スマホゲーム実況が楽しめる『Mirrativ(ミラティブ)』の分析部、坂本登史文さんによる寄稿記事「分析の考え方」を前後編の2本立てでお届け!分析初心者が注目するべき「スパイダーマン値」とは?
▼全2本立てでお送りいたします。
前編:テック業界で働く、社会人1年目から知っておきたい「分析の基本的な考え方」- 分割と分解の違い -
後編:データ分析のきほん|分析初心者は「スパイダーマン値」を見逃すな!
【プロフィール】ミラティブ分析部 坂本登史文 @sakamoto_mirra
ミラティブにてデータ分析グループリードと新規事業PMを務める。2010年京都大学理学研究科修了。大手メーカー系IT企業でSAPコンサルタントとして会計システムの開発に従事。その後、データサイエンティストとしてDeNAで活躍。2014年3月、freee株式会社に参画、データ分析チーム・グロースチームの立ち上げ、会社設立freeeのプロデュースなどを経て、現在はミラティブ。新規事業をの責任者を経て、現在は分析部部長。
こんにちは、株式会社ミラティブ分析部の坂本登史文です。
前回は、タクミとカオルのやりとりを通じて、分割と分解の違いをお話しました。
▼前編はこちら!
【前編】テック業界で働く、社会人1年目から知っておきたい「分析の基本的な考え方」- 分割と分解の違い -
今回は、新米アプリディレクター「ワタル」の物語を通して、よりデータを詳細に見るときの重要な考え方を紹介していきます。
それでははじまりはじまり。
俺はワタル。新入社員としてこの4月に大手アプリ開発会社に就職した。
この会社は、若手が抜擢されることで有名な会社で、俺はいきなりフリマアプリのファッション部門の運用を任されている。俺自身はあまりファッションに興味がない人生を送ってきたので、四苦八苦しているのだが・・・
そんな俺の目下の目標は、アプリのPV(閲覧数)を増やすこと。どうやらファッション部門の大きな会議で4月〜10月の目標として決まっているらしい。といってもその目標が決まったのは俺が配属される前の話なので、深い歴史や文脈を必ずしも理解できたわけではない。だが、まぁ議事録や資料に目を通して目指すべき目標だと納得できた。
で、問題はどうやって増やすかということだ。先輩からは「小手先の工夫ではなく、本質的に増えるような提案をしてほしい。そのためにデータ分析やユーザーインタビューも効果的に使ってね」と言われている。俺はとりあえず、データ分析から着手してみることにし、1ヶ月の間の閲覧数をユーザーごとに算出してみた。
「うーん」
かれこれこのグラフと向き合って30分経つ。いたずらに平均値や中央値を出してみたりしたが、次の一手が見えてこない。
スッコココ
すると突然、メッセージアプリからの通知の音がした。同期のカオルからのダイレクトメッセージだ。入社してからずっとリモート勤務ではあるが、同期同士の交流はそれなりに進んでいて、たまにこうやってメッセージのやり取りをする。
「フリマチームは楽しい?こっちはそろそろエンジニア研修が終わりそうで、一応配属希望を聞いてくれるらしくて、いろんな同期にメッセしてるとこ」
といった軽い内容だった。ちなみに、うちの会社はエンジニア研修の終了タイミングがひとりひとり違う。要は、卒業試験というものがあり、それに合格したら本配属というシステムである。卒業試験は、昨年実績で9月まで研修中だった人もいると聞いているくらい厳しい。カオルはまだ春先なのに卒業予定が立っているということは、エンジニアとして素養があるんだな。
そんな考えがふっと頭をよぎり、ちょうど今悩んでいることを相談してみることにした。
ワタル:フリマチームめっちゃの楽しいよ!でも、企画って難しいって感じてるとこ><
カオル:そうなん?企画やりたくて入社したって聞いてるから、超幸せを噛み締めているかと思ったわ。
ワタル:いや、幸せなのは幸せよ。ファッションについての勉強も楽しんでやってる。
カオル:ならええやん。なんか詰まってるん?
ワタル:あー、まさにそれ。いま「ファッションカテゴリページのPVを増やす」っ
ていう企画を考えているんだけど
カオル:つきぬけ5本柱?の1つだっけ?なんか全社会議で言ってたよね。それか。
ワタル:それそれ。うちのビジネスモデルの場合、流通金額も大事だけど、PVを上げていくことも重要ということで、その企画を任されてる。
カオル:よっ、将来の事業部長!
ワタル:茶化すなよ...確かに入社式でいったけどなww
ワタル:でさ、一旦グラフにしてみたわけ。
カオルの冗談のせいでちょっと会話が横道にそれてしまったが、先程のグラフをメッセージアプリに貼り付けた。
カオル:なるほど。こういう分布になってるのか。初めて知ったわ。で、これを見てワタルはどうしようと思ったん?
ワタル:平均が5回だから、月5回しか閲覧しない人をどうやって10回や15回にしたらいいんだろう?みたいな思考がぐるぐる回って、ネクストアクションに繋げられてない。とりあえず、回数が少ない人にユーザーインタビューでもしようかなって気持ちになってる。
カオル:あーそっちにいっちゃったかぁ。
ワタル:え?あかんの?なんで?
カオル:まぁ、リサーチ目的でいろんなセグメントの人にインタビューするのは悪くないと思う。でも、こういうお題の場合は「スパイダーマン」を探すのが重要なことの一つと思っている。ちなみに、スパイダーマンって知ってる?
