2019.06.10
クラシルCTOが明かす「グロースの基本指標を理解する重要性」

クラシルCTOが明かす「グロースの基本指標を理解する重要性」

レシピ動画サービス『クラシル』は、どんな成長曲線を辿ったのか。運営元delyの一人目のエンジニアであり、CTOの大竹雅登さんが「グロースの基本指標を理解する重要性」について語った。

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がむしゃらに数字を伸ばそうとせず、まずは構造を知る

大竹さんは、まずはじめに語ってくれたのが、そもそものグロースの構造について。

「どんなサービスでも初期は指数関数的な伸びを見せ、後期は成長率が下がって寝てくるS字カーブを描きます。スタートアップの初期はこの初期部分しか見えていないので『この成長がずっと続くはず』と思いがちですが、実際は大きな変化がない限り長期的には必ずこのS字カーブで推移します」

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「S字カーブを描く理由を理解するためには、そもそもDAUはどのように構成されているのかを理解する必要があります。新規獲得した日から時間が経過するごとに徐々にユーザーは離脱していく。DAUは以下の図のように、折り重なったミルフィーユのような構造になっています」

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「以下の図は新規獲得、継続ユーザー、チャーンユーザー、DAU成長率の推移をモデル化したものです。日数が経過するにつれて新規ユーザーの“獲得”と“離脱”が釣り合い、DAU成長率が横ばいになっていることがわかります。

計算式を作るとわかりますが、DAUが増えれば増えるほど離脱するユーザー数も増えるので、新規獲得とリテンションレートが常に一定で推移した場合、どこかの時点でDAUは横ばいになるわけですね。

これは数学的な事実なので、『うちのサービスのDAUは上がり続けるはずだ』と期待しても意味はありません。まずはこの事実を理解した上で、DAUが横ばいになる前に対策を打っておく必要があるわけです」

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まず見ておくべき4つのグロースの基本指標

大竹さんはこう強調する。

「サービス立ち上げ初期であったとしても、グロースに関わる基本指標を見ておくことが非常に重要です。がむしゃらに数字を伸ばそうとするのではなく、基本的なグロースの構造を理解した上で戦略的に施策を打つ必要があります」

そして、見るべき4つの基本指標は以下の4つだと明かしてくれた。


(1)リテンションカーブ

獲得したユーザーが経過日数ごとに、どれだけ継続しているかを可視化した曲線。

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(2)リテンションコホート

獲得したユーザーが経過日数ごとにどれだけ継続しているかを、獲得日付ごとに分けて表にしたもの。横軸に経過日数、縦軸に獲得日付、値に継続率を書く。リテンションカーブが平均値としての継続率であるのに対して、リテンションコホートは獲得日付ごとで分析できるので情報量が多い。

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(3)チャーンユーザー

前日から当日にかけてサービスの利用をやめて離脱したユーザー。継続ユーザー数から逆算できる。

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(4)DAU成長率

DAUの前日比での変化率。新規獲得数とチャーンユーザー数が釣り合うことで成長率は0に近づいていく。

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「これらの指標を見ることで、自分のサービスは今S字カーブのどの部分にいるのかを把握します。DAUが横ばいになる前に対策を打っておくことが重要です。成長率を高く維持するには新規獲得数かリテンションレートのどちらかを改善するしかありません」

高い成長率を維持するためにCACを下げる

クラシルでは新規獲得数を改善するために、1ユーザー獲得当たりの単価(=CAC, Customer Acquisition Cost)を下げる施策を行なった。

「新規獲得ペースを増やすには予算を増やすか、CACを下げるかしかありません。予算を増やすのは資金調達などのグロース以外のアクションが必要なので、グロースチームとしてはCACを下げることに注力するべきです」

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CACを下げるために、「オーガニック獲得」のチャネルを育てることに注力した。

「CACは広告費等の獲得費用を、獲得数で割ることで計算されます。ここで重要なのは、獲得するユーザーには広告費を払って獲得するPaidユーザーだけでなく、自然に流入してくるオーガニックユーザーも存在するということです」

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「つまり、無料で獲得できるオーガニックユーザーの比率を増やすことで、全体のCACを下げることができるということです。例えば、SEOによる検索流入、SNS流入、ASO流入、口コミ経由の流入などがオーガニックの獲得チャネルと言えます。特にクラシルの強みはSNSで、Instagramのフォロワーは200万人で国内でも有数な規模です。最近はSEOも強化していて検索流入の数もどんどん増えています」

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ライトユーザーは“ブランド”を重視する

そして、「テレビCM」を打った目的のひとつに「ブランド認知の向上」があったことも明かす。

「TVCMを打つことで一気に市場での認知度を高めたかったんです。「自然独占の法則」というのがあって、ライトユーザーは一番シェアが大きなブランドを好んで選ぶという傾向があります。つまり、ブランド認知度が低い状態で小さな施策を繰り返すよりも、まずTVCMで大きく認知度を向上させた方が良いというパターンもあるということです。

特にレシピ動画は新しいサービスでありつつ、一度見ると価値を理解してもらいやすいので、最初に知るレシピ動画サービスをクラシルにしたいと思っていました」

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穏やかながらも強い言葉で語ってくれた大竹さん。そこには“1位にならなければそれは事業そのものの失敗を意味する”という覚悟のようなものを感じた。中途半端にせず、リスクを取って、大手にはできない勝負を仕掛けていく。これからどのような勝負を仕掛けていくのか。引き続き追っていきたい。


文 = 千葉雄登
編集 = 白石勝也


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