2018.09.12
『タイミー』が見据える信用経済学生のスキルを「格付けスコア」で見える化する!

『タイミー』が見据える信用経済学生のスキルを「格付けスコア」で見える化する!

小川嶺さん(21)が手がける『タイミー』。学生のバイトスキル・経験を「格付けスコア」にし、面接・履歴書ナシで即日バイトができると話題だ。着想は彼の原体験。「心から自分がほしいと思えるものをつくった」と語ってくれたーー。

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タイミーはどんなユーザーが利用しているのか?ユーザー動向について伺った記事はこちら!
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ユーザーヒアリングでの失敗体験

『タイミー』の開発において、ユーザーヒアリングや検証をあえて行わなかった。検証を過信しない。それは、前サービスの企画経験から学んだ教訓でもあった。


ユーザーヒアリングから得られる結果はあまり役に立たないこともあると思います。

それよりも自分の感性とか自分の体験を信じたほうが良い。プロダクトについて一番理解しているは自分なんです。自分が感じた課題やそれを解決するアイデアは、同じことを考えている人が一定数いるはず。だったらプロダクトの利用体験を研ぎ澄まして、どこにも負けないものにしていけばいい。

また、検証に答えを求めすぎて、いつまでもプロダクトが完成しないことのほうが問題。じつは、ファッションサービスをつくっていたときに、検証で失敗したんです。

当時、仮説検証を徹底的にやっていた。原宿のアパレル店舗を全部回ってお客さんの行動を見てみたり。店から出てきたお客さんにヒアリングしたり。

めちゃくちゃ時間をかけました。気づいたら仮説検証だけで3ヶ月くらい経っていました。でもヒットするプロダクトはつくれなかった。答えなんてなかったんです。

ユーザーヒアリング大事だとは思います。だけど、だれでも簡単にできるものではない。手法が確立していないまま雰囲気で仮説検証するのは時間がもったいない。僕にはそれができるだけのスキルも経験もない。自ら体験したことを頼りに、はやくモノを完成させて世に出したいと思いました。

「ユーザーが熱狂的に求めるものをつくれ」

『タイミー』は学生のスキル・評価を「格付けスコア」にし面接・履歴書ナシで働けることも新しい。ただ、企業・店舗が「スポットでバイトを雇う」ことではじめて成り立つビジネス。実現のハードルが高そうだが…。


以前、VASILY(現:スタートトゥデイテクノロジーズ)の金山さんにアドバイスいただいことがあって。「ユーザー体験の最大化に尽きるよ」と言われました。

クライアントが動いてくれない、オペレーションが回らない…、できない理由はそれじゃない。

すごくシンプルで、ユーザーが欲しいものを作った者が勝つ。まずユーザーが熱狂的に求めるものをつくり、ユーザーが100万人集まれば、クライアントは絶対ついてくる。むちゃくちゃですけど、信じようと思ったんです。

自分は派遣もバイトもたくさんやってきたし、メインターゲットの大学生でもある。自分が一番のユーザーです。「自分が熱狂的に欲しいかどうか」を基準にとにかくつくろうとしました。

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プロダクト開発は最高にエキサイティング

『タイミー』の原点は“つまらないスキマ時間を埋めたい”だ。


前に立ち上げたファッションサービスをクローズしたとき、チームは解散して、また大学に通いはじめました。ただ、インプットはするけど、なにも生み出さない時間を過ごしていて…「生きている価値があるのか?」と考えるくらい、物足りなさを感じていたんです。

やっぱり自分はプロダクトを作りたいんだと強く思いました。

大学生活って意外と空き時間が多い。スマホを触っている時間も長い。そこで考えたんですよね。

アプリに暇な時間を入力すると、その時間にできることを教えてくれるようなアプリがあれば面白いんじゃないか?と。これが『タイミー』の原点です。

その中でも「働く」に絞ったのは、バイトや派遣をたくさんしてくるなかで、派遣登録や採用面接、履歴書、シフト提出など、イケてない仕組みだとずっとモヤモヤしていたから。仕組みから変えられるチャンスだと思って企画しました。

すでにあるサービスの穴を突く

小川さん自身の「欲しい」からはじまった『タイミー』。まずは、既存のサービスについて調査。既存事業の「負」を解消すれば、イケるチャンスがあると考えた。


すでにあるサービスを調べてみると、とある短期・単発のアルバイト求人サービスを見つけました。

10年以上前からあって。ただ、PCファーストのままでスマホでは扱いづらい。スマホに最適化して大学生をターゲットにすればイケるんじゃないかと思いました。

ユーザー体験はどうなっているのか、実際にコンビニのバイトに応募してみて。ところが、なかなか返信がこない。13時に応募して返事きたのが17時でした。18時開始の仕事だったのですが、そんな直前に言われても困ります。

そもそも、1時間以上も返事がなかったら、他の予定入れちゃいますよね。働きたいモチベーションが高いときにオファーが来ないと成り立たない。「働きたい!」とボタンを押したら絶対働けるアプリにしなくちゃいけないと強く思いました。

マネしたのは「Uber Eats」のワクワク感

裏話として『タイミー』はリリース直前にUIを大きく変更しているそうだ。欠けていたのは「ワクワク感」だった。


もともとのUIでいうと、求人サイトによくある「リスト型」でした。リリースの1ヶ月前までは、案件一覧がバーッと見れるようにしていたんです。

ところがある日、「このアプリつまんない」とメンバーの一人が言い出して。「今つくっているリスト型UIは、既存と変わらないから、ワクワクしない」って言うんです(笑)1ヶ月前だぞ!って思いつつ、僕自身も「ワクワク」が足りないと感じていた。

そのときに参考にしたのが『Uber Eats』で。届けてほしい場所にピンを立てて、そのピン目掛けて配達員が運びにきてくれる。すごくわかりやすいし、イケてますよね。

働きたい場所でピンを立てて、ピンの近くの案件がポンポン出てくる。「つくりたい世界観はこれだ!」と明確になりました。

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ボツになった「リスト型UI」。ユーザーが入力した働ける時間一覧(左)と、その条件(働ける時間)にマッチした仕事一覧(右)。現在の直感的に操作できる世界観とは異なる。

ただの「単発バイトアプリ」で終わらない

最後に伺えたのが『タイミー』の構想について。


一見、タイミーって「単発バイトアプリ」だと思われるでしょう。自分も構想段階では単発バイトアプリと思ってつくっていました。でも実は違った。もっと可能性を秘めているサービスだと僕自身が気づかされていきました。

資金調達のプレゼンのためにいろんなVCの方にお会いし、アピールポイントを必死に考えました。その時に大きな気付きだったのが、タイミーのビジネスモデルはアルバイト市場以外にも展開できる、ということ。

信用経済やフィンテックの文脈で事業を広げていける可能性がある。例えば、『Uber』や『Airbnb』は、レビューが機能する仕組みをつくり、総合評価がうまくワークしています。そういうサービスを目指したい。

『タイミー』の大きな特徴は、面接・履歴書ナシで働けるというもの。これは、ユーザーの信頼度をアプリ内の評価・スコア化し、企業側が判断する仕組みです。「信用」はこれからの社会においてすごく重要な意味をもってくる。その中でも存在感のあるプレイヤーとして、尖ったビジネスで勝負していきたいです。


タイミーはどんなユーザーが利用しているのか?ユーザー動向について伺った記事はこちら!
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文 = 大塚康平


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