匿名チャットアプリ『NYAGO(ニャゴ)』が巷を賑わせている。送り手は登録無し&匿名でメッセージが送れて、毎朝6時にチャットが削除される。リリース1日で3000ユーザー、3万PV獲得。バイラル(広め方)も戦略的だった。
送る側だけ”とくめい”チャット「NYAGO(ニャゴ)」。リリースわずか1日で3万PV、3000ユーザー獲得。さらにインフルエンサーマーケティングにより、5日間で総フォロワー約45万人にリーチ。見事バイラルさせた。そこには緻密な計算が。5日間で仕掛けた施策を明かしてくれた。
『NYAGO』を開発した株式会社UNDEFINEDの、CEOの若月佑樹さん(19)、COOの渡邉健嗣さん(20)マネージャーの金井一馬さん(23)にお話を伺った。
DAY1(3/28) ネットの有名人に拾ってもらう
まずはネット界隈の著名人にシェアしてもらおうと考えました。なぜなら、普段お世話になっている方々や同じようにプロダクトをつくっている界隈の先輩たちに存在を知ってほしかったから。イメージしたのは、けんすうさんや家入さんなどTwitterでよく発信をしている方々です。
どうすれば拾ってもらえるか。「界隈で話題になっている感」を嗅ぎ取ってもらえるよう、種まきをしました。例えば、普段からお世話になっている投資家の方、Hive Shibuyaというスタートアップのコミュニティスペースにいる仲間たちに「リリースするので、応援してください」と声かけるなど地道に行ないました。
[使われ方]ネットの有名人
連絡できなかった人に連絡できるようになる、ご飯行ける人募集、自分に対しての情報収集されたい方(ブログの最後に『NYAGO』のリンクつけるなど)、採用担当者なども多かった。
DAY2(3/29) 1日目の結果を分析
2日目は、あえて新しい施策は行ないませんでした。1日目に使った人のリテンションと、自然な数値の伸び方を見たいと考えました。「ニャゴした人リスト(*)」「チャットが消える」など仕様に関する反応をウォッチしていきました。
(*) ニャゴする…匿名でメッセージを送ること
[使われ方]一般のTwitterユーザー
Twitterでチャットを募集している人を探し、暇な時に話す。友達ができたりもする。共通の趣味を持った人とお話。暇な移動時間、夜家の時間、昼休みに募集する人多い。
DAY3(3/30) インフルエンサー&YouTuber活用
10代で流行りはじめている印象をつけるために、「雑誌モデルやYouTuberなど(フォロワー約20000~35000人)」にPRをお願いしました。例えば「マミコ部」さんです。大事だったのはスピード感。リリース3日目で「もう取り上げられているんだ」って思ってもらいたかったんです。あとは高校生がよくスマホを利用している「金曜の夜」というタイミングも肝でした。
インフルエンサーマーケティングを活用する目的は「循環」の導線を作ることでした。
▼インフルエンサーがチャット相手を募集する
▼みんながニャゴしたくてダウンロード
▼ニャゴする
▼ニャゴしつつ、自分でも募集する
[使われ方]インフルエンサー&YouTuber
ファンの人とチャットできるという使い方、憧れの人とチャットできるという使い方。
インフルエンサーは知人に紹介をしてもらい、有料PRとして依頼。使い方を紹介してもらうのと同時に、エンタメとしてのおもしろさ、「流行ってる感」を演出。
DAY4(3/31) 女子大生たちに広めてもらう
3日目と同様に「10代の間で流行ってる感」を演出しました。目的は「最近よくみるよね」という印象を持ってもらうこと。インフルエンサーに加えて、「かわいい女子大生(フォロワー約800~1300人)」にシェアしてもらえるよう、友人や知人に紹介してもらった方々に声かけをしました。フォロワー数の合計でいうと約20万人分くらいです。
[使われ方]女子大生たち
中学時代の好きだった子にチャットできる、友達に彼氏がいるのかとくめいできける、久しぶりに会う約束ができる、近況を聞ける、仲良い友達にだる絡みする、彼氏・彼女に探りを入れるなど。
DAY5(4/1) インフルエンサー活用(インスタ)
最終日となる5日目は、インスタでのバズを狙いました。「ストーリーでよく見る」という状態をつくること、「インスタで使えるんだ」を知ってもらうことを目的としていました。
