2017年3月29日〜30日開催『SLUSH TOKYO 2017』。現地会場よりインタビューをお届け。音楽投稿アプリnanaを運営する、株式会社nana music代表の文原明臣さんに伺えたのは海外ユーザーの獲得につながった背景、そして「自身が納得できるまでやり抜くこと」の大切さだった。
2015年8月にCAREER HACKで取材させていただいた株式会社nana musicの文原明臣さん。取材当時は100万ダウンロードだった『nana』だが、この1年半でダウンロード数は300万を突破。
▼過去の取材記事はコチラ
「お金が全てなくなっても、ユーザーが支えてくれた」nanaのユーザーコミュニケーション術
https://careerhack.en-japan.com/report/detail/564
2017年1月にはDMM.comの子会社となり、話題になった。
編集部は、SLUSH TOKYO 2017のスピーカーとして登壇された文原さんにインタビューを敢行。その内容をお伝えしていく。
まず気になったのが、この1年半で倍以上になったダウンロード数。その要因について文原さんはこう語る。
「特別なことをしているわけではないんですよね。まずひとつ目はニコニコ動画やMixChannelをはじめとする有名な方々、いわゆるインフルエンサーの方に見つけてもらって、継続的に活用をしてもらえたのは大きかったと思います。もうひとつは、とにかく地道にASO (アプリストア最適化)を続けてきたこと。特に2014年にAndroid版をリリースし、そこからずっと文言やスクリーンショットを変えるなどかなり細かく続けてきました。その積み重ねによって海外でも使われるようになり、現在は日本を超えて、新規ユーザー数の増加が加速しています」
続けて伺えたのが、『nana』における中長期的な目標について。
「私たちが目指しているのは、100カ国×100万ユーザー、1億人に使ってもらえるサービスにすることです。単に1億人に使ってもらうだけではダメで、人種、国境、言語、すべてを越えて当たり前に音楽が生まれる仕組み、そのものをつくりたいと考えています。まだ道半ばですが、数字だけでいえば、2020年までには2000万~3000万というユーザー数にしていきたいですし、100万ユーザーが使ってくれる国を30カ国ぐらいまでに持っていきたいですね」
続いて伺えたのが、人生の壁にぶつかったときの心構え、スタンスについて。どのようなマインドで文原さんはこれまで仕事と向き合ってきたのだろう。
「あたりまえの話ですが、全ての努力が報われるとは限らないですよね。ただ、やりきったら最終的には「自分自身が納得できること」に行き着くと思っています。
私は一度モータースポーツで大きな挫折し、その道を諦めた経験があります。その当時は挫折感で空っぽになってしまって、何もやる気がおきませんでした。悔しかったし、2度と同じような挫折は経験したくない。負けたくないと思いました。そういった意味だとヘンにプライドが高かったのかもしれません(笑)
だから、私は『nana』をはじめるとき、お金がなくなっても、ユーザーが増えなくても、「結果が出るまで、とにかく動きつづける」と決め、実践してきました。続けさえすれば何かに結びつくはず。そこに疑いはありませんでした」
自分の努力次第でやれることは、どのような状況に置かれてもやり続けていく。文原さんの言葉から感じたのは「やり抜く」という並々ならぬ覚悟だった。
最後にご紹介するのは、「人生をかけて取り組みたいテーマ」をどのようにして見つけるか。「過去の挫折も無駄ではなかった」とふり返る。
「市場がこう変化する、技術トレンドはこれ…そういった“知識”は必要ですが、その知識だけでモノをつくっても絶対に成功しないと思います。なぜなら、自分の実感値がないから。自分で腑に落ちていないことは、信じてやり抜くことができません。過去に築いてきたこと、モヤッとしたこと、イラッとしたこと…すべて自分のなかにあるものが大事。人生において何に真剣に取り組みたいか、そのエッセンスは必ず自分のなかにあるはずなんですよね。人は人、自分は自分なので、そういうことがみつかったら、あとはやり抜くだけですね」
そして、文原さんは「よく過去をふり返る」のだそうだ。
「ふとした時、よく過去をふり返ることがあって。頭の中の旅に出るというか(笑)。モータースポーツで挫折した過去も、その当時は空っぽな状態でしたが、今では、やり切ったその先にある“納得できる結果”こそが何より大切なのだと学ぶことができました」
たとえば、「市場動向」や「トレンド」は誰でもカンタンに本やWebで知れる。ただ、それを自身の人生に反映させ、現実を動かすことはむずかしい。文原さんの言葉に考えさせられたのは、失敗も、挫折も、自分で実感し、経験することの価値について。どれだけ過去を、いまの自身に活かせているか。こう問い続けることが大切なのかもしれない。
文 = CAREER HACK
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