長になります


中学1年生の秋、12歳の加藤路瑛(じえい)くんは、クラスメイトたちの前でこう宣言したといいます。

中学生が起業? 社長になる? 前例はないし、トラブルも避けたい。そこで加藤くんは担任の先生、学年主任、教頭先生、校長先生、クラスメイトにきちんと説明し、理解を得ていくことに。


「みんなの前で発表するのはすごく緊張しました。怖さもあった。中学生と起業は世界が離れすぎていて、なかなか理解してもらえないかもしれないと思ったからです」


その発表を聞いた先生やクラスメイトたちが、どう思ったかはわからない。ただ、少なくとも加藤くん、そしてお母さんにとって大きな一歩となったはずだ。そして、2018年12月に 株式会社クリスタルロードを設立。


「未来の中学生たちの可能性が少しでも広がるなら、その人生を選びたい」


加藤くんは、まっすぐな眼差しで語ってくれました。

+++【プロフィール】加藤路瑛 (取締役社長) 2006生まれ。千葉県出身。中学1年生。クラウドファンディングで115万円調達し、12歳で親子起業スタイルで起業。株式会社クリスタルロード取締役社長。小中高生の起業支援やキャリア教育事業に取り組む。小中高生のみで運営するメディア「TANQ-JOB」の編集長も務める。子どもを理由に「今」をあきらめなくていい世界を作るために活動している。

将来は社長か研究者?子育て中に親が予感した未来

ー自分の子供が中学生で起業するって、親として勇気のいる決断のように思うのですが、路瑛くんはどんなお子さんだったんですか?


お母さん:1652グラム。路瑛は普通よりも小さな体で生まれました。小さい頃は、泣き虫でゲームや理科が好きな小学生でした。

やっぱり親なので、子供が幸せになる道に少しだけ先回りして誘導してあげたいと思っていたんです。でも、うまく表現できないのですが、彼は社長か研究者になるのでは?というのが私と主人の共通認識でした。他の子よりできないことは多かったので、決められた作業をやる仕事よりは、自分のペースでやれるような仕事に向いているだろうなとは思っていました。

路瑛くん:僕は小さい頃から祖父母が経営していた民宿で、お客さんの送り迎えや荷物を運んでお手伝いをよくしていました。そのときお客さんからお小遣いをもらったこともあって。母の職場にも3歳くらいからよく出入りして遊んでいました。

少しだけ早く、社会と接点を持つ環境にいたので、勉強や部活よりも大切な事があるんじゃないのかな?と思える体験が日常に転がっていました。

+++3歳の頃の路瑛くん

勉強のために買ったカードゲームが親子の運命を変えていく

ー路瑛さんは、小学校を卒業した年に起業してますよね。生活のどこに起業のきっかけがあったんですか?


路瑛くん:小学6年生のころから、理科の実験をするユーチューバーが面白くて、「僕も面白い実験をやるユーチューバーになりたい」と思ったんです。でも、薬品を使うには毒物や危険品の資格が必要そうなので、まずは勉強からはじめました。それを見ていた母が、「ケミストリークエスト」という化学のカードゲームを買ってくれて。実はこれが親子起業するきっかけになっているんです。

+++

このゲームは、僕と同じ12歳の男の子が作って起業していたんです。しかも、ゲーム自体もめちゃくちゃ面白くて、化学の勉強もできて。世界中で12万部も売れてるんですよ!

母には本当に申し訳ないんですが、化学ではなくて、違う方向に興味が向かってしまって。

このカードゲームに出会った時、働くのは大人になってからという常識が吹き飛んだんです。きっとこの本に出会ってなかったら、12歳で起業できることも知らないまま。怪しい実験を中継するユーチューバーになっていたかもしれません(笑)

翌日には、母と担任の先生に、「起業したいです」と伝えていました。

起業したい。中学1年生の母親は、その言葉に何を感じたのか?

ーたった一つのカードゲームが起業のきっかけになってたんですね。正直、起業したいと言われてお母さんはどう思いましたか?


お母さん:以前、路瑛が『化学の実験を中継するユーチューバーになりたい』と言ったとき、ちょっと複雑な気持ちでした。経験としてはいいけれど、本音は勉強や部活を頑張ってほしくて。

でも、普通に勉強して普通に就職する道が、路瑛にとって本当に幸せなのか?それは夫婦で何度も話し合いました。

私は一般的と言われる生き方をしてきたので、正直、路瑛に合う生き方がわからないんです。長く生きている知識を使って先回りする子育ては、正解じゃないかもしれない。

そう考えると、親が子より長く生きているからって、親の言うことが正しいわけではないのかもしれません。路瑛が「やりたい」と伝えてくれたことを応援することが、彼の生きやすい未来につながるんじゃないかなって。

+++加藤路瑛くんのお母さん、加藤咲都美さん。株式会社クリスタルロードの代表取締役を務めている。

路瑛くん:「同い年の子も起業してるから無理じゃないよ!」そう言って説得したら、お母さんは力を貸してくれて。あのときは嬉しかったです。

お母さん:正直その時は半信半疑でした。でも路瑛は、あっという間に担任の先生にも起業したいと伝えていて。校長先生にプレゼンするから事業計画書を作るのを手伝ってほしいと言われて。

あれよあれよと事が進んでいったんです。でもこの時、この子は本気で起業したいってことが伝わってきたんです。

12歳の少年が掲げた決意のビジョンとは

ーでも、起業や事業計画って、ビジョンや想いが必要ですよね。どうやって事業の構想を練っていったんですか?


