登録事業所数が10万件を突破したクラウド会計ソフトfreeeで、ユーザーサポートを手掛ける中島伸吾氏へのインタビュー。「神対応を目指す」という彼の言葉に、ウェブサービスの裏側を支える仕事の本質を垣間見ることができた。
スモールビジネス向けのクラウド会計ソフト freeeが快進撃を続けている。サービスローンチ以降、順調に登録事業所数を増やし、1年4ヶ月で10万件を突破した。
この躍進を支えているのは、エンジニア・デザイナーの開発陣だけではない。
今回お話を伺ったのは、freeeのユーザーサポートチームを率いる中島伸吾氏。マイクロソフト、グーグルのユーザーサポートを経てfreeeにジョインした彼は、急増するユーザーにきめ細やかなサポートを提供してきている。
「神対応と呼ばれるユーザーサポートを実現したい」と語る彼から、ウェブサービスを裏で支える「ユーザーサポート」という役割にフォーカスを当てて考えてみたい。
[プロフィール]
中島伸吾 Shingo Nakajima
大学在学中から、日本マイクロソフトのテクニカルサポート業務に携わる。グーグル日本法人ではGoogleストリートビュー等に関するユーザーサポートチームの立ち上げ、マネジメントを経験。2014年1月からfreeeにクラウドバックオフィスコンサルタントとしてジョイン。
― 中島さんのように、ユーザーサポートのプロがスタートアップに入るケースは珍しいですよね。
前職で同僚だったCEOの佐々木が「クラウド会計ソフトのユーザーサポートをリードできる人材を探している」という噂を聞いて、興味をもったんです。これまでマイクロソフトとグーグル、あわせて10年近くユーザーサポートなどの業務に携わってきて、そろそろ新しいチャレンジを考えているところでした。オフィスに遊びにいって話を聞いたら、もう半分入社が決まっちゃうような、スタートアップならではのスピード感でしたね。
― ジョインされた1月は、確定申告の時期ですよね。会計サービスのユーザーサポートだと、かなり大変な時期だったのでは?
仰るとおり(笑)。入社してすぐ、問い合わせ数がピークとなる波が来たので乗り切ることに必死でした。freeeの主なユーザーであるスモールビジネスを手がける事業主の方だったりフリーランスの方は当然、会計に詳しいわけではありません。単に「サービスとしてココが使いづらい、分からない」というものだけでなく「専門用語や処理方法」についてのケアにも力を入れています。
freeeは「スモールビジネスを営む方が創造的な活動にフォーカスできるよう、バックオフィスの業務をテクノロジーで自動化することを通じて、スモールビジネスの活性化に貢献し、イノベーションを促進する。」という理念を掲げています。
この理念を実現するには、いかにユーザーにfreeeを快適に使ってもらうかが鍵となる。そのために、ユーザーからのフィードバックを開発チームに素早く伝えたり、ユーザーサポートの観点から改善提案していくことなど、非常にやりがいを感じられますね。
― 複数のWEB・IT企業でユーザーサポートを担ってきた中島さんですが、freeeのサポート業務で意識していることってありますか?
プロダクトのイメージに合ったユーザーサポートをすることでしょうか。ユーザーサポートのやり方や態度って企業やサービスによってほんとに様々なんです。僕がいいなと思っているのが、「プロダクトとユーザーサポートの"印象”や"カラー”が同じ」だということ。
会計ソフトと言えば、パッケージ化された、少し堅いイメージを持っている方が多いかと思います。けど、freeeは全く違うんですね。これまでの会計ソフトとは全く違うクールで驚きのある体験をユーザーサポートでも実現していきたいと思っています。
― どんなことでそれを実現していこうと?
例えば、ツールの活用ですね。最新の…というわけではありませんが、いま力を入れているのはチャットです。freeeではZopim(ゾピム)を利用しています。営業時間であれば、いつでも直接問い合わせられますし、サポート側も逐一ユーザーの行動をみてこちらからアプローチしてより快適にサービスを使って頂けるよう心がけています。
サポートチームが目指している姿ってユーザーに「freeeに問い合わせると楽しい」って思って頂ける体験なんです。一言で言うと「神対応」って言ってもらえるような。
― Appleや任天堂、ディズニーランドなどが、プロダクトやサービスだけでなく、サポートや心遣いで高い評価を得て熱心なファンを獲得している話を思い出します。
まさにその姿かもしれません。freeeはプロダクト、サポートともにまだまだ改善できる課題が多いのでやりがいがありますね。
― ユーザーサポートに向いている人、求められるマインドセットはどんなものだと思いますか?
割りと深く考え過ぎない、素直な人かな。
ユーザーサポートは定型化された問いにだけ、答えればいいわけではありません。ある意味、マニュアル通りじゃない人、ユーザーの声を聞いて、自ら答えを見いだせる人が力を発揮できる役割だと思います。
― 普段、あまり耳に入ってこないユーザーサポートという仕事のやりがいなど、非常に貴重なお話を伺えました!Googleの予測変換(検索)で、「freee 神対応」と出る日も近いかもしれませんね!ありがとうございました。
[取材・文] 松尾彰大
編集 = 松尾彰大
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