「Canva」プロダクト責任者が語る、Product-Led Growth(PLG)戦略とデータ活用方法とは? 無料版から有料版への切り替えの成功事例なども公開。「PRODUCT LEADERS SALON」より書き起こし形式でお届けします!
目次
・Canvaのプロダクト開発体制
・Canvaのプロダクトに関する意思決定
・Canvaが重視するノーススターメトリック(全社指標
・Canvaのデータ活用
・Canvaの新製品オンボーディング
・Canvaのユーザーコミュニケーション
・CanvaのPLG戦略・有料コンバージョン
※2021年12月9日~10日に開催されたオンラインイベント「PRODUCT LEADERS SALON」より、デビィッド・バーソン氏のセッションをピックアップ。書き起こし形式にてお届けします。
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まずは自己紹介からお願いします。(※聞き手:Ken Wakamatsu氏 日本CPO協会 代表理事)
今日はありがとうございます。私はデビィッド・バーソンです。オーストラリアのシドニーに本拠地を置くCanva社で、Canva*の製品普及、収益化戦略の責任者を務めています。特に注力しているのが、サブスクリプション製品です。
*Canvaについて
「デザインの力を世界へ」をミッションとするビジュアルコミュニケーションプラットフォーム。190カ国以上に6,500万人を超えるアクティブユーザーがおり、プレゼンテーションからソーシャルメディアグラフィックス、インフォグラフィックス、ビデオWebサイトまであらゆるものをデザインしています。日本でもCanvaのユーザーが増え始めています。日本のコミュニティでは昨年だけでも170万以上のプレゼンテーション、210万点のロゴ170万本以上のビデオが作成された。
(Canvaには)「Canva Pro」「Canva for Enterprise」「Canva for Education」とあり、プロダクトマネージャー、グロースマネージャー、デザイナー、エンジニア、マーケター、リサーチャー、データアナリストなど、200人以上の組織を率いて、月間アクティブユーザー数約6,500万人のプロダクトの構築・改善を担っています。
Canvaにおけるプロダクト部門の構成を伺ってもよろしいでしょうか?
Canvaは複数のプロダクトチームで構成されています。各プロダクトチームは特定の「製品」「機能」「エクスペリエンス」を軸に編成され、それぞれにエンドツーエンド(以下、E2E)ミッションがあります。
例えば、(Canvaで作成できる)「プレゼンテーション」の場合、E2Eの素晴らしい「プレゼンテーション」エクスペリエンス提供に特化したチームがある、といった具合です。なお、エクスペリエンスの提供は多くの要素によって実現するものであり、スクワッドモデル*によって各要素に対応しています。
*スクワッド(Squad)について
スクワッド(Squad)は、質の高い最適な意思決定が素早くできる「最小単位でのチーム」のこと。複数のスクワッドの集合体をトライブ(Tribe)と呼ぶ。Spotifyが採用している開発組織のフレームワークとして注目された。(参照)https://medium.com/pm101/spotify-squad-framework-part-i-8f74bcfcd761
例えば、「プレゼンテーション」作成できる機能のなかで、インタラクティブなチャート作成ができるのですが、まさにプレゼンテーションにおけるカギ。なので、「チャート」に従事するチームがあり、そのなかに「チャートエクスペリエンス」に特化したスクワッドがあります。
この各スクワッドはPM 、プロダクトデザイナー、複数のフロントエンド、バックエンドエンジニアで構成され、目標を達成していきます。データアナリスト、プロダクトマーケター、リサーチャーは、チーム内の複数のスクワッドに携わることがよくあります。
デザイナーやPMも複数のスクワッドに参加することはありますか。
場合によってさまざまですね。PMの経験によるところが大きく、実績が豊富で能力が高いPMは複数のスクワッドを担当する。経験が浅いPMは大抵は一つのスクワッドに専念します。デザイナーも同様ですね。
プロダクトに関する意思決定はどのように行なわれますか?
