グリーのインターン学生が挑んだのは、中途半端さは一切ない超実践型ゲーム開発プロジェクト。グリーに蓄積されているノウハウをふんだんに活用しながら新感覚ブロック崩しゲーム《BRICKCRASH!!》を開発したインターン学生たちに話を聞いた。
2016年春、グリーへの入社を予定している内定者が挑んだのは、3ヶ月でゲームアプリを企画開発するという開発手法《Garage》。11月24日にアプリストアに公開された《BRICKCRASH!!》という新感覚のブロック崩しゲームを開発した。《iOS/Android》
開発現場のメンバーたちが自主企画を元にゲームをイチから開発していくGarage。「少人数×短期開発」をテーマにネイティブゲームアプリを次々に生み出し、これまで計36本をリリース。総DLは800万を超え、世界170ヶ国でフィーチャーを獲得している。
つまり、超実践型ゲーム開発プロジェクトにアプリの開発経験もほとんどない学生チームが参加したということになるのだろうか。参加したインターン生はプロジェクトマネージャー、2人のエンジニア、そしてアートを担当するデザイナーの計4人。
学生インターンに社員と同等の実践の場を設ける企業が増えてきているWEB・IT業界。彼らへのインタビューを通して見えてきた、超実践型インターンが生み出す価値とは。
このプロジェクトがスタートしたのは6月中旬。基本的に2週間1セットのスプリントを6つ+リリース対応期間の2週間というスケジュールで実施された。学生には各職種にメンターが付き週2回の対面レビュー、その他グリー社内で共有されているデータや資料の閲覧にもほとんど制限がかけられなかったという。
「ゲームの開発自体はまったく経験がない状態でのスタートでした。ゲーム作りのフローや開発手法などに関しては、先輩たちから吸収する機会を存分に頂けました。最初は3日間でモックを作成、見せてやり直しというスクラップ&ビルドを続け、現在のコンセプトと形を固めていきました」(プロジェクトマネージャー シュウワさん)
「グリーは職種別ではなく、チーム別の組織になっています。自分たちの座席のすぐとなりにヒットタイトルの開発チームがいて、すぐに相談できる環境が整っていました。iOS/Androidの両プラットフォームでのリリースを前提として、主にUnityを使ってフルスクラッチで開発を進めました」(エンジニア ショウタさん、シンタロウさん)
「0→1の創造をやりきった人材を育成する」というGarageの思想はあらゆる面で垣間見えた。メンターがついていたとはいえ、実装を行なったのは全てインターン生。「PCでゲームに関わるデザインを行なうのも初めてだった」と語るデザイナーは、もともと日本画を専攻している学生だ。
「一般的に、アートの職種は特に分業化が進んでいると言われていますが、今回私一人で少なくとも5職種分の業務内容を1人で経験する事ができました。エンジニアもマネージャーも1人があらゆる業務を兼務しながら、4人という最少人数で開発を進めていきました」(デザイナー マナミさん)
ゲームアプリを開発するにあたり、根幹をなすゲームシステムやレベルデザイン、ビジュアル面、UI、安定的な運用が可能なインフラなど、メンバーには高いレベルのスキルとノウハウが求められる。ひとつのアプリを開発しきることで、メンバー各々が貴重な経験を得ていた。
新感覚のブロック崩しゲーム「BRICKCRASH!!」は、画面をなぞることで現れるジャンプ台を使って、ブロックを壊しながらステージを進んでいくシンプルなカジュアルゲームだ。ブロックには様々な性質があり、時には避けたり、時には活用して攻略していく。キャラクターのコスチューム(装備)にも特性があり、コースの種類に合わせて選択することで、より高いスコアを目指すことができる。
「BRICKCRASH!!はスキマ時間に遊んでもらえるカジュアルゲームとして企画したものです。ジャンプゲームを軸にプロトタイプを練って、ブロックを突き抜けることで爽快感を出す形になりました」(プロジェクトマネージャー シュウワさん)
「サイバー感とちょっと女の子っぽい感をベースにデザインを進めました。でも、開発初期はビジュアルのイメージを積み上げていくことがとてもとても大変でしたね(笑)。いくつも案出しを行ない、いいピースが集まってきたタイミングではじめて手応えを感じ、1ヶ月程かけて仕上げていきました」(デザイナー マナミさん)
近年、ネイティブゲームアプリの開発規模は増大しており、開発期間は1年以上、関わるメンバーは20人を超えるケースが多いという。そんな中、3ヶ月という短い期間でゼロからゲームアプリを最少人数で開発するGarageの経験は大きな財産となるのではないか。
「自分たちがゼロから創ったプロダクトが、『グリー』という会社からリリースされる経験はかなり貴重だと思います。入社したらどの配属になるかわかりませんが、比較的大きなゲームタイトルになると開発チームの一員として働くこともあると思います。ゼロから開発したことで、新しい言語、運用や保守と言った領域への興味が湧きました」(エンジニア ショウタさん)
「インターンという立場でしたが、趣味や遊びと言った枠ではなく、プロ意識を持って開発に取り組めたのはとても刺激的でした。プロダクト一つに対して責任を持てるエンジニアになりたいので、もっと引き出しを増やしていきたいです」(エンジニア シンタロウさん)
「デザイン、アートの領域の中でも、自分の課題ややりたいことが見つけられたのがよかったです。得意だと思ってたことをやってみると向いていなかったり、あまり興味がなかった領域に楽しさを感じたり。インターンという期間で、一度すべての工程に携わったからこそ得られたものは非常に多かったと思います」(デザイナー マナミさん)
Garageは単なる「パフォーマンス」にとどまらず、サポート環境を十分に整えながら、インターン生の自主性の発揮と成長を促した。インターン生も学業をおろそかにすることなく、限られた時間の中でメンターとコミュニケーションを取りフィードバックを得て、高い完成度のゲームアプリ開発をやり遂げ、自信を得たようだった。
インタビューから、Garageは「中途半端さは一切ない本気のプロジェクト」だと感じた。インターンはともすれば、単なるアルバイトにもなりかねないもの。だが現場メンバーの理解と協力、そしてインターン生の自主性を導く仕組みが整えば、入社前の絶好の成長の場となる。
インターン文化が根付き始めた国内のWEB・IT業界の中でも様々なノウハウや取り組みが共有されれば、若手人材や学生が活躍する場も一層広がるかもしれない。
文 = 松尾彰大
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