小学生の時に発案したカードゲーム《ケミストリークエスト》で起業を果たした、現在中学2年生の米山維斗(ゆいと)さん。ゲーム自体の面白さのみならず、大人顔負けの考察力や知識量、プレゼンテーション能力で注目を浴びる彼に、面白いゲームの条件を訊いてみた。
ゲーム業界の盟主交代が顕著に表れはじめている現在。最年少起業家・ゲームクリエイターとして注目を集めているのが米山維斗さんだ。
TED×Seeds 2012やEdu×Tech Fes 2013 U-18での、大人顔負けの素晴らしいプレゼンテーションをご覧になった方も多いかもしれない。
4歳の時に宇宙に興味を持ち、以後化石や無機鉱物などに関心の幅を広げる。そして、彼が小学3年生の時に考え出したのが、原子を結合させて分子を作り勝負するカードゲーム・《ケミストリークエスト》。
2011年、当時12歳という史上最年少の若さで、ケミストリー・クエスト株式会社を起こし、取締役社長に就任。リリース前から各所で絶賛されたこのカードゲームは既に5万部以上を売り上げ、自ら開発したiOSアプリは、世界中から5,000DLを記録している。
この春中学2年生になった彼が考える、面白いゲーム・面白くないゲームを分かつ決定的な要素とは何なのか?中学2年生とは思えない深い考えや、一度興味を持つと、どこまでも深く追求する好奇心。天才の片鱗が垣間見えるインタビュー。
― よろしくお願いします。この春から中学2年生ということですが、いまどのような活動をされているんですか?
中学校では科学部と鉄道研究部に所属しています。科学部では、自分たちで考えた実験を行なったり、鉄道研究部では、各地の鉄道に乗って旅をしたりしています。僕みたいな“変人”も多く、すごく自由な校風の中学校なので、とても楽しいですね(笑)
― 小さな頃から宇宙や化石に興味を持っていたとのことですが、いま一番興味を持っているのは?
一番ハマっていることは、『京王電鉄』ですかね。
― 京王電鉄!?電車に興味があるということですか…?
いや、『京王電鉄』そのもの、電車も線路も駅も全部ですね。まず鉄道自体に興味を持ったんですけど、いちばん身近な路線について調べていったらハマってしまって。学校では京王についてだったら誰よりも詳しいです!
― 京王線といえば、ダイヤ改正がありましたね。
そうそう!非常にいいダイヤ改正ですよね。自分でダイヤを組んでみて、計算してみたりもしているんです。他にも、相模原線の線路を延長して新しい駅を建設しても、周辺人口から計算すると開業当初でも大赤字にはならないはずだ…、とか。そんなことを頭の中でいろいろと考えてます。
― 『京王電鉄』に“ハマって”いるという意味が、よくわかった気がします(笑)さて、米山さんは小学3年生の時に、《ケミストリークエスト》を考案したとのことですが、そのきっかけはなんだったんですか?
友だちが神経衰弱のようなカードゲームで遊んでいるのを見て、単純に自分もゲームを作ってみようと思ったんです。それから、どんなゲームがいいか考えてみたんですが、よくあるカードゲームはどれもバトルするものばかりで…。それなら“戦わないゲーム”があったら面白いんじゃないかと。そこから、何かとくっつく…結合のようなゲームのイメージがわいてきて、原子と原子を結びつけて分子を作って勝負するというアイデアが出てきました。
― なるほど。化学をゲームにしようと考えたというよりも、まずはゲームを作ってみようという考えから《ケミストリークエスト》は生まれたんですね。
そうです。化学にはもともと興味があっていろいろ調べていたんですが、なかなか化学の話を同級生の友だちにしても、共通の話題までにはならなかったんですよ。でも、《ケミストリークエスト》を友だちに紹介して遊んでみると、すごく興味を持ってくれて、ゲームを通じて化学の話ができるようになったんです。
― そしてその後、小学6年生、12歳という若さで起業されていますが、何か目標があって起業されたのでしょうか?
別に目標なんてなかったです。会社を作ったのは、あくまでも手段として。
小学5年生の時に東京国際科学フェスティバル2010という、大人も子供も楽しめるお祭りのチラシを見つけたのですが、そこに「誰でもブース出展可能」という文言があって、《ケミストリークエスト》を出展してみることにしたんです。
すると、同世代の子どもに楽しんでもらえたり、大学教授の方などにもすごく高い評価を頂けて。そこで初めて、もっと多くの人に《ケミストリークエスト》で遊んで欲しいと思うようになりました。
そのためには商品化しなければいけないし、商品化するには会社を作らないといけない。全て目的に基づいた手段を取っていったら、起業という選択になったんです。
― 最近ではiPhoneアプリもリリースされていますよね。
はい。Life is Techというイベントに参加して、数日間のキャンプ期間中に制作しました。いま世界中から5000DLくらいしてもらっているので、もっとブラッシュアップしていきたいと思っています。
― 《ケミストリークエスト》は海外でも発売され、まだまだ順調に売り上げをあげているそうですね。ここまで、《ケミストリークエスト》が支持される理由はなんだと思いますか?
なんでしょう…。単純に面白いからじゃないでしょうか…。
― では、米山さんにとって“面白い”ゲームとは?
「ルールが破綻していない」「ゲーム性がある」ものかな。逆説的ですが、僕が面白くないと思うゲームはルールがどこかしらおかしくなっているんです。
《ケミストリークエスト》に関して言えば、基本的なルールの中で、プレイヤーがどんな行動をとれるのか、例外としてどんなことを許容しているのかきちんと設計されています。化学のことや原子の周期表を知らなくても、誰でもルールを知って、守れれば、ちゃんと勝敗がでて遊べるようになっています。
― なるほど。ルールがゲームの面白さの本質だと。さらに《ケミストリークエスト》はゲームを通じて、化学に興味を持つことができるという、教育的な効果もあると期待されていますよね。
確かに、“ゲーム”を通して、化学の基礎を知ることができるという点に関して言えば、非常にいいものであると、いまでは自信を持って言えます。
でも、多くの方に支持される一因になっているのは、あくまでもゲーム自体が面白いからだと思っています。
もちろん結果として、《ケミストリークエスト》をきっかけに化学の世界を知ってもらって、周期表を覚えてみたり、身近な化学製品に興味を持ってもらえたら嬉しいです。
― 《ケミストリークエスト》に関しては今後どのような展開を考えているんですか?
よりカード枚数の多い、中級レベルの《ケミストリークエスト》を開発しています。有機化学と無機化学を同じルール下で齟齬なく取り入れようとしていて、少し難しいのですが、年内にはリリースしたいなと考えています。
そして、ゲームと化学に国境はないので、是非とも《ケミストリークエスト》の世界大会を実現したいですね。少し先の話になるかもしれませんが、自分のつくったゲームが世界中の人に楽しんでもらえる。それが化学に触れるきっかけになれればすごくうれしいです。
― それでは最後に、将来の夢を伺えますか?
何の分野かは全く決めてないのですが、研究者になりたいなと思っています。自分の興味を突き詰めて考えていく職業に憧れます。
そうそう。先ほどお話しした、僕が《ケミストリークエスト》を出版するきっかけにもなった東京国際科学フェスティバル2013の副委員長も務めることになりました!
― 中学2年生なのにすごい活躍ですね。
大人も子どもも楽しめるイベントなのでぜひ多くの方に来場していただき、化学に触れるきっかけにして欲しいですね。
― 本日はありがとうございました!今後のご活躍も期待しています!
編集 = 松尾彰大
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