2021.12.22
PMが習得するべき「7つのシコウ」を解説! エムスリー執行役員 / VPoE / PM 山崎聡が考える「PM育成」の指針

PMが習得するべき「7つのシコウ」を解説! エムスリー執行役員 / VPoE / PM 山崎聡が考える「PM育成」の指針

PM(プロダクトマネージャー)には、7つの「シコウ」習得が大切になる!? エムスリー社で執行役員 / VPoE / PMを担う山崎聡さんが考えたPMに求められる「シコウ」を解説。おすすめ書籍と併せてご紹介します!

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※2021年10月26日に開催された【Product Manager Conference 2021】より、エムスリー株式会社執行役員 / VPoE / PM 山崎聡さんのセッション「非連続な環境、変化、プロダクトに対応していくためにPdMが習得するべき7つのシコウ」をピックアップ。書き起こし形式で編集したものをお届けします。※記事内では「PM=プロダクトマネージャー」として表記しています。

8歳からプログラミング

全国のプロダクトマネージャー及びプロダクトマネジメントファンのみなさま、こんにちは! エムスリーで執行役員 / VPoE / PMをやっている山崎聡と言います。

今日は、「非連続な環境、変化、プロダクトに対応していくために、PM(プロダクトマネージャー)が習得するべき「7つのシコウ」」をテーマにお話ししたいと思います。よろしくお願いします。

まず簡単に自己紹介をすると、私はエムスリーという会社で執行役員、VPoEをやりながら、PMもやらせてもらっています。もともとエンジニア出身で、8歳の時からプログラミングをやってきました。今はPMがメインで、特にアプリやSaaS製品を担当しています。

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補足として、デザイナーやQAも統括しています。2020年10月にエムスリー初代CDOになり、現在は2代目に交代をしたところです。

ですので、エンジニア、PM、QA、デザイン、いわゆる「プロダクト」に関わる職種をすべて統括しているような役割です。

+++ インターネットを活用し、健康で楽しく長生きする人を1人でも増やすこと、不必要な医療コストを1円でも減らすことをミッションとするエムスリー(東証1部上場)。日本の医療従事者に対する『m3.com』を中心に運営する。「日本に医師が今32万人から3万人ほど臨床医師が言われており、その9割以上の30万人以上を会員とする日本最大級の医療情報プラットフォームです。また、医療従事者だけではなく、患者向けサービスも多数展開。クリニック向けキャッシュレス決済サービス『デジスマ診療』なども開発しており、メインのPMを担いました。医療業界の人がITに挑戦しているのではなく、IT業界の人が医療にチャレンジしているような会社です。業績は好調で、売上約1690億円に対し、570億円ほど利益が出ており、時価総額でもインターネットサイト運営企業でいえば、1位、2位を争っています」と語る山崎さん。

コロナ禍で様変わりした医療業界。より「PM育成」が重要に

まずPMカンファレンスにおける今年テーマ、本当にすばらしいと思いました。非連続な環境、非連続な変化、そして非連続なプロダクト。まさに世界で日本が置かれている環境そのものだな、と。

とくに医療業界はコロナ禍で様変わりしました。環境、変化、そこで求められるプロダクト。こういった「非連続」にどう適応していくか。そのために私が重要だと思うのは「プロダクトマネージャーの育成と成長」です。今後はよりそれらが求められる時代になっていくと考えています。

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プロダクトマネージャーの仕事とは一体何か。まさにそれぞれの「非連続」に適応し、新しいプロダクトと価値観を投入していく「0 → 1」が大切だと思っています。何もないところから新しい価値を生み出すためにも、プロダクトマネージャーの育成と成長は重要です。

まずPM関連のすばらしい書籍がたくさん出ており、それらを参照することをおすすめします。 たとえば、

INSPIRED
EMPOWERED
プロダクトマネジメントのすべて
ALL for SaaS

など、これらはPMの育成、成長のために本当にすばらしい書籍であり、必読だと思います。

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ただ、書籍から学ぶにしても、プロダクトマネジメント業界の現状からすると「ある種のスキル」も必要になります。

「プロダクトマネジメント」はまだまだ成熟途中のジャンル。たとえば、エンジニアリングやデザインに比べると「教育の方法論」が確立されていません。途上の段階ですので、さまざまな本を読んでも、何をどこまで学べばいいか、どこをピックアップするか。どうしても「経験」に依存する部分が大きくなってしまいます。

