コマース、エンタメ、広告…さまざまなシーンでの活用が進むAR。ARカンパニーMESON 代表 梶谷健人さん監修のもと、「2019年の最新事例12選」をお届けする。
[連載]
[1]ARの進化が止まらない! 2019年 AR活用の最新事例 12 選
[2]GoogleもAppleも「AR」に本気?!押さえておきたいAR最新動向
監修者プロフィール
梶谷健人 ARクリエイティブスタジオMESONの代表
ARサービスのプランニング・体験デザインを主に手がける。大手グローバルブランドを含む複数企業にサービスデザインとグロースのコンサルティングも行っている。 「いちばんやさしいグロースハックの教本」(Amazon.jpのマーケティング・セールス一般カテゴリ1位)の著者。2015年末まではVASILYでiQONという女性向けファッションサービスのGrowthを担当。 インド・アメリカにて現地スタートアップ向けにサービスデザインとグロースのメンタリング業務も経験。
▼概要
「Wanna Kicks」は、スマホをかざすだけでスニーカーの試着ができるアプリ。足の角度を変えると連動して、スニーカーの向きも変わる。画像の解像度も高く、リアルに近い感覚を得られることが特徴。開発元の「WANNABY」は、アメリカのスタートアップで、ARでネイルを試せるアプリ「Wanna Nails」もリリース。
▼ここがポイント
ECサイトで商品を買って、実際に届くと「靴のサイズが合わない」「思った色と違った」と、がっかりする。そんな経験が、誰しも1度や2度あるのではないでしょうか。コマース領域で注目したいのは、ARによる「試着体験」。海外ではすでに導入が進んでいて、「商品の返品率を下げる」というデータも出ています。
▼概要
2019年6月に「YouTube」が新たにAR新機能「AR Beauty Try-On」をスタート。インフルエンサーのコスメ紹介動画を見ながら、視聴者がARでコスメを試せるというもの。たとえば、リップスティックの紹介動画だったら、展開している様々なカラーを自分自身の映像と重ね合わせて、ARで試用可能。気に入ったら、そのまま購入までできる。
▼ここがポイント
ARとはいえ「本当にその色なの?」って思われる方もいると思うのですが、最新のARの技術はかなり進歩しています。特にコスメとARの相性は良くて、色の表現も光の当たり具合によって変わるし、マットなのかウエットなのか質感の表現もできるんです。
▼概要
アメリカで一番大きなコスメのセレクトショップ「セフォラ」のAR導入事例。お店にはiPadが常設されており、ARでコスメを試せるようになっている。
▼ここがポイント
コスメ×ARの領域はかなり盛り上がっていて、海外では店舗での導入も進んでいます。なんでこんなにコスメ×ARが進んでいるのかというと、コスメの試用って女性にとってハードルが高いからなんです。つけたら落さないといけないし、また化粧をする手間もある。ブランドにとってもユーザーにとっても、すごく気持ち良い体験になっています
▼概要
ECサイト「Shopify」では、サイト上でARを利用できる。「ARボタン」を押すと、カメラが立ち上がって、対象の商品を目の前の空間に配置が可能。オンラインでありながら、質感でサイズ感を知ることができる。
▼ここがポイント
ARの導入のハードルに、「アプリをインストールする」のがあります。この障壁をいっきに取っ払たのが、ECサイト「Shopify」です。すでに、IKEAとかが同じようなサービスをアプリで提供しているのですが、shopifyではアプリインストールの手間を省いています。
▼概要
お店の壁面にあるポスターに、iPadをかざすことでポスターの中にいるモデルがランウェイを始める。モデルが着ている服の詳細情報を確認でき、気に入った商品はその場で購入可能。
▼ここがポイント
「PORTAL」という作品は、株式会社ONWARDと、自分たちMESONで制作したものです。
ECで何でも購入できる時代、グローバル全体として、店舗が「体験を提供する場」にシフトしてきています。そういった背景の中で、この「PORTAL」というARサービスでは、「発見・学び・つながり」という3つの体験を価値として提供しています。ファッションショーを通じて、自分ではなかなか選ばないような服との出会えたり。ブランドの歴史や創設者の哲学に触れて、世界観を知れたり。ここでの体験を通じて、ふらっとお店を訪れた人にも、ブランドの世界観をインストールできるように設計しました。
▼概要
世界最大級の音楽フェス「Coachella Festival(コーチェラ・フェスティバル)」では、毎年ARを活用したライブ演出が見れる。2018年は、Eminem(エミネム)とのコラボレーションが話題に。
▼ここがポイント
コーチェラのライブ演出は毎年非常に面白いです。見たこともないような異次元の世界が目の前にあるような、面白さを体感できる。ARでライブ演出はもっと拡張できる、その可能性を感じさせられます。エンタメはこっからさらに数段階進化していくでしょう。
While many @mlb teams will be rolling out #AR & #VR activations this season, I doubt any will rival what @Wyverns_Story did for their #OpeningDay
— AR & VR in Sport (@ARVRinSport) March 28, 2019
The team had an augmented reality version of their mascot arrive in stadium to kick off the season!
