2016.06.01
宇宙ゴミ除去衛星打ち上げを目指す!批判をバネにしてきたアストロスケール 伊藤美樹の挑戦

宇宙ゴミ除去衛星打ち上げを目指す!批判をバネにしてきたアストロスケール 伊藤美樹の挑戦

宇宙ベンチャー アストロスケールで日本法人社長兼エンジニアとして活躍する伊藤さん。学生時代から、宇宙という一見かけ離れた分野への挑戦を続けるなかで、批判的な意見を受けることもあったという。それでも前に進んでこれたのはなぜか?彼女が、将来のイノベーターへ贈るメッセージをお届けしたい。

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アストロスケールの女性経営者から若きイノベーターたちへ。

「Slush Asia 2016」の2日目。CAREER HACK編集部がインタビューしたのは、アストロスケールの伊藤美樹さん。アストロスケールとは、スペースデブリ(宇宙ゴミ)除去衛星打ち上げの計画を進めている宇宙ベンチャー企業。伊藤さんは、日本法人の代表兼エンジニアを務めている。

アストロスケールWEBサイト

ASTROSCALEのWEBサイトより


映画『インデペンデンス・デイ』をキッカケに宇宙に興味を抱くようになった伊藤さん。エンジニアという職種との出会いをこう話してくれた。

宇宙飛行士への憧れはありました。でも、宇宙飛行士になるにはいろいろな条件がある。私は左耳があまり聞こえなかったので、最初から諦めていたんです。でも、宇宙に携わる仕事って何も宇宙飛行士だけじゃないんですよね。宇宙飛行士がトラブらないように技術で支えるエンジニアの情熱や考え方に胸を打たれてエンジニアを目指すようになりました。エンジニアという職業の存在は、大学へ入学するまで知らなかったんですけどね(笑)。

エンジニアとして「宇宙」という壮大で人類にとって未知の領域へ挑む彼女。ときには批判的な意見を受けたこともあったというが、くじけることなく、むしろ払いのけることで自らの道を切り開いてきた。彼女が、これからイノベーションを起こしていく次の世代へ贈るメッセージとは?


<Profile>
株式会社アストロスケール 代表取締役社長
伊藤 美樹 Miki Ito

中学時代に『インデペンデンス・デイ』を観て宇宙に興味を抱く。その後、大学で航空宇宙工学を専攻。大学院修了後、内閣府の最先端研究支援開発プログラム『FIRST』で人工衛星開発に携わる。アストロスケールの日本法人開設のタイミングでジョイン。現在は代表取締役社長兼エンジニアとして活躍している。

宇宙の世界は正直怖い。でも、だからこそおもしろい。

― さっそくなんですけど、”宇宙”という足を踏み入れたことのない世界で自分がつくったものを飛ばすというのはどういう気持ちなんですか?


正直怖いし、本当に動くのか信じられない気持ちですね。目に見えない世界なので。しかも何が起こるかわからないわけです。確実に動くとは言い切れない。だからこそ、あらゆる非常事態を想定して、機能を組み込んだり、システムを検討したりすることにおもしろさがあるのかもしれません。


― 宇宙ベンチャーってまさにイノベーションの最たる例だと思うんです。10年前は宇宙ベンチャーなんて夢物語だったという話もありますが、逆に10年後の宇宙ベンチャーはどうなると思いますか?


もっとベンチャーが出てきてほしいですね。単に「つくる」だけじゃなくて、宇宙からデータをもらって、ビジネスサービスに活用するようなところが出てきたらおもしろいと思います。

宇宙と一般社会とのつながりって、まだまだ薄い気がしているんです。それは、宇宙と一般社会の間の“つなぎ役”がいないからだと思っていて。アストロスケールがその“つなぎ役”になって、ITだけに限らず多岐の分野にわたって支援していけたらいいな、と思います。

批判的な意見にも向き合い、乗り越えていく。

アストロスケール伊藤美樹さん

― 伊藤さんのように未知の領域、新しい世界で戦っていくために、身につけておくべき考え方があるとしたら何だと思いますか?


たぶん、いろいろやっていると「そんなのムリだよ」的な意見を耳にすることもあると思うんです。批判的な意見というか。そういうときに大事なのが、自分の信念を貫くよりもバランス感覚だと思うんですよね。


― バランス感覚というと?


批判的な意見をもらうとイラっとしますよね。でも、「知ったことか」で片付けるのではなく、きちんと意見を受け止めつつ、はねのけることが大事だと思うんです。「もっといいものにしていこう」という強い気持ちですね。私自身の生き方の礎になっている部分だと思っています。


― ありがとうございます。最後に伊藤さんの夢を教えてください。


今の時代、クルマって当たり前に使われるじゃないですか。でも、100年前はものすごく貴重なモノだった。だから、衛星もそういうふうにしたいと思っています。衛星を、クルマのようにみんなが当たり前に使うモノにしたい。これが私の夢です。


― お話をうかがって、宇宙との距離が少し縮まったような感覚になりました。さらなる挑戦を応援しています。ありがとうございました!


文 = CAREER HACK


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