2019.12.03
GunosyがCDO (Chief Data Officer)ポジションを新設。定義・役割を徹底解説[寄稿]

GunosyがCDO (Chief Data Officer)ポジションを新設。定義・役割を徹底解説[寄稿]

CDO(Chief Data Officer)とはどのようなポジションか。データドリブンを掲げてきたGunosyのCDO(最高データ責任者)、大曽根 圭輔さんによる解説記事(寄稿)をお届けする。

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【著者プロフィール】 株式会社Gunosy 取締役 CDO 大曽根 圭輔
筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程修了。博士(工学)。株式会社サイバードにてデータ分析部門立ち上げ等を担当後、株式会社Gunosyへ入社。2018年9月より執行役員メディア事業本部、「グノシー」 事業担当を務める。

そもそもCDOとは何か?(求められる要件・スキル)

まずGunosyにおけるCDO (Chief Data Officer)をご説明する前に、そもそものCDOについてご紹介します。

CDOは、最高データ責任者のこと。ほかのC-Suite(CEO、CFOなど)と比べると歴史が浅く、明確な定義はありません。

海外においては、伝統的に情報系の経営幹部としてはCIOが置かれることか多くありました。しかし、CIOは情報セキュリティなどの「守り」の部分を担当するのに対して、CDOはデータの価値の最大化という「攻め」の部分を担当する必要があります。具体的には、データの取得から活用までを考える役割になります。

CDOに求められるスキルは、データサイエンティストに必要となる分野の3つ(ビジネス力、データサイエンス力、データエンジニア力)と重複する部分も多いと考えています。

また、Rethinking The Role of Chief Data Officerの記事では、business domain expertise, data technology and AIの3つをあげており、データサイエンティスト協会の定義する3つの分野と近くなっています。

現状では、CDOの68%がビジネス系の学位を持っており、44%が技術系の学位になっています。ビジネス系の学位を持つCDOが多いですが、近年では、機械学習、AIの重要性が増しているため、ますます技術的な素養が必要になると考えられます。

私自身は、もともと大学でも人工知能学会を含む学会に論文を投稿しており、博士(工学)も取得し、Gunosyにおいても執筆をしています(AI)。

また、前職およびGunosyにおいてはデータ分析およびアルゴリズムの構築などを行なっています(data technology)。

そして、2018年からは「グノシー」の事業責任者を担当しています(business domain expertise)。

そのため、キャリアを通じてCDOに必要な3つのスキル(business domain expertise, data technology and AI)すべての業務経験を満たすことができると判断いただき、GunosyのCDOを務めることになりました。

図1. データサイエンティストに求められるスキルセット(引用 https://www.datascientist.or.jp/)

GunosyがCDOを置いた背景

次に実際、GunosyがCDOを置いた背景についてご紹介します。

まずGunosyは企業理念として「情報を世界中の人に最適に届ける」を掲げています。

「適切な人」に「適切な情報を届ける」ためには、「人(ユーザ)」「情報(コンテンツ)」双方のデータの価値を定義付け、そのデータの価値を最大化することが不可欠です。

Gunosyは情報キュレーションアプリである「グノシー」以外にも、KDDI株式会社と共同で提供しているニュースアプリ「ニュースパス」、女性向け情報アプリ「LUCRA(ルクラ)」などのサービスを提供しています。

サービス開始当初はテキスト中心のニュースが主要なコンテンツであり、さらにもともと自然言語の解析を得意とするメンバーが多く在籍していたため、コンテンツおよびユーザの行動履歴などのデータを活用し、コンテンツ配信アルゴリズムを改善してきました。

しかし、最近は配信する記事の本数だけではなく、動画やクーポンなどの新しい形式のコンテンツも提供しており、コンテンツの量だけではなく、種類も増加しています。

それに伴い、データ活用の範囲が

1 プロダクトを横断してのデータ活用
2 動画、クーポンなどの新しい形式のコンテンツへの対応
3 データを用いた新規プロダクトの開発

など多岐にわたるようになりました。そのため、将来に向けてデータ活用の戦略を構築する必要があり、CDO(Chief Data Officer)の役職を配置しました。

