ESG/SDGsなどの重要観点となる「非財務情報」の可視化、データベース事業を展開するサステナブル・ラボ。同社COOの高橋浩太郎さんは、前職、ユーザベース社でセールスヘッド(APAC地域)を務めた人物でもある。なぜ彼は同社に参画したのか。そこには「社会の歪みを解決したい」という志があった。
サステナブル・ラボ社について
データサイエンスの力により、社会課題解決を図るデータサイエンスベンチャー。CO2排出量、水消費量、再生可能エネルギーの使用量、女性管理職の割合、残業時間、取締役会の出席率など、企業におけるESG/SDGsへの取り組みを示す「非財務情報」の自動取得、AI分析、データベース化を行う。経済合理性による価値判断が主流となってきた「資本主義」のアップデートを掲げ、売上・収益に加えた社会・環境貢献度も評価の一部とする「強く、優しい企業」の増加を目指す。2020年、世界のESG投資額でいえば35兆3,000億円(2016年比較で55%増)を超え、全運用資産の35%以上を占めるなど、ESG/SDGsへの取り組みが企業経営における重要テーマとなるなか「非財務情報のブラックボックス化」という課題解決に挑む。※下記、提供プロダクト
■非財務データプラットフォーム「TERRAST」
非財務情報の一元的なルールが定まっていないなか、包括的なデータセット、多面的な分析・予測機能が備わった高度化・分析ツール。国内外の上場企業約4000社以上の情報を整備し、機関投資家、金融機関、コンサルティングファーム、教育・研究機関、事業会社の経営企画など、ESGを重視する全プロフェッショナルがユーザーとなる。より明確で正確な分析を行い、定量的なサステナビリティ経営判断・打ち手、非財務価値の評価につなげられる。
■ESGカルテ作成ツール「TERRAST for Enterprise」
質問項目に回答するだけで、自社がどれだけサステナブルな経営を行えているか診断できる、ESGカルテ作成ツール。未上場企業、中小企業でも、非財務的な取り組み、ESGへの取り組みを可視化し、新たなビジネスチャンスや良好なパートナーシップ構築、市場評価に役立てていく。
■先が見えない時代の企業ブランディング・メディア「テラスTV」(7月リリース予定)
サステナビリティ特化型メディアとして企業の隠れた魅力をAI診断で客観的に照らし出し、第三者認定を発行。同時に特集ページを開設し、人材・取引先・金融機関といった社内外の関係者に向けて効果的な発信を可能に。
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非財務データ集団「サステナブル・ラボ 」COOが抱く志
あらゆる企業にとってESG/SDGsに対する取り組みが重要テーマとなっている昨今。注目を集めるデータサイエンスベンチャーが「サステナブル・ラボ」だ。特徴は「あらゆる非財務情報*」の可視化を行っている点にある。その背景と狙いについて同社COOである高橋浩太郎さんに伺った。
*企業経営におけるCO2排出量、水消費量、再生可能エネルギーの使用量、女性管理職の割合、残業時間、取締役会の出席率など、あらゆる「非財務情報」の可視化、データベース構築を行う。
これまで、多くの企業が行うESG/SDGsへの取り組みは、客観的に評価がしづらいものでした。だからこそ、まずはそこに対するあらゆる要素の「見える化」を行い、把握いただけるようにする。さらに最も重要なのは、単なる「見える化」ではなく、それら情報を企業がどう提示するか、活用していくか。「非財務情報」が「財務情報」と同じように活用され、経済圏、エコシステムを作っていく。これが私たちのアプローチであり、やりたいことです。
創業時には、取り扱うデータ・情報を絞ることもできたはず。それでも「あらゆる非財務情報」を扱うプラットフォームにこだわった理由がある。
創業時から、なぜプラットフォームの構築を志向しているのか。そこには、創業者である平瀬(平瀬錬司氏)が掲げるビジョン、 課題感が大きく影響しています。問いは非常にシンプルで「良い企業とは何か?」というもの。売上・収益における「強さ」、そして社会・環境貢献といった「優しさ」、この両方を併せ持った「強く優しい」企業を世の中に増やしていく。そのためにも、まずは「モノサシ」となる「非財務情報」と「財務情報」という両軸のデータが必要になると捉えています。
これまでの資本主義では経済合理性やGDPなどが価値判断基準の主流でしたし、それが当然とされてきました。投資や購買行動でも「いかに得をするか」、いわばコスパ重視の社会ですよね。ただ、近年「歪み」が浮き彫りになってきました。利益偏重は、環境、社会、そして人々の価値観、幸福度にも良くない影響を与え得るものであると。この点はすでに多くの人が実感していることではないでしょうか。そうであるなら、これまでの資本主義をアップデートする仕組みが必要ではないか。こういった平瀬の課題感、ビジョンに対して私も同じ思いを抱いており、今の仕組みだとどうしても生まれてしまう「歪み」を解決をしていきたい。それがサステナブル・ラボに入った理由でもあります。
そもそも、高橋さんが「これまでの資本主義のあり方」に課題感を抱くようになったきっかけはどこにあったのだろう。
前職時代、シンガポールに住んでいたのですが、周辺国の様々な事情に触れる機会があり、社会の歪みに対して課題感を持つようになりました。例えばフィリピン、マニラの企業に営業をしに行った時のことですが、きらびやかな高層ビルのすぐ隣に、貧困地域、スラムが広がっていたりもして。その光景にすごく驚きました。どうすれば、
