2019.02.05
挑戦だけは止めなかった。異国の地で貫き続けた、楽天トラベル 吉田茜の信念

挑戦だけは止めなかった。異国の地で貫き続けた、楽天トラベル 吉田茜の信念

楽天トラベル 最年少役員の吉田茜さん (30)を取材。中国やハワイなど海外で宿泊施設との交渉やコンサルティングをメインで行なってきた彼女。異国の地で、話が通じない、相手にされない…など「壁」の連続を経験。そんな彼女を支えてきたのは「続けてさえいれば何とかなる」というシンプルな仕事哲学でした。

0 0 4 20

「本当はずっと自分には無理だと思っていた」

楽天トラベルの最年少役員に。

この事実だけを聞くと、吉田茜さん(30)は手の届かない存在のよう。タフでかっこよくて、気丈で、強い女性なのでは…?と勝手に想像をしていました。

ただ、実際に彼女に話を聞いてみると「自信のない日々の連続」だったといいます。


「海外でずっと楽天トラベルにホテルを掲載してもらうための交渉をしていたのですが、何度も門前払いされたり、お話を聞いていただけないこともありました。私にはこの仕事はできない…と何度も思いました」


それでも、決して逃げることのなかった吉田さん。

ひたすらに、がむしゃらに。とにかく全力で続ける。絶対にやめない。

そこには、シンプルでありながら力強い、彼女の信念がありました。

吉田茜さんの写真

【プロフィール】吉田茜(よしだあかね) Rakuten Travel Hawaii, LLC General Manager
1987年東京都で生まれ、シンガポールやアメリカで幼少期を過ごす。大学卒業後、楽天株式会社に入社。入社2年目に配属された楽天トラベル国際営業部で業績を大きく伸ばし、2012年に本人の希望でハワイに赴任。2016年からはハワイ・ミクロネシア営業グループのマネージャーに就任、2017年のRakuten Travel Hawaii, LLC設立に尽力した。

やる気を失ってしまった新人時代

「いつか海外で挑戦したい」

この思いを胸に、楽天に新卒入社した吉田さん。入社1年目は、楽天の人事として新卒採用に奔走する。やりがいを見出し、いつでも全力投球。体当たりで仕事をしていたが…。


採用活動が無事に終わった2月頃、体調を崩しました。仕事は楽しかったし、やりがいもありました。ただ、無理をしていたところもあったのかもしれません。精神的にも体力的にも自分を追い込みすぎていたと思います。しばらくの間、有給休暇をとりました。

その間、食欲もなくなり、友だちと会うのも億劫になってしまいました。寝ても覚めても何をする気も起きない。「ああ、もうこのまま仕事ができないかもしれない」と、完全にやる気を失っていました。

吉田茜さんの写真

やってみてダメならまた考えよう

このまま休んでいても変わらない。退職しようーーそう心に決め、人事担当と面談をした吉田さん。そこで思いもよらない提案が。


「楽天トラベルの海外進出に挑戦してみないか」と声をかけていただきました。

もう辞めるしか道はないと思っていたので、正直驚きました。他にいきたい会社も、やりたい仕事も見つからず、自分が働ける場所はどこにもないと思っていたので。

お声がけいただけたことが嬉しかったです。

いままで人事として社内や学生さんと向き合ってきたけれど、お客様やクライアント様と向き合いながら、自分がどこまでできるのか試してみたい気持ちもありました。


吉田さんはその時、「心の底からやってみたい」と感じたそう。


もちろん、復帰できるのか不安もありました。でも、まずやってみてダメだならまた考えようと。再スタートする気持ちで、海外支店を担当する国際営業部に異動しました。

吉田茜さんの写真

門前払いの日々。でも諦めたくなかった

“一つの国を担当し、数字という見える形で実績を出して、クライアント様と相互に成長できる関係を構築することに挑戦してみたい”

