2019.01.16
「泥臭くてめんどうな仕事は私がやる」30歳の新人VCが、もがきながら見つけた突破口

「泥臭くてめんどうな仕事は私がやる」30歳の新人VCが、もがきながら見つけた突破口

根岸奈津美さんはベンチャーキャピタリスト(VC)の中でも異端といっていい。投資先のスタートアップ『ラブグラフ』にフル出向し、自らメンバーに加わって支援した。投資先の成長に当事者として関わっていく。絶対に逃げない。諦めたくない。そこには彼女の当事者スタンスがあったー。

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30歳で出会った、心から「やってみたい」と思える仕事

「潰しがきくだろうと思って、ずっと大企業で働いてきたんですよね」

大和証券、アシックス、野村證券など、名だたる企業でアナリスト・IRとしてのキャリアを築いてきた根岸さん(32)。転機は30歳を目前とした頃だ。

「ただ…どこか世の中に貢献している実感がないというか。会社の歯車のひとつでしかない。自分が何をやりたいのか、よくわかっていませんでした」

そして、選択肢のひとつとして考えたのが、VCへの転向。直接企業を支援していく立場で働いてみたい。はじめてのVCという世界。転職先となったのは、グリーベンチャーズだった。

多くの壁にぶつかり、もがきつつも、前へ。VC経験のなかった彼女は、いかに信頼を得ていったのか。現在進行形で成長を模索する、等身大のストーリーをお届けしたい。

「このままだとクビになる」

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2016年、30歳になった頃にグリーベンチャーズに転職したのですが…正直、1年目はかなり苦労しました。

まずなかなか投資先を見つけることができなくて。とにかく「事業をつくる」という知識や経験が圧倒的に足りておらず、起業家さんへのアドバイスができない。信頼ゼロからスタートでした。

ただただ上司の投資先にミーティングの同席だけさせてもらう。何も喋ることができないし、何も求められていないんですよね。一番つらかったのは、ある社長に「何でもいいので手伝わせてください」と言ったら、「申し訳ないけど、あなたの助けは求めていない」とバッサリ断られたこと。

やる気ではなく、プロとしてどんなバリューが発揮できるかが期待されている。私には提供できるものが何もありませんでした。やっと会えた私より若い起業家さんからは「この人に説明しても意味あるのか?」「めんどくさいな」というような態度で応対されたこともあって…(笑)

「30歳にもなって、私は何をやっているんだろう」と悲しい気持ちも、正直ありました。やる気満々で転職したのに「このままだと何の価値も出せずにクビになるかもしれない」という焦りはすごく感じていました。

自ら学ぶ、外に出る。

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ただ、何もせず、じっとしていても前進はない。とにかくインプットを増やすことを意識して、行動するようにしていきました。

事業戦略やファイナンスは得意分野だったのですが、それだけでは通用しない。ITの知識や、プロダクトがつくられるまでのプロセス、HPや広報…全方位的に学んでいこう、と。

たとえば、オンラインのプログラミングスクールを受講したり、HRやPRのプロを紹介してもらって勉強会を開催したり。

「社長に貢献できないなら、せめて社長以外の方に貢献しよう」と、自分から外に出ていって、スタートアップやベンチャーなどのネットワークを広げていきました。

すると、入社して2年目になると、ようやく少しずつ投資先が開拓できるようになっていきました。

まず共通言語で話せるようになったのが大きかったですし、自身がハブになり、それぞれの領域のプロを紹介できるようになっていきました。

「私が出向すれば絶対伸びる」ラブグラフとの出会い

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そのような中で出会った投資先の一社が『ラブグラフ』でした。

はじめは週2日ほど顔を出し、バリューアップをサポートしていて。ただ、事業の構造はもちろん、みなさんの思いに触れるなかで「私が出向して仕組み化すれば絶対に伸びる」と考えるようになりました。

『ラブグラフ』のメンバーはみなさん若かったですし、必ずしも経験が豊富にあるわけではない。私にできることがあると思って『ラブグラフ』の駒下代表にお願いし、グリーベンチャーズでも異例ですが、フル出向させてもらえることになりました。

はじめに取り組んだのは、けっこう泥臭い仕事で(笑)顧客属性のカテゴリ分けなのですが、データベースの情報が不十分だったので、1枚1枚写真をチェックし、顧客の属性を割り振っていくというもの。

『ラブグラフ』は元々、カップルの撮影をするサービスを提供していました。なので、顧客のカテゴリ分けをほとんど行なっていなかった。ところが、私が出向し始めた頃はウェディングや家族撮影のニーズも徐々に増えてきたタイミング。新しいプランを提供していくためにも顧客属性を区分けするタスクは必須でした。

はじめはSQLも叩けなかったので、Excelにデータをダウンロードし、VLOOKUPでデータベースをつくり、分析する(笑)でも、これじゃダメだなってSQL講座を受講して習得をしていきました。

投資先企業のことを一緒に考えられる投資家でありたい

もうひとつ、『ラブグラフ』では私自身もメンバーとの1on1を実施して、サポートを行ないました。

スタートアップは慢性的に人が足りなくて、現場マネジメントが滞りがち。だからといって、社長が現場のすみずみまでおりていってしまうと事業が滞ってしまうし、経営メンバーもプレイングマネージャーなので、現場のフォローやケアが不十分になりがちです。メンバーがアドバイスを求めていたり、つまづいている状態をキャッチアップしづらくなってしまう。

私も、経営メンバーと一緒に現場のメンバーのことをサポートできるような体制を整えました。

私が思っていたのは、戦略を話したり、数字をモニタリングするだけではなく、会社全体のことを一緒に寄り添える投資家でありたい、ということなんですよね。なので、すごく大事なんだけど手間がかかったり、大変だったりする仕事は可能な限りサポートしたい、という姿勢で取り組んでいました。

自分で、自分の人生を応援してあげよう。

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私はベンチャーキャピタリストになるまでずっと「この選択肢は、潰しがきくかな?」という打算的な発想で選んできたんですよね。大学も、仕事も。だから、自分の「好きなこと」に向き合ってこなかったんです。

「この仕事は私じゃなくてもいい」「誰の役に立っているのだろう」と疑問を持つことも少なくありませんでした。

色々な仕事をする中で、新しい事業を生み出す手伝いがしたい。もっと”手触り感”がほしかった。私は人が好きだし、もっとコミュニケーションが重要になる仕事がしたい、そう気づきました。だから、グリーベンチャーズに転職したんです。

30歳のタイミングで新しいことに挑戦する。もしかしたら遅いと思われるかもしれませんが、私はそんなことはないと思っていて。自分がやりたいことに気づいたタイミングで挑戦すればいい。遅いかどうかなんて自分が決めればいいだけ。

とくにベンチャーキャピタリストになって1年目はもがきにもがきました。今だから思うのは、自分が経験してみないと向き、不向きなんてわからない。

ようやくですが、私が仕事をしていて一番テンションが上がるのは、「社長やメンバーと成功や苦労を分かち合いながら、事業の型を完成させていくフェーズに関われたとき」ということを実感するようになりました。だから全力でコミットしてサポートするというのが自分に合っているスタイルなんだと思います。

自分の好みやスタイルを模索するところからスタートするのは、苦しい日々も多かったですが、逃げていても始まらない。結局、誰が何を言おうと、自分の人生の一番の応援者は自分。自信がないときも、正解が見つからないときも、自分で、自分の人生を応援してあげたいです。

(おわり)


文 = 田尻亨太
編集 = CAREER HACK


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