こういった歪みを解決できるのか。もっと勉強したい、社会課題を解決する事業を構想したいと考え、前職退職後、イギリスに1年間留学することにしました。まさにイギリス、ロンドンの社会問題についても調査したのですが、そこで目の当たりにしたのが、問題が複雑に絡み合い、歴史的な時間軸も含め、連鎖している現状でした。
例えば日本人のイメージからするとロンドンは美しく、華やかな印象がありますが、川を渡ると全く異なる景色が広がっています。様々な国々の人々が、それぞれの歴史、事情を抱え、コミュニティを形成している。言語、宗教、考え方、価値観が異なり、収入格差も大きい。買い物をするスーパーマーケット一つとってもグローバルに展開するチェーン店と、地元スーパーでは品揃えが全く違うわけです。低所得層が住む地域では、安価で高カロリーな商品しか並んでいない。子どもの頃からそれらを食べて育つので健康に悪影響を与え、早く亡くなるリスクも当然高くなるわけです。すると、医療費がかさみ、社会全体の負担になっていく。同じ都市圏の中にも、こうした歪みが構造的に発生していることを目の当たりにしました。
それまでも、「価値判断システム」によって生み出される、さまざまな格差、歪みに課題感はありましたが、改めて前職や留学経験を通じ、それらを事業で解決したいと思うようになって。どうすれば「幸せになる仕組み」を作れるか。そのためには産業レベル、企業レベル、個人レベル、全てでアプローチしていく必要がある。これが今のサステナブル・ラボでの事業にたどり着いた理由でもあります。
「テクノロジーを使った事業で、社会課題に取り組みたい」とMBA取得と起業のために1年間、イギリスに留学していた高橋さん。当初は自身で事業の立ち上げを考えていたという。ただ、その中でサステナブル・ラボCEOの平瀬さんと偶然の出会いを果たす。
まだイギリスにいた頃ではあるのですが、資金調達など含め、自分でも事業立ち上げの準備をしていて。たまたまロンドンから一時帰国していたタイミングで出会ったのが、代表の平瀬でした。1時間ほど対面で、意見を交わすなか、作りたい世界に強く共感をしましたし、何よりもビジョンが非常に似ているとわかった。こんなにもぴったりのタイミングで出会えたことにも不思議なご縁のようなものを感じ、サステナブル・ラボに入ることを決めました。
こうして2021年8月にサステナブル・ラボのCOOとして入社をした高橋さん。入社後に手掛けたのは、プロダクトの「0→1」だったと振り返る。
当時、平瀬のなかに「非財務情報を可視化する」といったコンセプトはあったものの、プロダクトとしてはまだ存在していない状態でした。ただ、そのコンセプトを、より多くの人に提供する手段としてプロダクトをつくる。。これが入社後にまず取り組んだことでした。
今でも覚えているのが、入社してからの1週間。「世界で認められる企業になりたい」とは言うものの、当時、日本語のサイトしかなかったんですよね(笑)なので、自分で英語版のサイトを作ったり、とにかく手を動かしまくったことを今でも覚えています。
データサイエンスの力を活用し、今の資本主義をアップデートする。そのための仕組みを作る。プロダクトを作る。仲間を集める。資金調達に動く。ミッション、ビジョンを具現化するために何でもやる。スタートアップのCOOとして、仲間と共にできることは何でも取り組んできました。
そして生まれたのが、国内最大級の非財務データプラットフォーム「TERRAST」だ。そこには前職での経験も活きているようだ。
前職時代、国内外のさまざまなお客様と接するなか、業界・企業の調査・分析には大きな課題があると肌で感じていました。あらゆる調査・分析のプロセスには「情報は存在するものの、散在している」「収集、整理に工数が掛かる」「活かせるようにする情報の編集・加工が必要」といったことが発生していました。「財務情報」においては、それらを解決するプラットフォームが存在しますが、「非財務情報」領域でも、その考え方、アプローチは活かせるはず。むしろ「非財務情報」のほうが調査・分析プロセスが定型化されておらず、非効率に行なわれているケースがほとんど。それを解決するために開発したのが「TERRAST」です。
そして入社2年、COOとしての役割も急激に変化しているという高橋さん。役割の変化と共に向き合っている現在の課題、そして展望について伺った。
組織の成長に伴い、COOとしての役割も変わってきたところですね。例えば、異なる付加価値、ビジネスモデルを持つ新たなプロダクトの展開、資金調達に向けた動き、さらに深いマーケットフィットのために顧客の解像度を高めるリサーチ、海外を含めた市場選定にも注力しています。特にESG市場において求められるのは、非連続的な成長。欧州がルールメイキングの先導をしているなか、常に動向を注視し、いくつかのトライアルを同時並行で行っています。
また、組織も30人を超える規模に成長し、マネジメントにも注力しています。今年も、さらに事業を加速させていく勝負の年。どのような人材を採用し、誰に何を期待し、任せていくか。全てを自ら実行するのではなく、組織を構築し、権限を移譲していけるか。今後グローバル展開していく上でも、いかに迅速かつ、効果的な打ち手につなげられるか。ビジネス全体の視点を持ちながら意思決定を行い、柔軟に役割を変化させ、全方位的に事業を進めていく。そういった挑戦をしていきたいと思います。
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非財務データ集団「サステナブル・ラボ 」COOが抱く志
取材 / 文 = 白石勝也
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