GunosyにおけるCDOの役割は、CPOにも近い

Gunosy(グノシー)はもともとデータマイニングや自然言語処理を学んでいた東大院生が、在学中に作り出したサービスです[サービス開始時のブログ]。

そして、「グノシー」はサービス開始当時からユーザの情報取得の傾向を人工知能で解析し、ユーザに有意義な情報を提示する(パーソナライズする)というデータを最大限に活用したプロダクトでした。

さらにはデータ・ドリブンな運用で、マーケットのニーズを把握し、プロダクトを伸ばすことにも長けています。その能力は「グノシー」以外のプロダクトでも発揮されています[LUCRAの立ち上げに関するインタビュー記事]。

そのため、Gunosyでは、プロダクトの成長とデータの活用とが密接に結びついていると言えるでしょう。CDOの役割である「データの価値を最大化すること」と、「プロダクトの価値の最大化」、つまり、ユーザにとって便利なプロダクトであることがほぼ同義になります。

そのため、GunosyにおけるCDOはプロダクトの成長に責任を持つCPO(Chief Product Officer)と近い役割になっています。

実際に、私自身がグノシーの事業責任者も兼任しており、プロダクトの成長にもコミットしています。

GunosyにおけるCDOはデータの戦略的な活用に加え、プロダクト(サービス)を成長させることで、どのようにデータを継続的に生み出していくかを考えることが非常に重要になります。

日本企業におけるデータ活用のあり方

日本企業のデータ活用は10カ国で最下位という記事があるように、日本ではデータの活用がなかなか進んでいない現状があります。

理由として、データを活用する人材の不足はもちろんですが、「データの蓄積」、「データの活用」を一貫して行う体制がない、経営幹部にデータリテラシーのある人材がいないなどが挙げられるかと思います。

その点でも、CDOなどのポジションを用意する、活用のための部署を設立し、データ活用への取り組みを継続的に行うことが重要になると思います。

今後10年を見据えたときの、CDOの役割

Data is Oilと言われて久しいですが、新エネルギーとしての石油ではなく、10年後はそれが当たり前に蓄えられ、インフラとして当たり前にある状況になると考えられます。

その際に、データをどう運ぶか、どうデータを活用するかなど、価値創造の面がよりフォーカスされるようになると考えられます。

AIの民主化と合わせて、CDOの役割はますます重要になると考えています。GunosyのCDOとしては、流通するコンテンツ「燃料」としてのデータ、それを適切な場所に適切な形式で運ぶ「兵站」としてのデータ基盤、それらを事業に応用することで成長を加速させる「エンジン」をサイクルとして循環させ続けることを重要視しています。

Gunosyはエンドユーザ向けのサービスを提供する会社ですので、サービスが成長し、顧客基盤が拡大すれば当然データも増加します。その逆もまた然りで、事業成長とデータ活用が切り離せない存在となっています(図2を参考: この図はAmazonの成長サイクルを参考に作成)。

このような活用の流れがよりスムーズになることで、中長期ビジョンにある通り、スマートフォンでのログに止まらない、様々なデータの利活用、ひいてはユーザの満足度向上につながると考えています。

今後はGunosyに限らず多くの企業で、データの専門家としての役割だけでなくより事業に結びつき、成長を支えるような能力がCDOにとって重要になると思います。データの活用と事業成長の双方にコミットしている現在のポジションは、レアなケースではないかと考えられます。

よりデータにより継続的に事業を伸ばし続けることのできる体制の構築、事業成長の実績を作り続けて、今後のCDOとしての役割定義の一例となれればと思います。

図2. Gunosyにおけるデータ活用のサイクル


文 = 寄稿


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