ワタル:あー、正義のヒーローでバイクに乗ってやってきて、3分しか戦えなくて、たまにメカに乗って戦うやつやっけ?
カオル:お前の脳内どうなってんねん。1つもかすってないわ。スパイダーマンってのは、特殊な蜘蛛に刺されて超人的な能力を持った青年の話や。ニューヨークのビルを飛び移るくらいの跳躍力があったりするやつよ。
ワタル:おぼろげながら思い出してきた。
カオル:じゃぁ、スパイダーマンが存在する世界線における走り幅跳びの記録のグラフってどうなると思う?多分こんな感じになる。
ワタル:「それ以上」の1人がスパイダーマンってことか。
カオル:そうそう。んじゃ、この集団の幅跳びの成績をあげるにはどうしたらいい?
ワタル:うーん。それぞれにあった練習法が必要だから、それぞれにインタビューとかしてみようかなぁ。
カオル:いや、実はもっと早く記録上げる方法があるでしょ。スパイダーマンがどうやって驚異的な跳躍力を得られたか考えると・・・・?
ワタル:あっ!「スパイダーマンを刺した蜘蛛を捜して、全員が噛まれればいい」ってことか。
カオル:そう!
ワタル:なるほど!自分の成績を上げたければ、一番成績がいいクラスメイトがうまく行っている秘訣を真似ればいいということか。
カオル:飲み込みがはやいね!俺は常にスパイダーマンを見逃さないようにしている。ちなみに、さっきの記録を出した人たちにユーザーインタビューをしたら、きっと下記のような結果になると思うのよ。
ワタル:ふむふむ。つまり、平均や中央値の人の話を聞いてもその結果が出た理由は詳細に理解できるが、それを伸ばす方法は出てきづらい。ならば、一番結果を出している人たちを詳細に理解して、その人たちがやっている方法をみんなにやってもらえる方法がないか探すアプローチがよいのでは?ってことやね。
カオル:まさにそのとおり!
ワタル:ありがとう!ネクストアクションが見えてきた!今度あったときに社食おごるわ。ありがとう。
カオル:今度あったときって、その時が初対面やけどな(笑)
ワタル:確かに、リモートでしかあったことがなかったな。でも約束する!忙しい中教えてくれてサンキュ!
カオル:おけおけ。これくらいの相談ならいつでものるよ、「大いなる力には大いなる責任が伴う」って言うしな。
ワタル:なにそれ?よくわからんけどありがとう。
カオル:とりあえずスパイダーマン見てくれ(笑)
カオルのおかげでやることが明確に見えてきた俺は、早速ヘビーユーザーに連絡し、インタビューの約束を取り付けた。
そこから数日、俺は多くのユーザーに話を聞くことができた。そこでわかったことや今後の企画を必死に考え、企画ミーティングへと臨んだのであった。
先輩「ワタルくん、企画の調子はどう?」
ワタル「めっちゃ考えてきました。下記のスライドを見てほしいです。」
先輩「なるほどね。上位の人たちは、フリマアプリ的な使い方ではなく、どちらかといえばInstagramのように、おしゃれコーデの参考という形でつかってたということか。なるほどなー。これは私も知らなかった。で、その後どう考えた?」
ワタル「なので、そのような使い方をするユーザーを増やす方法はないかと思い、『碓氷マコちゃんフォローキャンペーン』を考えました。要は、フォロワーのなかから抽選で10名にフリマクーポンを配るキャンペーンです」
先輩「うーん、着目ポイントはよかったんだけど企画がちょっと短絡的かなぁ。ファッションなんだから、みんながみんな碓氷マコちゃんさんのようなテイストを好むかどうかわからないよね?
だからこそ、
って感じかな。まだまだ施策として何かを固めるというよりは、施策を実施するため(施策が成立するため)のリサーチを進める段階かな。この辺はデータ分析というよりは、プロダクトマネジメントのスキルなので徐々に身につけていってもらえばOK。今回は、実際のヘビーユーザーの動向をデータやインタビューからリサーチしていたから、そこはよくできていたと思うよ。ありがとうね。
ワタル「ありがとうございます!確かにそこまで深く考察できてなかったなと思います。引き続きリサーチを続けていきたいと思います!」
ーーーワタルの事業部長までの道のりはまだまだ続くーーー
と物語調にお届けしましたが、今回は、新入社員のワタルくんの物語としてお届けしてきましたが、スパイダーマン値がいかに重要かおわかりいただけたでしょうか?
「一番うまくやっている人からエッセンスを抽出し、それを他のユーザーにも展開する」というシンプルな内容なので、是非必要に応じて業務に取り入れてくださいね。
一番アプリを使用している人
一番特定機能を使っている人
一番長く使ってくれている人
一番商材を買ってくれる人
など、あなたの業務のすぐ近くに意外なスパイダーマンが潜んでいるはずです。
ちなみに、私が所属しているミラティブでは「課題に向き合い続ける」という行動指針があります。課題を直視し、どの課題に集中するべきかということを常に考えるという意味です。課題に向き合いたい方、ぜひ下記のページをご覧ください。
正面から「課題」と向き合って仕事をしてみたい、ミラティブに興味があるという方がいれば、ぜひ、会社ホームページ(採用ページも)をご覧ください。
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