2012.07.05
「インターネットが政治を変える」―《One Voice Campaign》原田謙介さんの挑戦。

「インターネットが政治を変える」―《One Voice Campaign》原田謙介さんの挑戦。

いま、インターネット選挙運動解禁に向けた動きが活発化しつつある。中でも、20代の若者が中心となって活動する《One Voice Campaign》というムーブメントが見過ごせない。その発起人・原田謙介さんと一緒に、インターネットがこれからの政治をどう変えうるのか考えてみた。

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インターネットと政治の「今」。

インターネットは、その暴力的なまでの革新性で、あらゆる分野のしがらみを取り払ってきた。だが、こと日本の政治に関していえば、インターネットの力はまだまだ及んでいないのが現状だ。

日本では、選挙期間中のインターネットを使った選挙運動がいまだ解禁されていない。候補者が自身のWebサイトやブログを更新することも、TwitterやFacebookで有権者と意見交換することも明確に法律で禁止されている。

選挙期間中、立て札に候補者のポスターが掲示されているのをご覧になったことがある方も多いだろう(じっくり見たことはないと言ったほうが適切かもしれないが)。実は候補者の名前の入った選挙運動目的の文書図画は、選挙管理委員会が発行するシール・ハンコのついた一定枚数のものしか利用できないと、公職選挙法で厳しく規定されている。候補者が自身の政策を有権者に訴える方法は、演説をするか、あるいはあのポスターを掲示するか、その程度のアクションしか許されていないのだ。

もちろんこれはあくまで日本での話。海外に目を向けると状況はかなり違っている。例えばアメリカでは、インターネットを使った選挙運動はいまや当然のものとなっている。オバマ現大統領がSNSをフル活用し、クラウドファンディングの手法で小口献金を集めていたことを覚えている方も多いだろう。おとなり韓国をはじめアジア各国、ヨーロッパ諸国でもインターネット選挙運動は当然のように行われている。明らかに「日本が遅れている」のだ。

FBページ「2000いいね!」を2日で集めた《One Voice Campaign》原田謙介さん。

キャプチャ01

その状況を憂いて、さまざまな市民団体が「インターネット選挙運動解禁」に向けた活動を行なっている。その一つが《One Voice Campaign》。発起人は、この春大学を卒業し、現在はNPOの立ち上げ準備を進めている原田謙介さん。26歳の若者だ。原田さんは東京大学在学中の2008年に「20代の投票率向上」を目指す学生団体《ivote》(アイ・ヴォート)を設立。インターネット選挙運動に関しても、早い時期から関心を寄せてきた。

《one voice campaign》の立ち上げは2012年4月。初めは10人程度の小さな集まりだったものが、つながりがつながりを呼び、瞬く間に100名規模に。メンバーは学生・社会人を問わず、そのバックグラウンドも政治関連だけでなく広告やWEB、デザイン関係などさまざまだ。『"No Voice”から"One Voice”へ』の旗印のもと、まず「インターネット選挙運動解禁」を目指し、その先に社会・政治をより良く変えるムーブメントを起こしていくべく活動を続けている。

その活動は他の団体とは一線を画しており、いい意味でとてもポップ。まず目を引くのがWEBサイト。広告、WEB業界で働くメンバーが多いためかデザインはクールで、コピーはとても洗練されている。また分野を問わず各界の著名人による動画メッセージが多数。これは「政治に関心のうすい人にも興味を持ってもらえるように」と、人海戦術でアポをとり、集めたものなのだそうだ。

公式Facebookページは公開2日で「2000いいね!」を突破。5月には「One Voiceサミット」と題したイベントを開催。議員会館の大会議室にて、各党の国会議員やメディアジャーナリストの津田大介氏によるパネルディスカッションを実施。来場者は200名、「ニコニコ生放送」「Ustream」での生中継の視聴者は約2万人にのぼった。

着実に前へと進んでいる《One Voice Campaign》。日本の政治をもっとよくしたいと語る原田さんは、インターネットにどのような可能性を見ているのだろうか?

「政治」という視点でみた、インターネットの可能性。

原田さん右

― 原田さんは、インターネットによって政治はどのように変わっていくとお考えですか?

