2019.03.27
『17kg』を育てた男、塚原健司の観察眼

『17kg』を育てた男、塚原健司の観察眼

10代女子に支持されるインスタアカウント「17kg(イチナナキログラム)」。アカウント開設から1年半で40万人フォロワーを突破した。現在まで育ててきたのが、塚原健司さん(27)。「17kg」を爆速成長に導いた観察眼に迫る!

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「17kg(イチナナキログラム)」とは?
10代女子に支持されるファッションEC『17kg』。とくにインスタのアカウントが圧倒的なスピードで成長をしている。また、同社が運用する他ブランドにもインスタマーケティングのノウハウを応用するなど、再現性を証明。多くのEC系スタートアップからも注目を集めている存在。

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共通項を見出す、点をつなげる、事業に活かす|塚原健司

インスタアカウントをはじめ、『17kg』を急成長させてきた塚原さん。彼が普段から意識しているのが、大量のインプットと観察。そして自分たちのサービスへの置き換えだ。日々実践していることについて伺えた。


まずは伸びているサービスやアカウント、コンテンツを大量に見る。そこから共通の法則を見出す、点と点をつなげて、事業に活かす感じですかね。

なので、ダラダラとSNSを見るというよりかは、このアカウントやブランドについて調べようと決めたら、けっこう気合を入れて見るようにしています。気づいたら昼から始めて夜中になってることもあるかも(笑)

他のサービスで伸びている部分を見つけると悔しいから、どうにか盗んでやろうってなるんですよね。「なんで伸びているんだ?」と、気になったら知りたくて仕方ない。一種のイライラみたいなものです。

もうひとつ、大量の情報をインプットすると、なんとなく日本人のマジョリティの感覚がわかりますよね。前提の感覚を持ってると、あらゆるコンテンツを見たときに、それが流行っている理由、本質が見えやすいと思っています。

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17kgのインスタアカウント

観察する時は、数値の“異常な伸び”を探せ

次に伺えたのが、どのような視点でサービスやコンテンツを見るか。キーワードは“異常な伸び”だ。


ぼくたちのようなスタートアップの戦い方として、まずは爆発的に数字を伸ばし、後から細かいところを調整していくくらいがいいと思っていて。そう考えると、伸びているところに学ぶのが近道だと思います。

そして、見るべきは「数値の異常な伸び」ですね。

たとえば、インスタのフォロワー数、いいね数など。YouTubeならチャンネル登録数とか。数値になっているところがいろいろあると思うんですけど、まずは「異常な伸び」を探すようにしているかもしれないです。

数値がバッと伸びていたら、歪みが生じていることがある。ぼくが歪みと呼んでいるのは、そのプラットフォームをハックする発明や、情報の非対称性などのことです。

自分なりに考えて、伸びている本質が見えてきたら、事業に応用する方法を考え、施策に落とし込み、とにかく実行する。メンバーたちが”ドン引き”するくらいリソースを投下してやり切る。やりきらないとやってよかった施策なのか、わかんないんですよね。やりきった積み重ねが、事業の成長に現れていくはずなので。

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[プロフィール] 塚原 健司|株式会社イチナナキログラム代表取締役
大学在学中に起業し、株式会社WhiteLabel代表取締役就任 エンジニアとしてwebメディアの開発責任者を兼任。2016年に法政大学キャリアデザイン学部を卒業 2016年にメディア事業を売却。2017年6月に株式会社イチナナキログラムを創業

YouTubeの女性メイク動画を見て、自分でもメイクしてみる

具体的にはどのようなメディアやコンテンツに注目しているのか。どう観察するのか。YouTubeとインスタを例に伺った。


YouTubeもかなり見ている方だと思います。

最近だと美容やコスメの領域について詳しくなりたいから、美容系YouTuberの動画は100時間分くらい見て、自分でもフルメイクしてみたり(笑)。リップも50本ぐらいは買ったかな。どこがどう違うのかを試す。やってみるといろいろわかるんですよ。国によって好まれるメイクの形が違っていたり、この動画はわかりやすい解説か、とか。

コスメなんて、右も左もわかんないわけですよ。メイクしたことないから(笑)だからこそ、ひたすら大量のYouTube動画を見て、真似してみてたり、買ってみたりして、インプットするしかない。

一例ではありますが、化粧によって大きく外見が変化するコンテンツはみんな好きなのかもしれません。メイクをすると圧倒的に可愛くなる動画をアップしたことがキッカケで大きく跳ねたアカウントがいくつかありますよね。ショートムービーでも、メイクのビフォーアフターみたいな動画は流行りやすい。