Who knew a Wyvern was a Dragon? pic.twitter.com/auX8aqw1wC
▼概要
2019年3月に、韓国のプロ野球チームが開幕式でARを用いた演出を実施。観客は専用アプリを立ち上げると、チームのマスコットキャラクター(ドラゴン)が出現し、パフォーマンスを見ることができる。
▼ポイント
球場のディスプレイの映像とも連動していて、画面が割れる演出があります。ARの映像がリアルと連動していて、めちゃくちゃ面白いです。
KDA AKALI SHOWED UP AT THE LPL GAUNTLET FINALS AND THE AR LOOKS EVEN BETTER THAN THE ONE AT WORLDS OH MY GOOOOD pic.twitter.com/jGOVlcYhGT
— TL(P)Linda groups stage (@iCrystalization) September 8, 2019
▼概要
2019年に開催された、人気スマホゲーム「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」の世界大会での一幕。ゲームのキャラクターと、K-POPアイドルがバーチャルK-POPグループ「K/DA」を結成し、キレのあるダンスと歌で会場を沸かせた。
▼ここがポイント
ゲームのキャラクターと、現実世界のアイドルが一緒にパフォーマンスをするという、ライブ演出の進化を感じさせる事例です。床の反射まで細かく写し出されていて、リアルに近い。クオリティの高さがすごいです。
▼概要
Googleマップに搭載されている、ARナビゲーション機能。目的地入れてAR開始ボタンを押すと、瞬時に今いる場所を認識し、矢印が表示され道案内をしてくれる。
▼ここがポイント
はじめて訪れる場所だと、地図で位置情報がわかっても、どの方向を向いて歩きだしたらたらいいのか分からなくなるときってありますよね。ARでは、目の前にガイドが現れるので、そうした課題を解決してくれます。案内領域はAR時代の基盤になるので、GAFAを中心としてものすごい勢いで進化しています。
▼概要
「Look Around」は、iOS 13から追加されるマップの新機能。Googleの「ストリートビュー」に似た機能で、細かな移動にも対応。AR表示を見越したUIになっている。
▼ここがポイント
AppleはAR時代の覇者を狙ってるので、この取り組みは「AR時代のUX検証」だと思います。ARで街を見たときに、どんな世界が広がっているのか。ARを見越して、UIがつくられています。
Appleがいま公式でやっている、新宿の街を歩きながら複数のアーティストのARアートを見て回る[AR]T Walkに参加してきた!
— KAJI / MESON CEO (@kajikent) August 11, 2019
街の中で、自分が作品の一部になりながらアートを鑑賞する体験はとても新鮮で、AR事業をやる身としても学びや発見が沢山あった。 pic.twitter.com/VJ5GLVilh2
▼概要
「[AR]Tウォーク」は、Appleが実施しているARを利用した現代アートのウォーキングツアー。カメラをかざすと、外の風景とアート作品が現れる。世界で、日本を含む全6都市のみで実施中。街歩きをしながら、アート作品を楽しむことができる。
▼ここがポイント
僕自身、新宿で「[AR]Tウォーク」に参加してきたのですが、新しいアートの鑑賞体験で、とても新鮮でした。無料でツアーに参加できるのですが、チケット制で、人気過ぎてなかなか取れないみたいです。
SnapchatのLandmarker機能使ったGame of Thronesのプロモーション。建物の形状をしっかり認識してるから本当に現実にいるかのような演出が出来ている。これの渋谷版作りたいので誰か一緒にやりましょ。
— KAJI / MESON CEO (@kajikent) April 15, 2019
pic.twitter.com/pQtvY861VP
▼概要
Snapchatが実施した、人気海外ドラマ「Game of Thrones」のARプロモーション。アプリ内に搭載されている「Scan」という機能を立ち上げるだけで、リアルの街を認識し、ドラマの世界観を再現する。
▼ここがポイント
ARを活用した広告領域では、Snapchatが一番業界をリードしていると思います。彼らは自らを「カメラカンパニー」と名乗っていて、カメラで時代を取りに行くべく、非常にARプロモーションに力を入れています。
クオリティもめちゃくちゃ高い。「Game of Thrones」のプロモーションでは、前後関係を把握して、建物の後ろを通ったり、凍らせるような演出も可能にしている。Snapはこれ以外にも複数の建物でAR演出を提供していて、技術的にはかなり難易度の高いことを実現しています。数億単位を超えるユーザーの写真データの活用と、独自の技術によって、建物の立体データを精度高く生成。建物を正確に認識し、形状に即したAR表示を可能にしています。
[連載]
[1]ARの進化が止まらない! 2019年 AR活用の最新事例 12 選
[2]GoogleもAppleも「AR」に本気?!押さえておきたいAR最新動向
取材 / 文 = 野村愛
4月から新社会人となるみなさんに、仕事にとって大切なこと、役立つ体験談などをお届けします。どんなに活躍している人もはじめはみんな新人。新たなスタートラインに立つ時、壁にぶつかったとき、ぜひこれらの記事を参考にしてみてください!
経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。
Notionナシでは生きられない!そんなNotionを愛する人々、チームのケースをお届け。