「 政治におけるインターネットの活用というと、立候補者や行政の側からの情報開示が増えるという部分ばかりがフォーカスされがちですが、それが全てではなくて。インターネットが、有権者と候補者との対話を可能にするプラットフォームとして機能することこそが本質なんだと考えています。

そもそも政治って、古代ギリシャの『ポリス』に由来する言葉で、その頃の政治は市民同士の対話によって成り立っていたと言われています。インターネットが政治をより原初的で純粋なものに近づけていく可能性はすごくあると思っていて。国会議員さんが有権者一人ひとりと密な対話をするのは難しいかもしれませんが、例えば区議会議員や町会議員といった身近なところまでおりてくると対話が弾むと思うんですよ。あそこのカーブミラーが傾いてるから直して…とか(笑)。それが議員さんに伝われば、市の担当にすぐに連絡が入って“直します”と、そういうスピード感で物事が進むことだってありえますよね。

もっと高い次元の話もそう。TwitterやFacebookといった双方向のツールを使って、“区のこの問題についてどう思います?”っていうやり取りも絶対に広がってくると思います。実際に議員さんの中には普段の政治活動でインターネットを使っている方もいらっしゃるんですが、選挙期間だけはネットが使えなくなってしまう。それってやっぱりおかしいなと思うんです。選挙活動中だろうとそうでなかろうと議員さんや候補者と有権者が対話をして、そのやり取りがきちんと選挙に反映されて、次の任期にもしっかり引き継がれていく。そのプラットフォームになり得るのが、インターネットだと思います 」

ネットが、政治を「眺めるもの」から「参加するもの」に変えていく。

原田さん左2

― インターネットを使ってどういう“場”がつくれたら、もっと国や政治がよくなるとお考えですか?

「そうですね、例えば発言者の属性を年齢や性別、居住地、年収などさまざまな切り口でセグメントして、どんな属性の人がどんな考えを持っているのか、グラフ上にプロットされるような仕組みがあると面白いかもしれませんね。同じ20代でも会社員として働いている人とずっと職人として働いている人とでは、意見がこんなに違ってますよというのが分かるような仕組み。

マスコミがやっている意識調査って、国民の意識を正しく反映できていないじゃないですか。日本人はみんな同じ考えというわけじゃないんだから、それぞれがどういう考えを持っているか、バックグラウンドが共有された上でちゃんと議論できるようになれば良いなと思います。

いまの社会では、バックグラウンドが共有されないままなんとなく議論が続いていることがよくあります。お互いがこういう考えで、だから議論しようよっていう場づくりが進めば面白いと思うんですよね。その議論の場に、政治家もどんどん入ってくればいいと思っていて。

さらに言えば、今の国政は政党の顔しか見えず、政治家個人の顔が見えませんよね。でもインターネット上に政治家と有権者が議論する場ができれば、実はすごい志を持っているとか、しっかり仕事しているということがきちんと見えるようになります。そうなれば、有権者の側からもその人に投票して応援しようとか個人献金しようとか、そんな動きだって出てくると思うんです。それにお金はないけど志はあるという人が、もっと政治に打って出やすくなるかもしれない。

政治家一人ひとりをもっと国民一人ひとりが支え、一緒に育てていく。一緒に政治をつくっていこうよ、というアクションが起こせる場所をつくっていくべきだと思います 」

国に預けた責任を、もう一度、自分たちの手に取り戻す時がきている。

原田さん外

― お話を伺っていると、インターネットを介して政治がオープンになることで、私たちが果たすべき役割も増えていくのだろうと感じます。

「 その通りですね。今まで政治が閉ざされていたのは、国民が責任を負わなくてもいいように、敢えてそうなっていた部分があると思うんです。でももう、僕らが何も考えなくてすむ時代じゃない。国に預けっぱなしにしておいた責任を、いまもう一度、僕らの手に取り戻す時がきているんだと思います。

自民党から民主党へ政権が交代した際、あの選挙で民主党に票を入れた人は多かったわけですよね。その人たちが今の民主党を批判しているとすれば、それは民主党を批判するだけじゃなくて、票を入れた自分自身も少しは批判しなきゃいけないんです、本当は。そうすれば次の選挙のとき、意識が変わると思います。

学生団体をやっているときから30代・40代の方に“おれの学生時代はそんなにマジメじゃなかったよ”ってよく言われるのですが、きっと僕がバブルの頃に大学生やってたら、絶対に政治なんてどうでもいいって思ってたはずです。やっぱりこういう時代になって、将来不安で先が見えない状況になったときに、若い人が声を上げなきゃもったいないし、悔しいよねって。自分ひとりが声をあげても何も変わらないので、同じ思いを持った人を増やして、みんなで声をあげていかないと。それは決して特別なことじゃなくて、いまこの時代だからこそ当たり前にやるべきことなんだと思っています 」


編集 = CAREER HACK


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