2019.04.08
『17kg(イチナナキログラム)』60人全員が平成生まれ|COO 秋山洋晃が掲げる“持たない経営”

『17kg(イチナナキログラム)』60人全員が平成生まれ|COO 秋山洋晃が掲げる“持たない経営”

インスタのフォロワー数44万人! 10代女性から支持されるファッションEC『17kg(イチナナキログラム)』はチームもユニークだ。メンバーは18歳〜29歳まで、約60名全員が平成生まれ。うち約5割が学生、社員は30名。社員として働くエンジニアはいないし、オフィスはマンションの一室。彼らの「持たない経営」は時代を先行く新たなカタチ!? COOの秋山洋晃さんにお話を伺った。

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『17kg(イチナナキログラム)』が覆すチームの常識

時代は「令和」へ。『イチナナキログラム』はこれからのチームのあり方をアップデートしていく存在だ。約60名いるメンバーは全員平成生まれ。3つの「持たない」を意識的に実践する。

(1)社員としてエンジニアを採用しない
(2)倉庫を持たず、在庫管理は外注に
(3)オフィスは最小限

「すべては若くて優秀な人材を集めるため」

このように話してくれたのが、ファッションEC『17kg』を運営する株式会社イチナナキログラム COOの秋山洋晃さん(27)だ。

「とにかくフットワークを軽くしたい。ここはポリシーと言ってもいいと思います。トレンド変化の激しいこの時代においては何が当たるか分からない。なので『すぐに始めて、すぐにやめられる組織』が強いと思うんです」

いかに固定のコストを割かず、最大限のパフォーマンスが発揮できるか。かつ「自分たちらしさ」を維持していくか。難題にも思えるこれらの条件を、軽やかにやってのけ、新たなチームのあり方を実践する。『イチナナキログラム』流のチーム論に迫った。

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株式会社イチナナキログラム取締役COO|秋山 洋晃
大学在学中に音楽イベントビジネスで起業。2014年3月早稲田大学法学部を卒業。2014年4月グリー株式会社に入社。マーケティング部に在籍後、2014年9月に株式会社Tonight(グリー100%子会社)へ出向し、同社のサービス運営及びM&Aを担当。2018年2月株式会社イチナナキログラム取締役COO就任。

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社員としてエンジニアを採用しない

約60名のメンバーがイチナナキログラムに携わっているのですが、じつは社内に一人もエンジニアはいないんですよね。社員として雇用していないし、現段階では予定もありません。

というのも、僕らが目指すのは「優秀なエンジニアの開発力」を武器にしない戦い方。今、どの会社も優秀なエンジニアを欲しがっているじゃないですか。人材不足で人件費が急騰し、バブルが起きている。採用するのがとても難しい状況です。

一方で、エンジニアがいなくても強いプロダクトがあれば、十分に戦える。プロダクトも、アプリ化することだけが正解じゃない。目的に応じて最適な方法を選べばいい。

そういった意味でイチナナキログラムのこだわりは端的に「身軽さ」なんですよね。できるだけ挑戦へのリスクを下げて戦っていく。そのために事業の初期段階は「低コストであること」を絶対条件としています。

ブランド作りは当たり外れのあるギャンブル的要素が強いビジネス。それなら、集客はインスタでいいし、ECの機能は『BASE』や『STORES.jp』でいい。イニシャルコストをかけなくても戦える。

そうすることで若いメンバーが失敗を恐れず、何度でも小さな失敗と挑戦ができる。後戻りしてやり直せる。結果として、ビジネスの成功確率も上がると考えています。

倉庫を持たず、在庫管理は外注に

もうひとつ「持たない」というテーマだと、ファションECですが「倉庫」を持っていないです。在庫管理や検品も全て外注しています。社内のメンバーはノータッチです。

これには2つ理由があって。

まず1つは、成長や挑戦にこそ自分たちのエネルギーを費やすべきと考えているから。僕らの場合、前年比1,000%という急速なペースで成長しているから、在庫管理や検品など自前でやっていたらパンクしてしまう。フロー・機能の整備にも自分たちのエネルギーを割くべきじゃない

たとえば、ユーザーから急なサイズ変更があっても、自前でやろうとしたらいつになっても配送できないわけですよね。ユーザーさんにとっても、良くないこと。事業を成長させる足かせになってしまう。「全て自前」のほうがリスクだと僕は感じます。

もう1つ、外注をする理由としては、メンバーたちの仕事の満足度を高めたいから。

会社のバリューに「Enjoy Always」を掲げているのですが、僕たちの会社では「楽しいか、楽しくないか」を判断基準として重視しています。

仕事ってもはや「お金をもらうためにやらされるもの」ではない。僕らは「お金を払ってでも心底やりたいと思える仕事」だけやっていきたい。そうしないと血の通ったプロダクトにならないじゃないですか。

