2018.07.02
yutori 片石貴展が仕掛ける古着スタートアップの勝算|「メルカリで買えない世界観を売る」

yutori 片石貴展が仕掛ける古着スタートアップの勝算|「メルカリで買えない世界観を売る」

今、「古着」にハマる10代女子たちがいる。フリマアプリでブランドものの服を買うのとは全く違う価値観がそこに。彼女たちが買うのは 「個性」、そして「自分で発掘する」という楽しさ。その市場で勝負を挑むのが古着情報メディア『古着女子』を運営する『yutori』。代表の片石貴展さん(24歳)にお話を伺った。

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[目次]
・古着×インスタにブームの兆し?|古着女子
・「メルカリじゃダメなの?」古着と中古の違い
・古着女子はなにに価値を感じているのか?
  古着女子が求めるもの①「ユーザー同士のつながり」
  古着女子が求めるもの②「他者からの承認」
・毎日訪れたくなる工夫を。古着ECの戦い方
・「古着×インターネット」という市場を開拓する

古着×インスタにブームの兆し?|古着女子

スマホ世代の女子たちの間で、「古着」がムーブメントになろうとしている――。

ほかのだれも持っていない”一点物”を、自分のセンスで発掘したり、組み合わせたり。インスタの普及もあいまって、古着の人気は上昇している。

古着に関するコンテンツを配信するInstagram(以下、インスタ)アカウント『古着女子』。フォロワー数は約13万*、国内最大級の古着コミュニティだ。特筆すべきはアクティブなユーザーの多さ。『古着女子』が投稿するコンテンツへのインプレッションは月間2000万*。活発なコミュニティであることが伺える。


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開設からわずか5ヶ月で一切の広告費をかけずフォロワーは10万人を突破した成長スピード。現在も伸び続けていることから、古着ブームが起こりつつあるとみていいだろう。

古着女子(古着が好きな女子)たちの価値観が浸透していけば、ブランド名や値段を着飾るのではなく、自分のセンスで「良いもの」を見出すことが重要な世の中になっていくのかもしれない。古着女子たちの価値観から、ヒットプロダクトを仕掛けるためのコツについて探りたい。

訪ねたのは、同アカウントを運営する株式会社yutori CEOの片石貴展さん。

本日(7月2日)ECサイト、自社メディアを同時にオープン。販売事業も本格始動する。

新しい服と比べて古着を着るユーザーは少ない、マーケットも狭いように感じる。古着スタートアップの勝算はあるのだろうか。


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古着女子は、7月2日、ECサイトと自社メディアをOPEN。Instagramから枠を越えて展開を本格始動をはじめた。同社は平均25歳、4人で運営する若いスタートアップだ。赤坂優氏(株式会社エウレカ 創業者)、佐々木翔平氏(株式会社クラウドワークス 元CFO)、佐藤裕介氏(ヘイ株式会社 代表取締役社長)から資金調達したことでも注目されている。


[プロフィール] 株式会社yutori CEO|片石貴展
2016年4月株式会社アカツキ入社。新規事業であるLX事業部の立ち上げ従事(コンテンツ制作ユニットのPM、インフルエンサーエジェント立ち上げのPMを担当する。)学生時代は、600人規模のワンマンライブを経て解散した TheSnatch!のプロデュースを担当。現在も別グループにてプロデュース業も継続中。

「メルカリじゃダメなの?」古着と中古の違い

古着はメルカリやZOZOUSEDで売買されているものとどう違うのか。ぶっちゃけ「メルカリ」でもいいのではないだろうか?


メルカリでは救えなかったニーズを解決するのが『古着女子』だと思っています。メルカリなどのフリマアプリやZOZOUSEDと比較されることもありますが、ユーザーのインサイトが違う。メルカリなどはブランド品を安く買えることが価値。古着は”古着”という世界観を消費しているんです。

一見価値のないものに価値をつけるのが古着です。自分で発掘する楽しさや古着を介して出会う人との交流だったり。誰が買い付けたとか、だれに勧められたとか、服に込められた物語が重要なんです。だから、聞いたこともないアメリカのブランドのへんてこなTシャツでも5,000円とかで売れたりする。

そういった古着が好きな人たちのニーズを満たすサービスはまだ日本にはないと考えています。


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10代女子の価値観を理解することが急成長のカギ

インスタアカウント『古着女子』は開設からわずか5ヶ月で一切の広告費をかけずフォロワーは10万人を突破。フォローしている女子たちはなにを求めているのだろうか。


古着女子が求めるもの①「ユーザー同士のつながり」

彼女たちは、同じ趣味や共通点を持っている人と繋がりたいというニーズが強いのだと思います。

まだまだ古着は一般的に浸透しているカルチャーではないです。そのため、学校のクラスにも古着好きは数人しかいなかったり。また、古着は身体のラインがでないダボッとしたTシャツや太いデニム、ゆったりしたワンピースなどがよく着られています。身体的なスタイルに自信がない人もお洒落を楽しみやすい。身近には居なくても、インスタを開けば『古着女子』やハッシュタグ『#フルジョ』には同じ境遇や好きなことを共有できるコミュニティがある。その点が彼女たちのニーズにマッチしたのだと捉えています。

