スマホゲーム実況が楽しめる『Mirrativ(ミラティブ)』の分析部、坂本登史文さんによる寄稿記事「分析の基本的な考え方」を前後編の2本立てでお届け。PM、マーケター、デザイナーはじめ、あらゆる職種で「分析」する前に知っておきたい、分割と分解の違いとは?
【プロフィール】ミラティブ分析部 坂本登史文 @sakamoto_mirra
ミラティブにてデータ分析グループリードと新規事業PMを務める。2010年京都大学理学研究科修了。大手メーカー系IT企業でSAPコンサルタントとして会計システムの開発に従事。その後、データサイエンティストとしてDeNAで活躍。2014年3月、freee株式会社に参画、データ分析チーム・グロースチームの立ち上げ、会社設立freeeのプロデュースなどを経て、現在はミラティブ。新規事業をの責任者を経て、現在は分析部部長。
こんにちは、株式会社ミラティブ分析部の坂本登史文です。
新年度ということで、新しい職種にチャレンジする方も多い時期かと思います。
今日は、様々な職種で応用ができる「分析の基本の考え方」を読み物形式で紹介します。読んだらすぐに使える考え方なので、ぜひ使ってみてください。
それでは、はじまりはじまり。
俺はタクミ。新入社員としてこの4月に大手アプリ開発会社に就職した。
この会社は、若手が抜擢されることで有名な会社で、俺はいきなりゲームアプリの運用を任されている。
ここで成果を出したい!と意気込んではいるのだが、、、、さっきの会議でも先輩社員に怒られて凹んでいる。
〜先程のアプリ定例MTGでのやりとり〜
先輩「タクミくんさぁ、売上が減っている理由を調べてって依頼した件、どうなった?」
タクミ「はい!調べてきました。下の図のように、主に30代男性のアイテムAの売上が減っていることが要因です!」
先輩「タクミくん、それは要因ではなく、事象でしょ。もう一度チャンスをあげるから、売上が減っている理由を調べてちょうだい」
・・・と、こんな感じで怒られたのだが、実は怒られた意味がさっぱりわかってない。
売上が減った理由を調べて?といわれたので、売上が減った理由を持っていった。
なのに怒られた。これ以上なにをすればいいんだろう。
スッコココ(メッセージアプリの通知音)
と悩んでいたところに、メッセージ通知が。同期のカオルからのダイレクトメッセージだ。
入社してからずっとリモート勤務ではあるが、同期同士の交流はそれなりに進んでいて、たまにこうやってメッセージのやり取りをする。
「アプリの運用はどう?こっちもビシバシ鍛えられているからお互い頑張ろう!」
といった軽い内容だった。
普段なら適当な絵文字で返信して業務に集中するのだが、先輩に怒られてすぐのタイミングということもあり、相談してみることにした。
タクミ:先輩に怒られた...
カオル:なんで?うちの会社あんまり理不尽に起こる先輩いなくない?
タクミ:アプリの売上が下がっている理由を出せって言われたから...。
カオル:ふむふむ。それでそれで?
タクミ:商品ごとや顧客ごとにデータを出して分析して、「ここが落ちてます」って言ったら、やり直しって言われた。
カオル:うーん、それはやり直しって言われても仕方ないかもねぇ。
タクミ:え?なんで?結構時間かけて分析したんだけど、これじゃだめなの?ちょっと詳しく教えてよ!
俺は先輩に怒られて途方にくれていたこともあり、カオルの意見を詳しく聞いてみることにした。
カオル:多分それは、先輩は事象の「分解」を期待していて、タクミがやったのが課題の「分割」だから噛み合わなかったんじゃない?
タクミ:え、どういうこと?もう少し詳しく知りたい。今度飯おごるから。
カオル:しゃーねーな。ちょっと長くなるけど、教えてやるよ。絶対に飯おごれよ。いつ対面できるかわからないけど、初対面で飯おごれよ。
カオル:まずな、大前提を確認するな。そもそも会社で扱うような仕事は、新人にとってはそもそも新しくて難しい問題が多い。これはわかるよな?
タクミ:それはわかる。入社式でも先輩社員が「大きな問題は小さく分けろ」って口酸っぱくいってたのは覚えている。
カオル:OK。まぁあの先輩にはまずビデオ会議アプリの使い方に慣れてほしいけどな、、って話が逸れた。そう、その「小さく分ける」には2通りの考え方があるって話をしたい。
タクミ:なるほど...!しっかり聞く。
カオル:例えば歯が痛いとするやろ?そのときに「どの歯のどの部分が痛むのか」って考えて鏡見たり舌で触ってみたりして、どこが要因なのか特定するやろ?んで、「あーここ虫歯か」みたいな。
タクミ:うんうん。
カオル:これが1つ目の「分割」な。要は、大きな問題を小さな問題に分けるイメージ。今回の場合はたくさんある歯からどれか一つを特定したやろ?そういう感覚。
タクミ:あー。足し算にわけるってこと?