そこで「書籍から学ぶ」ためにも、そのための心構え、PMとして習得すべき「シコウ」がとても重要になると考えています。なぜ、「シコウ」がカタカナか。ここがポイントになりますので、具体的に説明していきます。

PM育成における「7つのシコウ」

ズバリ、これが結論です。

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プロダクトマネージャー育成における「シコウ」は1番から7番までの「7つのシコウ」で考えられます。この概念は、実際、エムスリーでプロダクトマネジメントに関して議論する時にもかなり役に立っています。

PMが何を考え、どうチームを率いているか。PMはもちろん、プロダクト開発チームのメンバーにも定期的に説明し、理解してもらう。そうすることで共通の経験から得た学び、共通の認識、理解を得ていくことに寄与します。また、振り返りにも使える概念です。ここからは、1つずつ説明していければと思います。

[1]思考

「1番」から「7番」まで時系列的にプロダクト開発のプロセスで使える順番になっています。その中でも「1番」は中心となる概念である「思考」です。一般的には「考える」の意味ですが、PM育成における「思考」が意味するのは「プロダクト」「顧客」「チーム」この3つについて、他の誰よりもPM自ら率先して考えられているか?学べているか?だと思います。もっと言うとビジネス、そしてテクノロジー、ユーザーについても最も考え、学ぶべきがPMですので、中心に「思考」があると思います。

[2]指向

2番目は「指向」です。ある方向、目的に向かっていくこと、方向を指し示す意味ですね。まずはゴールを指し示す。考え抜くことの次に大事なので、2番に選びました。プロダクトが達成すべきゴール、チームへのリーダーシップが発揮できているか。自ら指し示し、先頭を歩けているか。ぜひ立ち返ってみましょう。

[3]志向

3番は「志向」です。2番とよく似ていますが、私は、より「高い志」という意味で捉えています。PMとして志を持ち、チームにも伝搬できているか。志を「持つ」と「伝播する」はセットです。1番で「思考」し、2番でゴールを「指向」する。そのために志を持つ&伝播する、3番で「志向」でチームを動かしていく。チームのみんなに「行くぞ」「こういう問題を解決していくんだ」という志が伝搬できて初めて次の「シコウ」が始まります。

[4]試行

そして4番は「試行」です。わかりやすく「試しにやってみる」「試みる」「トライする」です。ここは昨今のプロダクト開発のおいて、とても重要なこと。リーンやアジャイル、仮説検証などすべて広義の「試行」ですし、同じ文脈に入るものですよね。プロダクトで顧客の真の課題を解決できるように、素早く仮説を検証できるか。つまり試行できているか。意図せずウォーターフォール型になってないか。決めつけになってないか。こういった部分も含めて「試行」のプロセスは大事になってきます。

[5]施行

そして5番の「施行」は実際に行う、ということです。私たちがやっているのは、アイデアのコンテストではなく、世の中、顧客の「困りごと」の解決です。それらを上手く解決するためのプロダクトを実際に生み出さなければなりません。当たり前ですが「どう作るか」も大切なわけです。ですので、ここでいう「施行」はプロダクトを素早く作るための開発プロセスを理解し、チームで実践すること。ビルドしていく部分を意味します。エンジニアリングのバックグラウンドを持つPMであれば、ノウハウがあると思うので、生きてくる分野かなと思っています。

[6]嗜好

その上で「嗜好」を6番目に置いています。あるものを好み、親しむ意味で「嗜好品」と言ったりもしますが、同じ意味の「嗜好」です。PM育成における意味合いでいうと、顧客から愛されているか。プロダクトやチームに対する「ファン」がいるか。そして自分たちでも好きか。こう捉えてもらうといいかと思います。そのプロダクトが好きで、生み出しているチームも好き、というのはよくあるケースですよね。シェアされたり、口コミで広がっていったりするようなプロダクトにとって非常に重要なら視点ではないでしょうか。

[7]至高

最後は「至高」です。この上なく優れているその様、最高っていうことです。PM育成における意味としては、チーム全員が協力し、最高のプロダクトを目指しているのか、本当に磨き上がっているのか、妥協せずに高みを目指せているか、という部分です。

シコウのまとめ

ここまで1番から7番まで「シコウ」の詳細を見てきましたが、プロダクト開発プロセスにおける順番にもなっています。

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これを1つずつ、エンジニア、デザイナー含めて話しあってみるとすごく面白い議論ができるんじゃないかなと思います。