「こんな自分でも美男美女になれるかもしれない」と思ったり、人が変わったかのようなメイクのテクニックに感動しているのかもしれません。

ウケている要素を紐解いていく

そう思うと、やっぱり漠然と見ることはなくて、具体的にテーマを絞っていく。Youtubeで「これについて調べよう」と思ったとき、20~30本くらいの動画をバーっと見ているかもしれません。たとえば、ひとつのチャンネル内にある動画だけ、類似アカウントの動画だけ、というように。

だから「今日はYouTubeを見るぞ」「今日はここからここまで見るまで終わらないぞ」って、気合を入れて観ないとつらいです(笑)。時間が長い動画もあるし、全部に興味を持てるわけじゃないので。

動画を見ているときは、「この人が提供している価値は何なんだろう?」「どういうユーザー層にウケているんだろう?」「伸びたきっかけって何なんだろう?」と、問いかけながら自分なりの解を見つけていく。

基本的に、チャンネル登録数の伸びているアカウントに注目していますね。

そのアカウントの中で、再生数が最も多い動画を見つけます。それが、アカウントが跳ねるキッカケの動画であることも多いはず。

また、コメント欄をバーッと見れば、視聴している人たちの属性がわかります。「男が圧倒的に多いから、これは男にウケているコンテンツなんだな」「アンチめっちゃ多いな(笑)」とか。

ウケている要素を紐解いていくと、自分たちのサービスにどう適応して活かせるかを考えられますよね。

たとえば、InstagramやYouTubeカップルでやっている人たちは、フォロワー数が伸びていてエンゲージメントも高いことが多い。大量にSNSの情報を浴びている人なら、自然と気付いていることだと思います。

恋愛リアリティー番組も大きく支持を得ていることから、「みんな人の恋愛が好きだなぁ」と思ったり(笑)「恋愛」や「カップル」というテーマの注目が高いことがわかります。

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似たものの「差異」にどれだけ気づけるか

インスタの場合でいうと、「これいいな」っていうアカウントをメモしておいて、あとで腰を据えて調べています。これも“数値の異常な伸び”を、他と比較して見ていく。

具体的なやり方でいうと、アカウントを縦と横に見ていきます。まず、ターゲットアカウントの歴史年表とメモを作ります。「2018/01/02、1回目のpopupショップをopen。関連投稿でいいねのベースがアップしている」といった感じで。次に、10~20くらい類似しているアカウントを専用のアナリティクスツールで検索して、ブラウザのタブで一斉に開く。

伸び率、投稿数、平均いいね数…比較していくと、圧倒的に成績のいいアカウントってあるんですよね。で、同じことをやってるようでも「あ、ここが違うのか」っていうのが見えてくる。

たとえば、今はインスタっていいね数が急増すると虫眼鏡マークの検索ページに載りやすいですよね。そこがキーだと気付いたなら「いいね数を急増させる要素」を探っていけばいい。プレゼント施策、撮り方、色味、画像内テキスト…共通項を洗い出してみる。ここも大量にインプットしていくと、自然と共通項が見つかって「ああ、なるほどね」とわかる瞬間があります。

人に見えてない“歪み”とか、情報として価値のあるところを見つけていく。ここはけっこう努力しないと厳しいのかなっていうのは個人的に思うところです。

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街で女の子に「最近、YouTubeで何が流行ってます?」と聞く

最後にご紹介するのが、トレンドのキャッチアップについて。いかに一次情報に近づけるかがポイントに。


トレンドを知りたいと思ったら、シンプルに若い女の子に聞くっていうのが手っ取り早いですよね。街に行って流行に敏感そうな女の子に声を掛けて、「YouTubeだと最近、何が流行ってます?」とか普通に聞くし。「突然すいません。質問だけしたくて。ナンパじゃないです…!」みたいな感じで(笑)。

この前は、ゴスロリ系のブランドにすごい興味があって。原宿のショップで買い物している人に、「どういうブランドが好きなんですか?」とか、「他だとどういうところで買うんですか?」とか聞いてみる。一次情報だから、詳細な情報が入ってくるんですよね。

あと、若い子のトレンドをざっくり知りたければ…雑誌にまとまってます。

だって雑誌の編集部たちは良質なコンテンツをいかに提供するか、めちゃくちゃ頑張っているわけじゃないですか。だったらそこを見に行くのが一番いい。ネットメディアのコンテンツは大量に投下されがちなので、どれが流行ってる見抜くの難しいですよね。雑誌は違って、本当に良質な情報をキュレートする。そこに重きを置いてると思うので、本当にトレンドを知りたいんだったら、ターゲットが近そうな雑誌を全部見ればいい。最近はオンラインでも読めますし。そうすれば大体わかるんじゃないですかね。

(おわり)


文 = 大塚康平


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