カオル:飲み込みが早いな。そう、そんなイメージ。ただ、売上を客単価と人数にわけるみたいな掛け算も、自分の中では分割に含めてる。
カオル:その次に紹介するのは「分解」。さっき虫歯を発見したやろ?そのあとに「なんでここが虫歯なんだろう」って考えて、
・そもそもこの部分の歯磨きができていない
・この部分に食べかすが挟まりやすい噛み方をしている
とか考えるやろ?それが「分解」
タクミ:なるほど。なんか掛け算に分けるイメージなのかな?
カオル:そうやな。そんなかんじよ。
タクミ:ありがとう。なんとなくわかってきたわ。頭の中に図が浮かんできた...!!!
タクミ:で、どっち使えばいいん?
カオル:おちつけ。これはどっちかだけを使っていればいい良いというものではないのよ。もしそうだったら2つ紹介する意味もないしな。
タクミ:そりゃそうか。
カオル:さっきの話でいうと、虫歯の箇所を特定するという分割を行った後に、なんでだろう?って分解したよな。あれがもし、「歯が痛い!」で分解に走っていたらとすると、「痛みを感じるプロセスってなんだっけ?痛点?神経経路?」みたいなことになっちゃう。こう聞くと笑い話に聞こえるんだけどさ、これがビジネスの現場になるとやっちゃいがちなんだよなー。
タクミ:えー、歯痛の例を聞く限り、うまく使いこなせそうだけどな。
カオル:本当にそうか?例えば、売上が下がっているという事象に対して、いきなり要因をつかもうとして、「SNSでの本商品に関するツイートが減ってます!」みたいなドヤ顔をしてる先輩とかいるよね。逆に、いろんな軸で集計しまくって「30代男性のアイテムAの売上が下がってます!」みたいな分割をしただけでドヤ顔をしている人もいるよね。
タクミ:後半、俺やないかい。
カオル:さすがに気づくか(笑)。ごめん言い過ぎた。でも、この区別をはっきりつけておくことが非常に重要かなと思ってる。特に注意したいのが、「原因を知りたい」って言われたときには、ある程度の分割を行った後、その原因を分解することを期待されていると思ってる。
タクミ:そっかーたしかにな。先輩のリクエストもそういう意味だったのかー。
カオル:そう。分割せずにいきなり分解しても事象が大きすぎてシャープな分析にならないだろうし、逆に分割だけしても「いやそれは分析じゃなくて集計でしょ」ってなるかな。そういう意味では、タクミがやった分割は意味あったと思うよ。初手として。
タクミ:なるほど!!めっちゃ頭がクリアになった!またデータ出し直して先輩に見せる!今度出社日あればそのときに社食おごる!出社できる日がいつかわからんけど(笑)
カオル:おっけー!じゃぁまた!
カオルの話めっちゃわかりやすかったな。
さて、続けて「分解」にチャレンジしてみるか。
売上ってことは、「アイテムに需要があって、ほしいと思う人数によって決まるよな....」
〜数日後のアプリ定例MTG〜
先輩「タクミくん、売上減少の理由はわかった?」
タクミ「先週は中途半端な感じで申し訳なかったです。実は30代男性の40%が主力カードとして使っている『昭和のラストヒロイン』が原因だと考えています。私の見解の図を見せます」
先輩「なるほど、いい分解だね。信憑性も高そうだと思う」
タクミ「はい、昭和のラストヒロインをメインに使っているユーザーの課金額が明確に落ちていることも確認しています」
先輩「そしたらこの説できまりでいいかな。で、もちろん改善案もセットで持ってきてくれたよね?」
タクミ「・・・・」
ーーータクミが先輩から鍛えられる日々は続くのであったーーー
今回は、新入社員のタクミくんの物語としてお届けしてきましたが、「分割」と「分解」の違いはイメージいただけたでしょうか。
気づけてしまえば誰でも使える思考方法なので、必要に応じて業務に取り入れてくださいね。
ちなみに、私が所属しているミラティブでは「課題に向き合い続ける」という行動指針があります。課題を分割・分解し、どの課題に集中するべきかということを常に考えるという意味です。正面から「課題」と向き合って仕事をしてみたい、ミラティブに興味があるという方がいれば、ぜひ、会社ホームページ(採用ページも)をご覧ください。
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