2019.10.08
テクノロジーでギフト体験をアップデート!東大発スタートアップ『TANP』の戦い方

テクノロジーでギフト体験をアップデート!東大発スタートアップ『TANP』の戦い方

ギフト専門ECサイト『TANP』は、3人の東大生が学生時代に立ち上げたスタートアップだ。ビッグプレイヤーが名を連ねるEC領域に、彼らはどう切り込んだ?「ギフトを通して、一人でも多くの人に幸せを届けたい!」──そこには、テクノロジーの力でギフト体験をアップデートする戦い方があった。

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ギフトEC『TANP』CTO 林拓海が語る、開発の裏側

大切な人にプレゼントを贈りたいけど、何を選べばいいか分からない…。

『TANP』は、そんな悩みに寄り添うギフト専門のプラットフォームだ。

誕生日、結婚祝い、父の日、母の日、クリスマス…シーンや贈る相手との関係性に合わせて、5600(*)を超えるアイテムの中からぴったりのギフトを選ぶことができる。

中でも、"オプション”の豊富さは特徴的。ラッピングはもちろん、メッセージカードやドライフラワーの同梱、名前の刻印など、ネットとは思えない購買体験が可能だ。

創業時から開発を支え、CTOをつとめる林拓海さん(24)はこう語る。

「やっていることはECなので、よく"テックっぽくないよね”と言われます(笑)でも、じつは物流機能のIT化やデータ活用にかなり力を入れていて。フルスクラッチで開発をしているんです。テクノロジーを武器に、ここからさらにドライブをかけていければと思っています」。

リリースから2年。当初は3日に1件しかなかった注文が、いまでは1日に数百件。クリスマスや母の日といった繁忙期には、1200件以上注文が集まるECサイトに成長している。

激化するEC領域で、彼らはどんな世界を目指し、いかに勝ち筋を見つけてきたか?開発の裏側、そしてギフトに込めた思いに迫る──。

(*)2019年10月時点。カラーバリエーション含む。

2017年9月にオープンした『TANP』。現在400社弱(2019年10月時点)と取引をしており、『the body shop』『gelato pique』『DEAN&DELUCA』など、有名ブランドの商品もズラリ。大切な人の誕生日を登録できたり、相手の住所を知らなくてもSNSを通じて贈ることができたりと、ギフトを贈りたくなる仕掛けが散りばめられている。

リリース半年で方向転換。雑貨店で掴んだ“ラッピング”の可能性

『TANP』のサイトでプレゼントを探したことがあるのですが、まず名入れやお花の同封といったオプションがあることに驚きました。他のECサイトでは、なかなか見ないなと。

ありがとうございます!いまは常に5~7種類のオプションを用意していて、お客様の8割以上の方が、購入時に何かしらのオプションをつけてくれている状況です。

ただ、じつはリリース時はオプションって用意していなくて。

もともと僕たちは、「SNSでギフトを贈れる」というところを一番のウリにスタートしたんです。ところが、当時それがあまり刺さらず。最初の数ヶ月は正直、全然だめでした。

商品は3日に1個売れるかどうか。「売れた!!」と思って購入者の名前を見たら、メンバーのお母さんだった、友だちだった、みたいな(笑)もちろんありがたいですけどね。

細かいサイト改善はかなりやっていたものの、半年くらいは手応えのない日が続きました。

そんなとき、たまたまCOOの中内とカフェでモーニング会議を行なった日があって。そこで「ロフトのギフトって人気だよね、見に行こう!」という話になり、ロフトに立ち寄ったんです。ホワイトデーの2週間くらい前だったのですが、お店に入ると、特設コーナーができていた。そこで、商品がきれいにラッピングされた状態で売られているのを見たんです。

「あ、これいいかも!」って、なぜか2人ですごい興奮して。すぐにサイトにラッピングのオプション機能を追加したら、かなり反応が良かった。ホワイトデーのタイミングだったこともあって、売上が一気にグンと伸びました。

そこから、バラエティ豊かなオプションサービスを実現しようと、いっきに方向転換したというわけです。

ITの力を駆使して、強固な「ロジスティクス」を

たまたま見つけたギフトラッピングが突破口に!でも、オプションって種類が増えれば増えるほど、オペレーションが複雑になるような気がするのですが…

そうですね、大手のECサイトや百貨店さんなどが手をつけていない理由もそれなのかなと。ただ、だからこそやりがいがあると言いますか、物流体制をIT化できれば圧倒的な強みになると思ったんです。