どんな企業にも関心があることですよね(笑)Canvaはかなりミッションドリブンの企業なので、プロダクトに関しても同様です。弊社のミッションは「デザインの力を世界へ」ですので、意思決定でもコレを重視します。
同時に、毎年全社レベルで「特定のコア戦略」をいくつか設定していて。それによって「重点事項」「優先順位」「人員配置」「意思決定」の方向性が決まり、各プロダクトチームが会社とコミュニティにとって最も重要なロードマップを作成します。そのロードマップを基に、世界中にできるだけ多くのユーザーに最大の価値を提供できるようなプロダクトの構築を検討します。
このようにして2021年もいくつかの新製品を発表し、世界中の人々のクリエイティビティと、ビジュアルコミュニケーションの向上をサポートすることができました。
例えば、2021年にリリースしたプレゼンテーション製品によって、世界中のユーザーがCanvaらしい簡単な方法で美しいプレゼンテーションが作成できるようになりました。数か月前には、期待している動画制作用のプロダクトも発表し、簡単に動画が作成できるようになりました。
ちなみにまだ正式には公表していません(2021年12月9月時点)が、個人的に楽しみなのが、Webサイト製品です。2022年初頭にリリース予定で、Canvaのコア製品と同じフローでWebサイト構築、ドメイン購入、ネットへの公開が数分でできる製品となります。
プロダクトへのアプローチの基盤に、私たちの価値観があります。その一つが「難しいことをシンプルにする」です。これはとても重要なことです。
デザイン・クリエイション業界の複雑な流れを、シンプルでアクセスしやすい一つのプロダクトにまとめていく。例えば、「インスピレーション」「コンテンツ」「デザイン」「公開」「印刷」など。最近は「プレゼンテーション」「ビデオ」「Webサイト」もあります。プロダクトの作成において、作業を複雑化させるのは簡単です。ですが、最もシンプルな方法でパワフルなツールを構築する、これが私たちのモットーです。これは各プロダクトチームが日々取り組んでいる最重要課題でもあります。
「レベニュー部門」「カスタマーサクセス部門」「プロダクト部門」「エンジニアリング部門」の人が、一緒に作業する場合、各々の部門に優先順位や進め方があるかと思います。構築の方向性を決める際、その優先順位のバランスはどのようにとっていますか。
いい質問ですね。部門を超えてやっていきますが、当然、各担当者にも目標があります。毎年初めにその年のコア戦略を立て、主力製品を決めていく。2021年のはじめには「プレゼンテーション」製品を計画しました。そして1年を通し、全社的にこの大きな目標に向けて協力をしました。
プロダクト担当は、素晴らしいエクスペリエンスを提供し、みんなが満足する製品を作りました。マーケティング担当は、マーケティングキャンペーンアセットを構築しました。セールスの担当者は、新機能の製品を企業のお客様に紹介する準備などを進めました。このように常に「全社的な目標」を見据え、動きます。
総合的に見て会社にとって重要な目標を設定する。全社的な戦略として社員一丸となって目標達成に向けて尽力します。部門の枠を超え、各々のKPIにとらわれずにやっていく。常に全員が、その時、その時の目標の達成を目指しています。複数の目標を目指す場合は、各チームに割り当てられます。最終的には2つのノーススターメトリック*に集約されます。
*ノーススターメトリック/North Star Metricについて
ビジネスを正しく成長させる上で、全部署・メンバーが参照すべき全体指標のこと。北半球のどこから見ても常に真北を指し示す北極星(North Star)に由来する。(参照)https://www.dentsudigital.co.jp/topics/2019/1128-000342/
具体的には「毎月のアクティブユーザー数増加」と、「全体的なサブスクリプション収益の増加」です。両方のメトリックを同程度に重視しています。ただ、あまりに収益性を重視すると短期的な意思決定しかできず、長期的に見ると問題。ユーザー数の増加により、長期的な成功は決まると思います。
スクワッドにはデータサイエンティストが参加するとのお話でした。PLG*推進におけるデータの活用方法を教えてください。
*Product-Led Growth(PLG)について
プロダクトがプロダクトを売る状態「Product sells itself」を目指す戦略。セールスがプロダクトを売る状態「Sales sells product」を目指す「Sales-Led Growth(SLG)」と区別する上で用いられる。(参照)https://ubv.vc/contents/trends/plg-1/
そうですね。Canvaでは、大量のデータを多くの分野で利用しています。主要な利用方法としては「プロダクトの普及」「デザイン」「エンジニアリングリーダーシップ」に関する、重要なインサイトの抽出です。
ユーザーのために適切な意思決定を行なっているか。効果があった点、改善が必要な点を確認しています。かなり高度なデータスタックとダッシュボードスタックがあり、複数のツールでインサイトを抽出し、「各種ファネル」「ループ」「プロダクト」などモニターしています。
Canvaにはデザイン関連のコンテンツが多数ありますが、これをプロダクトに盛り込み、公開するために、プロダクトチームはどのような作業をしていますか?