そう希望した入社2年目の彼女が最初に担当した国が中国だった。


主な仕事内容は、ウェブサイトに掲載する宿泊プランを各ホテルに提案すること。ホテルをご訪問してお話をしても、楽天の認知度が低く話が通じないことは何度もありました。

「名前も聞いたことがない会社とは契約できない」と言われ、とぼとぼ帰ったこともあります。「上司を連れてきて」という反応も少なくありませんでした。


どのようにそういった壁を突破していったのか。


現地で直接ホテルに交渉をしてもなかなか話が進まなかったので、日本の旅行関係者の方を頼りに、中国で有名なホテルの支配人様とつないでいただきました。その支配人様にお会いするために、ホテルのイベントやパーティにも積極的に参加しました。

ただ、実際に権限をお持ちの方にお会いできたとしても、簡単に話が通るわけではありません。自分が良き話し相手になれるように、その方の趣味趣向を調べて、その会社の戦略に合った的確な提案をできるように、お会いする前の準備を心掛けました。

どうすれば価値を提供できるのか。ここは、日々考えていたところです。関係性が構築できて、数字が伸びてくると「次はいつ来るの?」「姉妹ホテルの支配人を紹介するよ」などと話が広がり、次から次へと繋がるようになりました。

吉田茜さんの写真

支店のチームメンバーたちとの連携も課題満載だったと振り返る。


中国支店を担当した当初は、中国語ができずに支店の現地メンバーとのコミュニケーションに大変苦労しました。

また、彼らは繋がりをとても大切にする文化なので、チームの一員として認めてもらえなければ仕事をするのは難しいです。

まずは「人」として、信頼されなければ業績は上げられない。そのため、自ら現場に出向き、営業活動に全力を注ぐようにしました。私が担当しているホテルの数字が伸びてくると、メンバーも少しずつ興味を持ちはじめてくれて。

日本から一方的に指示するのではなく、自分自身も一緒になって動いていく。毎日電話で話して、毎月のように出張をして顔を合わせていると、少しずつチームの一員として認めてもらえるようになりました。

目標を達成したときのことは今でも鮮明に覚えています。チームの皆と泣いて喜びました。一緒に喜べる関係が築けた瞬間は、とても嬉しかったです。

やり続ける。必ず「次」が見えると信じて。

見事中国での目標を達成。次なるチャレンジを求めて、吉田さんが選んだ行き先は「日本人の渡航先ランキング一位」のハワイだった。


せっかくなら人気の市場に挑戦してみたいと思い、ハワイを選びました。

当時の楽天トラベルはビジネスユースに注力しており、レジャーエリアは強化できていませんでした。お客様やクライアント様も、楽天トラベルがハワイを取り扱っていることを知らない人が多くいました。また、文化の違いなどから、中国で培ったスキルも全く通用しなくて。

私がもっとしっかりしていれば、堂々としていれば。スキルや知識があったら。そんな不甲斐なさを感じる日々でした。


着任から5年。少しずつ信頼関係を構築し、ハワイ支店の業績は30倍に。前代未聞の偉業を成し遂げた。


今でも「自分には無理だ」と思う瞬間は何度もあります。それでも目の前のことを頑張っていると、一歩先が見えてくる。大きな夢や野望はありませんが、コツコツやれば必ず次につながっていくと思っています。

昔から好きなもの、やりたいことがなくて、それがコンプレックスでした。でも好きなものを最初から持っている人は、そこまで多くないと思うこともあります。目の前のことに挑戦して一歩先が見えて、また次の挑戦をすることの繰り返しが、今の自分につながっています。当時はよくわからなかったけれど、今振り返ってみると、小さくコツコツ重ねてきた全ての点と点が繋がって今がある気がします。

与えられた環境で自分なりに目標を見つけ、それを楽しむことができればいいのではないかと思っています。そうやって一歩一歩前に進み、頑張っていれば必ず次へと続いていきますから。

吉田茜さんの写真


文 = 菊池百合子
編集 = 野村愛


関連記事

特集記事

お問い合わせ
取材のご依頼やサイトに関する
お問い合わせはこちらから