具体的にやったこととして、まずは在庫管理システムを自社で開発。在庫管理から商品管理、CRM、発送、売上データの集計まで、すべてシステム化しました。

同時にオプションにかかる作業の自動化、たとえば名入れや花の発注は今まで全部手でやっていたのですが、今はボタン一つでできるようになっています。もちろんまだ人の手でしかできない部分もあるので、そこは1人あたりの梱包にかかる時間を計測し、1円でもコストカットできるよう全員で意識してやっている感じです。

人やモノが絡んでくると、どうしても設計が複雑になってくる。なので、細かい改善をしやすいよう、仕入れから発送まですべてのバリューチェーンを一気通貫で自社で行なっているんです。サイト自体もパッケージを使っていないし、発送は自社のオフィス内にある倉庫から行なっています。

2018年の春頃からロジスティクスの体制強化をはじめて、現在1日あたりの最高発送数は1200件まで拡大。1年ほど前は最も多い時で800件くらいだったので、だいぶ洗練されてきていますね。

オプションの数や発送数が増えても負荷に耐えられるよう、サイト改善や発送フローのさらなる効率化を進めているところです。

データは「使える形」にしなければ意味がない

ロジスティクスの構築ともう一つ、データ活用にも力を入れていて。

サイト上でギフトを渡すシーンや相手との関係性のカテゴリを細分化しているので、日々膨大な行動データをとることができます。

そのデータをもとに独自のアルゴリズムでレコメンドを出したり、行動に合わせてプッシュ通知を送ったり。まだまだ改善の余地はありますが、効果的なWebマーケティングを実現できていると思います。

また、商品を仕入れる際も行動データや商品データを細かく分析。MDが「これなら売れる」という確信を持った上で動けるようにしているんです。

それに、じつはデータ活用に注力してから顧客開拓もうまくいくようになって。Webマーケティングに強いショップさんってまだまだ少ないので、そこをうちが補える。購買データを分析した上で提案しているので、「売れます」ということを、ある程度確実性をもってお伝えできるのも強みかなと。

データって、毎日ただ計測しているだけでは意味がない。活用を前提に集めて、使える形に変換する。何のためにそのデータを見るのか、そこはエンジニアだけでなく、メンバー全員が意識しているところかもしれません。

エンジニアは「サービス業」

最後に、林さんは『TANP』をどんなサービスにしていきたいですか?

僕、人に幸せを届けられる仕事ってすごくいいなと思っていて。『TANP』も、ただ便利なだけじゃなく、大切な瞬間を彩れる、人と人とのつながりを豊かにできるようなサービスにしていきたいんです。

個人的に、いま僕がやっているのはテクノロジーを駆使した「サービス業」だと思っています。ロジスティクスの強化はギフト体験の向上、データ活用はギフトを渡すハードルを下げることにつながっているんじゃないかなって。

やりたいことは、まだまだ沢山あります。刺繍入れや写真付きメッセージカードの同封もできるようにしたいし、ケーキを贈れるようにもしたい。将来的には、プレゼントだけでなく特別な瞬間、幸せな1日をトータルプロデュースできるようなコンシェルジュ的なこともできたらいいなと思っています。

物流面でも、たとえば在庫管理をもっと効率化できるよう自社でバーコードを作り直したり、マンオペレーションをもっとシステム化したりする必要があるなと。

ギフトって、特にミスが許されない世界で。僕たちからしたら数百件のうちの1件だとしても、お客さまにとっては、1度しかない大切な瞬間。質も量も、どちらも確実に担保できる体制を強化していかなければなりません。

まだまだやるべきことは無限にある。そのためにも、僕自身、そしてチームとしてもさらに技術力を磨いていければと思っています。

【プロフィール】Gracia CTO 林 拓海(24歳) 2019年東京大学工学部卒業。在学中にプログラミングに興味を持ち、インターンなどを通してフロントエンドの実装からサーバーサイド、インフラまで幅広くエンジニアの経験を積む。大学2年の6月に、同級生の斎藤拓泰(CEO)、中内怜(COO)と共にGraciaを創業。CTOとして『TANP』の開発を率いる。


取材 / 文 = 長谷川純菜


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