「7つのシコウ」対角要素から考える、バランスの重要性

7つのシコウですが、じつは「対角要素」で見ていくのも、すごくおもしろいですし、大切なポイントかと思います。

たとえば、2番の「指向」と、5番の「施行」は対角にあり、両立することが難しく、バランスが要求される場面も多くあります。

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具体的には、プロダクトが達成すべきゴールを示し、リーダーシップとして「指向」を発揮する。もちろんこれも大切ですが、一方でメンバーを信頼、尊重し、力を合わせてプロダクトを作り上げていく「施行」もまた大切です。

一見すると、この「リーダーシップを発揮すること=志向」と「メンバーと協力してプロダクトを形にすること=施行」は相反します。さらに、みんなの意見を吸い上げようとしてもバラバラなこともある。

当然、PMとしてはメンバーたちの「やりたい」を尊重し、自由に任せたくもなるんですよね。「そっちでもいいよ」と。ですが、最後はプロダクトの成果や売上に責任を持つのもPMの役割。そこはビシッと指差ししていく。ここも私は欠かせないことだと思っています。

もうひとつの対角要素は3番の「志向」と、6番の「嗜好」です。

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志を持ち、チームに伝搬する「志向」は大切ですが、一方で顧客が求めるものに寄り添って、顧客から愛されるプロダクトを作っていく「嗜好」もまた大切になります。

まだあります。4番の「試行」と、7番の「至高」も対角にあります。

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プロダクトが顧客の真の課題を解決できるよう、素早く仮説検証し、どんどん試していくことも大事ですが、チーム全員で最高のプロダクトを目指すことも大切。試しながらもどう完璧を目指せるか。

それぞれの「バランス」をどう取っていくか。ここがPMにとって、難しくも、おもしろい部分だと思っていますので、ぜひ参考にしてみてください。

隣接する三角で見えてくるPMに必要な要素

最後に、隣接する「三角形」で見ていくこともできるため、その見方をお伝えして終わりたいと思います。

まず、

1番「思考」
2番「指向」
3番「志向」

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この三角形は、プロダクトチームのチームビルディングに深く関連します。チームをつくる時は、これらを整理することから始めるといいかと思います。

次に、

1番「思考」
3番「志向」
4番「試行」

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この三角形は、いわゆる「ペーパープロトタイピング」です。とにかく作る前に試し、高速でプロセスを回す。考え抜いた上で「コレを作るんだ」と志を統一し、有効なスピード感で作る。その考え方の参考になるはずです。

1番「思考」
4番「試行」
5番「施行」

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こちらは、まさに試しながらものを作っていくMVP開発に相当します。どんどん行きます。

1番「思考」
5番「施行」
6番「嗜好」

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ここは、作りながらユーザーが本当に求めるものにフィットさせていく。まさにPMF(プロダクトマーケットフィット)の考え方ですね。

1番「思考」
6番「嗜好」
7番「至高」

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ユーザーに合わせつつ、さらに完璧を目指していく。これはいわゆる「グロースハック」だと捉えることができます。

そして最後に「ジャンプ」もあります。

1番「思考」
7番「至高」
2番「指向」

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これは最高のものから、次のステージへ向かっていくこと。「Jump the next curve」と言ったりしますが、次のcurveを当てにいくために大切な考え方ですね。これも、さらに先を指し示すPMにとって大切な役割のひとつだと思います。

7つのシコウは、夢を叶える「ドラゴンボール」だ!

ちょうど「シコウ」が7つあるので、私は「プロダクトの夢を叶えるドラゴンボール」と勝手に呼んでいます(笑)ぜひ、ドラゴンボールを集めながら、成長を目指していただくといいなと思っています。

最後にスペシャルサンクスを。この「7つのシコウ」ですが、じつは「Google 日本語入力」で「シコウ」と入力したらたくさん候補が出来きて、そこから着想しました。「ナイスシコウ」がいっぱい出てきました(笑)

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及川卓也さんが「Google 日本語入力」の開発に携わられていたと伺っています。本当にすばらしいプロダクトです。いつも及川さんにはお世話になりっぱなしです。そういったことも込めて、最後にスペシャルサンクスをお送りさせていただき、このセッションを終えたいと思います。ありがとうございました!

(おわり)


編集 = 白石勝也


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