そのためには、メンバーにどれだけ楽しい仕事を用意できるか。これが僕ら経営陣の役割だと思っていて。だからこそ、メンバーが心から楽しいと思えない業務は多少高いお金を払ってでもパートナー企業にお願いしています。

「お金」のことだけ考えるなら、もっといろいろやれると思うんです。たとえば他社さんからインスタアカウントの運用代行などお声がけいただけることも多い。とてもうれしいお誘いではあるのですが…全て丁重にお断りしています。

というのも、そこに時間を割くならタピオカ屋さんをオープンしたり、TGCのようなファッションイベントを開催したり、もっとワクワクすることに時間を割きたい(笑)。自分たちが楽しいことが最優先。その上でビジネスとしても成り立たせる。険しい道かもしれませんが、大切にしている価値観なんです。

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オフィスは最小限に

意外と驚かれることが多いのですが、オフィスはマンションの一室です。会議室と10席ほどの執務スペースはありますが、基本的にフルリモート・フルフレックスタイムでやっています。これも「自由に働ける環境」を突き詰めた結果でした。

ネット上で完結できる仕事も増えてきているので、決められた時間、決められた場所に出社することに違和感を感じている方も増えてきています。特にスマホネイティブの平成生まれの方に多いのではないでしょうか。

空いている平日に仕事を休んでディズニーランドや病院、美術館に行きたい人もいるだろうし、家族との時間を大切にしたくて自宅で働きたい人もいる。そういった要望の全て叶える最適解として、フルリモート・フルフレックスを選びました。

賃料の高いオフィスを借りても、いいアウトプットが生み出せるわけじゃない。僕らはいいサービスを世に出すことにこだわりたいし、そのために必要なコストしか費やしたくない。だったら、オフィスより、事業をグロースさせるためにお金を使う。

社内会議も商談もSkypeやAppear.inが基本。誰がどこにいても同じ情報にアクセスできるようにルールさえ決めていれば、全く業務に支障はない。会社全体が「オンライン前提」を徹底できれば、何も困ることはありません。

オフラインで働きたい人に会社が合わせるのはナンセンスだし、「みんなで集まらないといい仕事ができない」というのも、ただの思い込みだと思います。

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四半期に一度開催している全メンバーが集まる食事会。オフラインでの交流が目的。他部署のメンバーとも仲良くなれる

すべては若くて優秀なメンバーを集めるため

これらの「持たない」というこだわりは、若くて優秀な仲間を採用するために、突き詰めていった結果といっていいと思います。

正直、採用に対して強烈な危機感を抱いていて。日本の人口減が分かりきっている以上、事業が順調だとしても若い働き手が採用できず、沈んでいく会社が増えてくると思うんです。そうなった時、「都内勤務」など場所に囚われていたら、他社との若い労働力の奪い合いになってしまう。

その点、僕らのチームは日本全国に点在している。地方の優秀な人材にも自社で活躍してもらえる。これはリモート前提である僕らの強みですよね。

平成生まれである僕らが、楽しく自由に仕事をしながら、稼げる会社をつくりたい。会社のミッションである「世界のトレンドを創造して牽引すること」を実現する。そのためにも、若くて優秀な人が常に会社の中心にいなきゃいけない。

いま、大学生で、20歳の優秀なマネージャーがいるのですが、時給1,000円から入社してくれて。入って一年くらいですが、ほとんどの権限を渡しているといっていい。20名のメンバーを率いてくれていますが、その中には彼が採用し、僕が会ったことのない社会人の方もいますね(笑)

彼らが一番嫌うのは「任せる」と口だけで管理されること。だから、僕ら経営陣は本当に何もしない。聞かれたら答えるだけ。お金を使う時には申請をしてもらう部分がありますが、施策はほぼノータッチでGoしています。

経営陣が面倒をみて小さな成功をするより、やる気のある20歳に任せて、失敗をしてくれたほうが会社としての成長につながるんですよね。自分たちが信じた人だから任せる。失敗しても学んで、次はやってくれる。

任せることは、全く怖くない。僕らは責任を取るだけだし。結局、若い社員が育たないといつまでも経営陣が見ている景色までしか会社は成長できないということ。僕らと同じ、もしくはそれ以上の視座に立てるメンバーを育てたいです。

そう考えると、僕ら経営陣がやっているのは、どこにこだわるか、吟味して「持つ」部分の絞り込み。そして働くメンバーみんなの満足度こそが重要指標で。口だけじゃなくて本気で「人」が重要になる時代なので、どれだけ人のことを考えられるか。ますます経営者の手腕が試される、そんな時代になると思っています。


文 = 菊池百合子
編集 = CAREER HACK


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