社内に「コンテンツ&ディスカバリー」というチームがあり、この戦略を担当しています。作業自体は縦断的に行なわれますが、コンテンツはCanva全体を横断する構成要素です。なので、プロダクトリードはみんな、新しいエクスペリエンスを構築する際に、まずはコンテンツを考える必要があります。
例えば、「Webサイト製品」を構築する場合、「ユーザーがWebサイトを素早く構築するためのテンプレートとしてどのようなものを求めているのか」を考えます。
会社の成長と成功の大きな要因、人々がCanvaを使用する理由は、複雑さの排除で。それぞれのクリエイションに対し、優れたテンプレートを提供することで(複雑さの排除を)実現しています。
新しいプロダクトや機能を構築する際は「Webサイト」「プレゼンテーション」「ビデオ」どれであれ、コンテンツ&ディスカバリグループと協力しテンプレートとエレメント*の戦略を立てています。
*エレメントとは
デザイン内のコンポーネント、つまり「アイコン」「イラストレーション」「画像」などのこと。
新しいローンチに合わせ、テンプレート戦略や、エレメント戦略を立て、E2Eのエクスペリエンスが快適になるようにしています。
テンプレートでのデータ活用に関するビデオを拝見しました。SNS上で特定のテンプレートの人気が高い場合、Webサイトでも表示させ、人気の高いテンプレートが再利用できるようにしているようですね。その仕組みを教えてください
これもいい質問ですね。非常に重視しているのが、エクスペリエンスの関連性と個別化です。Canvaはコンテンツベースの製品であり、コンテンツ作成のために利用されています。その多くは季節性、地域性が高いもので、市場が特定される傾向があります。例えば、12月にハロウィーンを提案したり、2月にクリスマスのコンテンツを提案したくないわけです。ユーザーの民族性、地域性に関連したコンテンツ提案も必要です。こうしたことにデータを活用しています。いくつかのマシンラーニングモデルを「コンテンツの個別化」「レコメンデーション戦略」に活用し、ユーザーに関連性の高いエクスペリエンスを提供しています。
スタートアップの場合、データに費やす時間、リソースの確保が困難です。常に市場に合ったプロダクトを構築する必要があると思います。何を優先し、新たにプロダクトを構築するべきか。収益とデータのバランスはどのようにとっていますか。
ビジネスの段階によって答えは変わってくるかなと思います。起業したばかりのスタートアップの場合、市販のツールを多数使った、その場しのぎの状態になるでしょう。ただ、小規模なグロースチームをイチから編成するのに適したタイミングでもあります。
市場には優れたツールが多数あり、エンジニアリング、コミットメント、リソースが足りなくても、基本的な測定やツールの確保が可能です。SegmentやAmplitudeは簡単に瞬時に導入できますよね。
話を戻しますが、やはり測定できなければ正しく機能しているのか、わかりません。従って有料製品の提供を開始し、収益を上げ始めても、その後の改良の効果を測定できなければ問題です。
そのため、早期で「データへの投資」は不可欠ですし、非常に重要になるため、無視できない点です。あらゆるスタートアップが投資すべき基本的なインフラの一つです。これによって規模を拡大し、収益を増加できます。
ちなみに「Play with Canva」は新しい機能ですか?