お母さん:本人の中に大きな軸があったので、私はサポート役に徹しました。「部活や勉強を頑張れば讃えられる。でも中学生で起業して社会のために働くと『中学生らしいことをしなさい』と言われてしまう。この常識はおかしい。僕が起業することで、未来の中学生の前例になりたい!」と伝えてくれて。

路瑛くん:最初の事業計画書は出来が悪いです(笑)

お母さん:一緒に事業計画書を作る過程で、ふと、路瑛より長く生きているのに、この選択肢や価値観は私にはなかったなあって気がついて。大人ですから、子どもよりできることは多いです。でも、子どもに勝てない部分もあると、この時気付かされました。

だから、枠にはめるんじゃなくて、1人の人間として尊敬してサポートしていこうと意識が変わったんです。

+++校長先生に提出した事業計画書の一部

僕が起業した時、クラスメイトからのあだ名は「社長」になった。

ー実際に起業してみて、どうでしたか?


お母さん:現在、中学生が起業するためには高い壁が存在しています。まず14歳以下は印鑑証明を作ることができません。ですから、法人登記することは出来ません。中学生が起業するために、いくつか選択肢はありますが、そう多くありません。私達は検討の結果、親子で株式会社を設立する「親子起業」という形を取りました。親が代表取締役として法人設立し、子どもが代表権のない取締役社長になる起業スタイルです。

路瑛くん:未成年の法人登記は事例も少なく、ネットで調べても分からないことが多くて苦労しました。会社を設立する前に、クラスメイトへの説明も待っていて。

同級生に起業して社長になると伝えるのは、すごく恐怖心がありました。発表はあっという間に終わりましたが、その日から「社長」というあだ名で呼ばれるようになって。これは仕方ないことだと思うんですが、もう少しナチュラルに中学生の起業できるといいなと思ったりもします。

+++

路瑛くん:起業の際の資金を集めたクラウドファンディングでも、話したこともない、顔も見えない人からSNSで批判的なコメントも寄せられる事があったんです。

僕はまだ12歳なので、大人から頂いた意見は受け止めて勉強していきたいと思っていました。でも、何も見ずにただ批判されてしまうことが何度もありました。そうなるとどうしようもなくて、ただただ傷ついてしまいます。このときばかりは何度か飼っている猫を抱きしめて、やり場のない想いを解消することもありました。

お母さん:路瑛の言う通り、起業は決して特別なことじゃないと思うんです。部活や勉強と一緒で、子供のやりたいことの表現方法の一つだと思うんです。でも、中学生の起業は前例が少なく、想像がしづらい分、批判されやすいのかもしれません。

顔も知らない大人からもらった優しい光

未成年の法人登記の資料の複雑さ。同級生への起業の発表。起業後のSNSからのコメントなど、社会的にもっと当たり前の選択肢になってほしいですね。

路瑛くん:事業の相談をしても批判され、大人からのアドバイス通りにしていくと個性のない事業内容になっていく感覚がありました。大人と話せば話すほど、自分がつまらない大人になっていくような感じもしました。

でも、社会には優しい光もありました。CAMPFIREで事業立ち上げの資金を募り始めると、温かい支援も集まってきたんです。

話したこともない大人の方から、30万円の支援が入って。プロジェクトはあっという間に成立しました。CAMPFIREさんのHPのトップに掲載していただいたり、Twitterで拡散していただいて、最終的には100万円以上の支援が集まったんです。

+++

路瑛くん:僕は夢や目標を単純に批判する大人をドリームキラーと呼んでいるんです。もしかしたら一定の批判は仕方ないのかもしれません。でも、心を込めて書いた文章を見てくれて、応援してくれる大人も社会にはたくさんいるということに気付くことができたんです。

お母さん:私は少しだけ、ライターとして活動していたことがあったので、路瑛に文章の書き方を教えていました。路瑛は、すぐに自分の言葉に変換して表現していったんです。クラウドファンディングの文章は、実は何度も何度も書き直したんです。でもその文章に共感して、応援してくださる人が多くて。実は「このまま路瑛を起業させて本当にいいのか」不安だったのですが、多くの方のご支援に背中を押してもらえた気分でした。

+++

若者の挑戦に僕たちは何ができるのか?

ー中学生が起業することの、良い面も悪い面も見えた気がします。実際に中学生で親子起業してみて感じていることを教えてください。


路瑛くん:中学生が部活や勉強に精を出すことはプラスの評価をされますよね。でも、起業という形でビジネスに力を注ぐと、なぜかマイナスの評価をされてしまいます。「仕事なんて大人になってからやればいいんだ」って言われます。

なので現状、やりたいと思っても中学生が起業できる確率は相当低いと思います。僕は活動を通して、未来の中学生が起業という選択ができる確率を1%でも高めたいと思っています。

お母さん:私は、中学生で起業することは、あくまでモデルケースの1つでしかないと思います。決して起業を勧めたいわけではありません。でも、子供と毎日を接する中で、特徴や個性を肌で感じていると思うんです。

子供の個性を生かして、子どもが自分らしく未来を生きるための練習手段として、親子で起業する選択肢があってもいいのかなとは思います。金銭的なリスクはほとんどないですし。親子で会計や経営、法律なども学べてスキルアップできます。自分の子供の良いところを認めて、一緒に歩む。そんな選択肢があってもいいのかもしれません。

(おわり)



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