もうひとつインスタ上ではユーザーヒアリングを実施。ニャゴ数、内容、チャット継続時間、導線部分のストレスや不明点、一番楽しかったポイント、次に使うならいつかなどヒアリング。見直す部分と優先順位、施策についての参考データを収集しました。
[使われ方]インフルエンサー活用(インスタ)
PRとしての効果はあったが、活発な利用にはつながらなかった。インスタのストーリーからアプリをDLさせるのはハードルが高いと判明、検証ができた。
インフルエンサーを起用したことによって、多くの人に認知された『NYAGO』。ただ、利用継続されたり、使ってみた感想が自然とシェアされたりしてるのは、『NYAGO』が持つサービスのユニークさ、ポテンシャルとも考えられる。
特にTwitterで話題となっていたのが、「相手が人気者過ぎて送れない」「自分が人気者過ぎて受け取れない」といった機能。
わお、、、 pic.twitter.com/WbLtk5ONzs
— けんすう (@kensuu) 2018年3月28日
COOでPMの渡邉健嗣さんはこう解説してくれた。
「ユーザーに熱を消費させすぎないような狙いで設計しました。無駄にニャゴが増えてチャットを返す気が起きなくなる、チャットが返ってこないからニャゴしなくなる…という流れが嫌だった。チャットを楽しむアプリなのに、一方通行が増えるぎると『質問箱』と同じになってしまいますし…。
まずは少ないチャット数で確実に仮説検証してみたかったんです。あとから制限を解放することはいつでもできる。なので初期の段階では少なめに設定しました」
また、Twitterの公式アカウントの運用へのこだわりについてこう語る。
「Twitterの公式アカウントの運用は、プロダクトと同じくらい大事だと思っています。とにかく『NYAGO』を覚えてもらいたくて。「生きているアカウント」を目指して、こだわっていますね。どんなユーザーがどのように使っていて、どんなことが起きているのかを把握することにもつながります」
もうひとつ、バイラル加速について、CEOでデザイナーである若月佑樹さんは「ポップなデザイン」もうまく作用したと分析する。
「『NYAGO』をたくさんの方に使って頂けた理由の1つとして挙げられるのは、ポップな、”匿名”を感じさせないデザインだと思っています。従来のプラットフォームでは、匿名でくるメッセージに対して、恐怖心のようなものがありました。その恐怖心をいかにデザインの力で取り除くことができるか。追求した時に思いついたのが、このポップなUIでした」
そしてPR用の動画制作などクリエイティブを担当したのはマネージャーの金井一馬さん。特に10代にウケる動画を狙ってつくった。ポイントは短さと繰り返し。
「今回、プロモーション動画も事前に制作しました。意識したのはいかに短い動画にするかということ。10代に流行しているGIF動画を参考に、短い秒数で動画をループ再生させるように工夫しました」
取材の最後には、チーム最年少、19歳のCEO 若月佑樹さんが、この数日間で起きたバイラルについて語ってくれた。
「新しい概念のサービスなので、どのユーザー層をメインターゲットにしていくべきか、自分たちでもわからなかったので、それぞれに広まっていく施策を打ちました。それが予想を上回るユーザー数とPVとなり、すごく刺激的で。また『NYAGO』は自由度の高さこそがポイント。自分たちで想定もしていなかった使われ方をされて、めちゃくちゃおもしろかったです」
同時に若月さんは「課題も山積み」と語る。例えば、Android対応、ダウンロードの障壁の高さ、コンセプトを充分に伝えられていない、導線が煩雑…など今回の取り組みで見えてきたそうだ。今後のさらなるアップデートが期待される。
「NYAGO」を開発したのは株式会社UNDEFINED。左から金井一馬さん(23)、若月佑樹さん(19)、渡邉健嗣さん(20)と若いチーム。以前まで飲食系のCGMサービスからピボット。2017年10月から「NYAGO」を企画。ニーズ検証を経て、2018年1月から開発、3月29日にリリースした。
文 = 大塚康平
4月から新社会人となるみなさんに、仕事にとって大切なこと、役立つ体験談などをお届けします。どんなに活躍している人もはじめはみんな新人。新たなスタートラインに立つ時、壁にぶつかったとき、ぜひこれらの記事を参考にしてみてください!
経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。
Notionナシでは生きられない!そんなNotionを愛する人々、チームのケースをお届け。