実は、ほかの”◯◯女子”も実験していて。ピンク色を基調としたガーリーな女子や、フィットネスをするスポーティな女子のアカウントも『古着女子』同様に開設して試してみました。面白いことに『古着女子』は他と比べて10倍以上の成長率で伸びていったんです。開設初日だけでも古着女子は500人にフォローされていました。古着が好きな人たちは特に誰かと繋がりたいニーズが強いことの現れだと思います。


古着女子が求めるもの②「他者からの承認」

そして、古着好きな人たち、自分のコーディネートを褒めて欲しいという気持ちが強いのだと思います。自信がないのは、身体的なスタイルに関して。ファッションを着飾ることに関しては自分の感性やスタイルに自信を持っている人は多いです。だから、顔を隠したりして肌の露出はできるだけ抑える。服のコーデがメインになるように写真を撮っていますよね。


古着女子さん(@furuzyo)がシェアした投稿 -


コーデを認めて欲しいという思いにも『古着女子』は応えています。ここで活用しているのはハッシュタグです。#フルジョ を付けて投稿してくれた写真の中からピックして、古着女子アカウントでリポストしています。

昔は原宿のGAP前にスナップ隊がいてお洒落な人を撮影していました。スナップされた写真が雑誌に載ることがお洒落な人のステータスであり、承認欲求を満たしていたんです。それが今となっては、インスタに移行され、「ハッシュタグ」がかつてのスナップ隊の役目を担っているわけです。

『古着女子』という古着好き13万人が見ているアカウントがある。そのアカウントで取り上げられることをブランドと感じていただけているので、約3万1千もの*投稿が #フルジョ にあつまっています。

古着女子の投稿に対して、平均で5000いいね!が付きます。同じようにリポストでコスメを紹介しているのアカウントと比べてもユーザーのアクションはかなり多い。濃いコミュニティができあがってきていると考えています。

毎日訪れたくなる工夫を。古着ECの戦い方

ZOZOの成長からわかるようにファッションECは非常に大きな市場になっている。古着の場合は大量生産できないので、商材担保のための仕入れなどが大変になるだろう。では、何を強みに古着ECを展開していくのだろうか。


「今日はどんなものがアップされているかな?」と訪れてもらえるような、ユーザーが毎日見て楽しい場所にすることが重要。ここに勝算があると思っています。SNSの攻略の鍵は毎日新しい情報を届けることでした。それを僕たちのECでも再現したいんです。

「種類数=着数」という全てが一点物の古着だからこそ実現できること。ECビジネスのオペレーションという切り口で考えると量産できないので非効率だとは思います。しかし更新頻度の高さは武器になる。『古着女子』の世界観に共感してくれたたくさんのファンの方がいる。インスタと連動することも強みになると考えています。

6月には『イチゴイチエ』という古着のオンラインショップをオープンしました。14着仕入れた商品は、初日に即日完売。翌週にもまた14着売り出しましたが開始5分で完売しました。

「古着 × インターネット」という市場を開拓する

「古着 × インターネット」で事業を確立しているプレーヤーはまだ国内に存在しない。yutoriが展開する古着ECによって潜在的なユーザーを掘り起こすことができれば、市場は一気に広がっていくのかもしれない。


公園などに出向いてフリーマーケットに参加したことがなかった人も、メルカリで売買するようになった人は多いと思います。古着も同じようにyutoriが手がける古着ECが大きくなることによって、今まで古着屋に行ったことない人が、オンラインで古着を買うようになるかもしれない。

インスタ『古着女子』のフォロワーのなかには、古着を買ったことがないけどカワイイから毎日見ている、というユーザーも増えてきました。ECサイトをはじめることで、はじめて古着を買う機会を提供できるようになるかもしれません。

古着の本質はキュレーションです。同じコンセプトの服だけを集めたショップを立ち上げることは簡単にできます。古着初心者から、上級者向けのショップまで、さまざまなニーズにあわせたショップをyutoriから出せば、息の長い事業になっていくと考えています。

僕たちがやりたいことって「古着 × インターネット」の新しい市場を開拓していくことなんです。ECで古着を売ることに加えて、プライベートブランドの展開も予定しています。古着にあうデニムやスカートなど、汎用性の高いアイテムは古着ではない新しい商品を提供していく。さらにその一歩先として、”販売”とは違う新しい形で、古着の楽しみ方を提案していくことも考えています。

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[注釈]*2018年7月2日時点

※2018年7月9日、一部内容を変更しました。


文 = 大塚康平


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