はい、先週(2021年12月)から提供している新しい機能です。現在反響を見ているところです。プロダクトを実際に使って、把握をしていただいています。新製品のオンボーディングに、この手法をよく使います。プロダクトを知ってもらうためには、実際に使ってみるのが一番です。
PDFガイドやメールを送りつける「使い方のレクチャー」ではなく、インタラクティブなオンボーディングを行なう。ユーザーは事前に用意されたデザインを使って早速作業を始め、クリックして画面を進めながら、Canvaを把握してくれます。そうして、選んだデザインにおける制作の背景を知ることができるのです。そういったユーザーは「やり方を掴めたし、自分でもできる」と思えるでしょう。先週始まった機能を、もう使っていただけているようで、うれしいです(笑)
PLGの流れで考えると早期に価値を示し、問題点を解消することが重要です。そうすれば製品は自然に売れます。価値のあるものは、まず使ってもらいましょう。価値を見出したお客様は長期的に使ってくださるでしょう。2020年に、匿名編集エクスペリエンスの提供を始めました。Canvaのトップページですぐにデザインが行なえる機能です。
要するに、サインアップ無しでCanvaが使用できる。これまでの制限を取り除き、ユーザーのクリエイティビティの幅を広げた非常に価値のある製品です。サインアップの手間を無くすことで、すぐに価値を体験できるようにしています。Canvaの好感度を高めることにもなり、長期的なユーザーエンゲージメントやユーザーの定着にもつながります。
ユーザーとのコミュニケーション方法について教えてください。
主要なチャネルがいくつかあり、「質」と「量」の両面から多様なアプローチをします。また、フィードバックを得て、プロダクトの改善に役立てています。
まずはユーザーリサーチで主要なプロダクト戦略、分野に関する調査をリサーチャーが行ないます。
次に操作性テストで、構築の早期から頻繁に実際に使ってもらった上でテストをしていきます。
3つ目は、大規模なユーザーアンケート。数十万人のユーザーを対象に詳細なアンケートを行ない、ユーザーのセンチメント、インサイトを量的な方法で得ます。
4つ目はサポートフィードバックと機能リクエストですが、弊社は月間6,500万人以上のアクティブユーザーを抱えています。ここから非常に価値の高いインサイトを多数得ています。
5つ目は、解約に関するフィードバックです。有料製品をご利用のユーザーで何らかの理由で解約やダウングレードされる方からフィードバックを集めます。
「質」と「量」に関するデータについてのビデオを拝見しました。解約については当該のユーザーから具体的なフィードバックを得ているのですか。
はい。「満足しているユーザー」と「そうでないユーザー」の両方からバランスよくフィードバックを得ることが重要です。前述のチャネルを使えば、両方のバランスを取ることができます。
最終的には、ユーザーに最も喜ばれている点を把握し、そこに投資を続ける。そうすることで、さらなる強みを獲得できます。もちろん満足していないユーザーの場合、どこが不足しているのかを知ることは重要で、プロダクトが改善できます。
ちなみに、満足していないユーザーからのフィードバックの重要課題は「サポートフィードバック」と「フィードバックの共有」です。例えば、ユーザーがサブスクリプションの停止や、ダウングレードをする場合、任意でアンケートへの協力をお願いし、継続しない理由を聞くようにしています。解約に関して、セルフサービス製品の場合は「価格」が最大の理由として挙げられます。
しかし、価格を下げても、このようなユーザーはサブスクリプションをしないでしょう。セルフサービスモデルには、消極的なユーザーも多数いるのです。ただし、価格に関する不満を除けば、このデータは期待に沿ったエクスペリエンスであるか、知る上では貴重なインサイトになります。
プロダクトのオンボーディングが価値の発見に役立っているのか。期待通りの機能だったか。完全に欠けていた機能がなかったか。このような問いから有益なアイデアが生まれます。プロダクト改善やビジネス拡大のためのアイデアです。
プロダクトチームがユーザーグループやコミュニティからフィードバックを得ている例はありますか?
はい。Canvaコミュニティは非常に活気があり、熱心なユーザーもいます。そのためプロダクトチームは、特に熱心なユーザーからなるコミュニティを作り、プロダクトリリースプロセスの一環として活用しています。ご存じのように多くのプロダクトには、αまたはβリリースがあります。αレベルのリリースの一環としてこういったアーリーアダプターにリリースします。非常に熱心なユーザー、パワーユーザーの素晴らしいコミュニティです。期待に応えられているかが直にわかります。
期待が高く、製品に精通しているパワーユーザーは多いです。ただし全ユーザーを代表しているわけではないのでその点は注意が必要です。それでもプロダクトに関するフィードバックに関するフィードバックを得るのに非常に貴重な存在です。プロダクトをよく利用し、精通しているからです。
同時に、彼らはエバンジェリストでもあります。Canvaではユーザーはコミュニティにおけるコミュニティビルダーになります。多くのユーザーと1対多の関係にあり、多数のユーザーの独立した客観的な意見を得ることができます。これは長年プロダクトに関する有益なフィードバックを得るのに役立っています。プロダクトを扱う企業にぜひおすすめしたい方法です。フィードバックやユーザーテストの面で非常に有益です。
