2020.04.22
今は生産性が落ちてもいいーー『BASE』CEO 鶴岡裕太が、リモートワーク化で社内に伝えたメッセージ

今は生産性が落ちてもいいーー『BASE』CEO 鶴岡裕太が、リモートワーク化で社内に伝えたメッセージ

WEBのスタートアップ、ベンチャーでいち早く進む社員のフルリモート勤務。そのなかで経営者たちは何を思うのか? どんなメッセージを社内に出しているのか。ネットショップ作成サービス『BASE』代表取締役 CEO 鶴岡裕太さんにお話を伺った。

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※写真は2018年10月に取材時に撮影したものを使用。

今までなかった産業が出てくる転換期

新型コロナウイルスの影響で多くの企業でリモートワークに移行しています。この先はどんな変化が起こっていくのか、鶴岡さんが考えていることはありますか?

確かにこの問題が落ち着くと、人々の価値観が変わり、大きな変化がやってくる気はしています。僕らが提供しているネットショップの意義も変わるかもしれないですし、生き方もそう。なにより働き方の前提は大きく変わると感じています。

メンバー全員がリモートワークをすることについてもそう。リモートワークはもちろん良いと思っているのですが、逆に「リアルじゃないとできないことは何だろう」と改めて考えるきっかけになりました。

また、人々の価値観が変わっていくと新しい産業も立ち上がるはず。僕も7年前に起業していますけど、起業するタイミングとしてはいいのかもしれません。新しいリスクを知り、新しい価値観が生まれ、ここから5年、10年と今ないような大きなサービスになっていく。そんな未来がくるような気がします。

BASEなどのネットショップにしても、オンラインとオフラインの垣根がこれほどまで無くなっている時期はなかったように感じていて。飲食店はわかりやすいですよね。テイクアウトも、デリバリーも、配送も、ネット注文が当たり前になっていて。ネットショップもこういった時代に大きく貢献していくものになっていくのかもしれません。

「何気なくしていた会話」がすごく大切なものだったと気付かされた

リモートワークを全社でやられてみて率直な感想としては?

インターネットの業界にいると、「リモートでもいいよね」と合理的に考えがちなんですけど…チームがあって、同僚がいて、そこで何気なくしていた会話がすごく大切なものだったのだなと改めて知りました。

たまにZoomでメンバーと話したり、お昼を食べたりすると安心するし。寂しさがまぎれますよね。リアルで集まって仕事するってある意味形骸化していて、ありがたさを忘れがち。ですが、そういうことに気付けてよかったなと思います。

リモートワークで、リアルと同じ質のアウトプットは求めない

鶴岡さん個人としてはリモートワークはどうですか?

個人的には働きすぎちゃうなと。あとはチャットコミュニケーションがメインなので、返信があるか、どう受け取られているかなど、気になっちゃいますね。

こういったことも含めて、精神的な辛さはあるかもしれません。

じつは先日弊社の全社定例があったんですけど、いつも通りの成果を残さなくて良いということと、なにかあればいつでもマネージャーに相談してほしいとメンバーに伝えたばかりなんですよね。

個人的に、リアルと同じ質のアウトプットを、僕自身が出すのも無理だと思って。今までと同じアウトプットをリモートで追って、成果を残そうとすると、誰がちゃんと働いていて、働いていないか、みたいなことを検証しなきゃいけなくなる。働いた時間でしか「成果」を証明できなくなってしまうこともある。仕事に向き合えば向き合うほど、ずっとスマホかパソコンを見ていて疲れてしまう気がするんです。

しかも普段からリモートなら良いのですが、今みたいに最低限の外出しかできないとなると辛いですよね。思うように外を歩き回れないし、友達と気軽に会える環境でもないし。そんな時に仕事で思い詰めてしまうと、中長期的にはデメリットの方が大きくなると思っていて。

今はこのタイミングだから、中長期で良いプロダクトを作るために、短期的には生産性が落ちてもしょうがない。無理に目標を追いかけてしまうと、長い目で見てチームが疲弊する可能性がある気がします。ユーザーさんにサービスを提供し続けることは大前提ですが、明らかに有事なので、今の尺度にあった働き方でいいかなと思いました。

そういった意味で、今の働き方に合わせた目標だったり、コミュニケ―ションの変更が求められているんだなと思いました。

僕だって精神的に疲弊してもおかしくない。

どうしても「リモートでも同じような成果を。いやもっとがんばろう」となりがち。そこは冷静に捉えられているんですね。

そうですね。今って社会そのものが有事なので「仕事」と関係ないところでメンタルにきちゃうなと思っていて。僕自身が精神的に疲弊することだってあり得る。いろんなニュースがあるし、買い物にいくのも、配達してもらうのも、ちょっとしたことでも、いろいろ考えてしまうじゃないですか。日常の精神状態ではないし、僕もこんな経験は初めてなんですよね。

自分たちではどうしようもできない「外圧」がかかっている状態だと。

そうですね。リーマンショックや東日本大震災の時、僕は社会人じゃなくて。そういった意味では自分自身が初めて世の中の危機的な状況に向き合っている。初めてのことでもあるので、今は有事であることをきちんと自覚し、そして置かれている状況に対して視野を広く持って、あまり無理しすぎないことも大切なのかな、と思っています。

(おわり)

>>>前編|相次ぐ「ネットで売りたい」の声。ネットショップ作成『BASE』が打ち出す新型コロナ支援策


取材 / 文 = 白石勝也


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