公開データを見ると、ユーザーの「Pro」と「Enterprise」への切り替えをうまく進めているようですね。プロダクトの利用を通し、切り替えに至った例をご紹介いただけませんか。
はい。まず、ずっと無料でご利用いただくユーザー層にとってもCanvaは非常に高い価値があります。フリーミアムモデルも提供していますが、無料であっても、作成する量に制限はありません。意図的にそうしています。私たちは世界中の人々が経済的な状況に関わらず、優れたクリエイティビティ製品を利用できるようにしたい、そう願っています。ユーザーにとって良いことは、ビジネスにとっても良いことです。これは無料のユーザー層にも通じます。過去数年間、口コミでビジネスが拡大しました。数百万人の無料ユーザーが巨大な支持層になり、ネットワークで情報共有してくれました。収益性を追求することもできましたが、無料ユーザー層の重視が、長期的なユーザー増加やブランドロイヤルティの強化につながりました。
無料ユーザーの「Pro」への切り替えについては「毎月13ドル」のサブスクリプションがユーザーのビジネス上、最も簡単な意思決定となるようなプロダクトを考えました。「Canva Pro」には豊富なメリットや機能を盛り込んであり、デザインプロセスでの生産性を挙げられます。よりパワフルなオプションも提供しており、このようなメリットや機能は製品使用中の状況に応じて、“関連性の高いタイミング”でユーザーに提示していく。そうすることで「Canva Pro」のメリットをよく理解していただけます。
例えば、Canvaで写真を編集しているユーザーの例を挙げましょう。編集中に「Canva Pro」の写真編集機能と30日間の無料トライアルを紹介し、数秒で「Canva Pro」製品が試せるようにします。ニーズがあるその場で、追加のメリットを活用できるようにする。そうすることで、無料から有料版へのPLGを生み出す、非常に強力な手段となっています。
PLG戦略において、開発チームとマーケティングチームはどのように連携しているのでしょうか。
PLG環境では、プロダクトグロースチームとマーケティングチームの密接な連携が必要です。PLG環境では、従来型の成長モデルよりもプロダクト自体の活用機会が増えます。そして利用可能なあらゆるチャネルを活用し、新たなプロジェクトや機能の発表を、効果的に行なうことも重要です。
例えば、有料製品の新機能を発表する際、フリーミアムモデルで無料版から有料版へのアップグレードパスを提供することでビジネス拡大につなげられます。ですが、これはその時点のアクティブユーザーにしか伝わりません。より多くの人に伝えない限り、ビジネスの拡大を早めることはできないのです。
そこで、新たなビジネス拡大、新製品発表に向けたGoToMarket(GTM)*活動において、マーケティングチームが重要な役割を担います。彼らはオフライン休止中、過去のユーザーを含む、既存の全ユーザー、そして非ユーザーにも新製品の発表を知らせていきます。さらに、新製品の社内発表時にも「社内教育とトレーニング」を行なう上で重要な役割を担います。
*GoToMarket(GTM)とは
プロダクトをユーザーに提供する仕組みを整えること。プライバシーポリシーや利用規約の準備、プロダクトの価格決定、マーケティングの施策検討などが挙げられる。
つまり、セールスチームやカスタマーサポートチームが、コミュニティやお客様に新機能をうまく紹介できるよう、マーケティングチームが事前に教えます。このように緊密に連携しています。
PLG戦略を取り入れようとしている企業に何かアドバイスがありますか?
実行に移すスピードがとても重要です。すぐに試行できるような環境を作り、スピーディに構築、測定、考察できるようにする。また、社内における学びのマインドセットも必要です。失敗を悪いことだと捉える企業がありますが、成長のためには失敗しても問題ない、そう考えるべきです。失敗から学ぶことは多い。何度も繰り返すことで深い洞察力が得られます。長期間続けることで大きな成功やチャンスも生まれます。
データも重要で成長に不可欠です。試行した結果を測定し、努力の成果が測れることを知ってください。また、基本的なデータツールやインフラには早い段階から投資しましょう。そうすることで作業の影響が測定できます。もちろん製品はPLG戦略の重要な構成要素なので、これは当然のことです。
テクノロジーは当たり前のものになりつつあり、あらゆる分野で競争が激化しています。一般的にはユーザーに大きな価値を提供し、「払っている額に見合うメリットを得ている」と感じさせられる企業が成功します。製品の無料版を提供するのもよいでしょう。有料製品の無料トライアルでもよいでしょう。競争の激しい環境で、ユーザーを呼び込み、コミットメント無しで製品を試してもらう。そうすることで、最終的にはブランドロイヤリティの確立につながり、自分自身も喜びや、やりがいを感じられるはずです。
毎週、新しいアイデアやビジネスモデルを試し、学び、何が機能し、何が機能しないのかを知る。この作業は、とても楽しいものです。
(おわり)
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編集 = 白石勝也
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