2017.02.03
なぜ、海外のIT企業は再びコンテンツマーケティングを強化する?そして有望な職種とは。大熊将八《寄稿》

なぜ、海外のIT企業は再びコンテンツマーケティングを強化する?そして有望な職種とは。大熊将八《寄稿》

Google、Facebook、Uber、Airbnb…世界のIT企業が採用を強化している職種とは?リサーチで見えてきたのは、コンテンツマーケティングを再び強化する流れ。海外メディア事情に精通する現役東大生が「海外IT企業のオープンポジション」からこれからの職種を読み解く!

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[寄稿者プロフィール]大熊 将八
1992年生まれ。東京大学経済学部在学中。海外におけるメディア業界における動向調査・取材のためにクラウドファンディングで企画、約100万円の資金調達。米国東海岸への三ヶ月間の取材を敢行。現地取材の様子は現代ビジネス、東洋経済オンラインなどで連載。「リアルUTBD」を開設し、就活生のキャリア相談なども実施。特技は競技ダンス(元学生日本一という実績を持つ)。著書には『進め!! 東大ブラック企業探偵団』 がある。

今、世界のビジネスパーソンが働きたい企業とは?

ビジネスSNS大手のLinkedIn社が発表している「Top Attractors」には世界中のビジネスパーソンが今働きたい企業がランキング形式で掲載されている。

これを見れば、いろいろと面白いことがわかる。

まず、マッキンゼーなどのコンサルティングファームやゴールドマンサックスなどの金融機関を押しのけてトップ10を独占しているのは、今をときめくIT企業ばかりだ。

Linkedin

(https://lists.linkedin.com/2016/top-attractors/en/us より筆者作成/2017年2月2日)


もちろん、LinkedInとIT業界における親和性の高さもあるだろう。同時にLinkedInのユーザー数は4.67億人(統計ポータル「Statista」)。ビジネスSNSをリードするLinkedInでのトップ10であり、人気の求人企業であることに疑いはない。

興味深いのはエンジニアの大量解雇が最近伝えられたTwitter社が上位にランクインしていたり、LinkedIn自体はランクインしていないこと(ちなみに11位はNetflixである)。

この中でも会社設立10年以内なのは、ともに「シェアリングエコノミー」を代表する、AirbnbとUberの2社だ。

それでは、これらのIT企業はどういったポジションを募集しているのだろうか?

Teslaを除く全ての企業で、募集職種で一番多いのはコードが書けるプログラマであった。

その次にくるのが営業やリサーチャーのポジション。ここまでは納得の並びだが、筆者が注目するユニークな募集ポジションもある。それがPRだ。追って具体的に見ていこう。

Instagramを強化するFacebook。重要な役割を果たす職種とは?

まず気になる動きとして2017年2月2日段階でFacebook(US)が公開している下記の求人だ。

・Creative Strategist, Facebook & Instagram(2017年2月2日/公開中)
・Head of Instagram Business Marketing(2017年2月2日/公開中)


Oculus関連におけるCommunity Manager募集(2017年2月2日/公開中)などと並んでInstagramの強化が伺えた。クリエイティブストラテジスト、そしてプロダクトマーケティングマネージャーの募集。
求人概要によれば、それぞれ「ストーリーテリングの能力」や、デジタルキャンペーン、オフラインプロモーション、Webセミナー、イベントなど「マーケティング」のスキルが問われている。

さらに日本のFacebookでも「Community Editor, Japan, Instagram」といったポジションの募集も行われている(2017年2月2日現在)

Facebook Careers

Facebook Careersより(2017年2月2日公開中)


注目すべきは広義のコンテンツマーケティング・編集などのスキルが重視されていること。

(ここでのコンテンツマーケティングは記事やイベント、動画などのコンテンツの制作・発信を通してユーザーの注意を獲得し、エンゲージメントを生むという手法を指す)

コンテンツマーケティング支援『curata』における米国リサーチ記事によれば、コンテンツマーケティングは年率2桁の拡大を続けている成長市場に位置づけられる。

一時は落ち着いたと思われたコンテンツマーケティングだが、2017年には過半数の企業がコンテンツマーケティングに関する専門家のポジションを用意する動きが予測されているのだ。

アメリカのPR関連職につく人材の年収推移

シェアリング・エコノミーのもう1つの代表格・Airbnbも、早くからコンテンツマーケティングの重要性に気づき、ホストの家を紹介する記事や旅行・外出そのものを喚起するような記事コンテンツを自社発で多数打ち出してきた。

コンテンツマーケティングは広義でPRに括られることが多い。そこで海外におけるPR関連の職につく人材の年収推移を調べてみた。

スタートアップに限らず、大小様々な企業においてPRの需要が高まり、それに応じてPR人材の年収も上昇している。なんと、PR業界の平均給与は2004年から2014年までの10年間で1.4倍になったというから驚きだ。

ユーザーとの接点を持ち、ファンになってもらうために、戦略的PRの重要性がどんどん増しているといえそうだ。一方で、記者・特派員の年収は減少傾向にあるのも象徴的だ(後述)。

Bureau of Labor Statistics

(出典:Bureau of Labor Statisticsより、グラフ筆者作成)


それでは、どういった人材がPR職に求められているのだろうか。

その例として、ここ数年、海外でも記者・編集者の経験を持つ者がPRの世界へと足を踏み入れている。PRはテレビ・雑誌・新聞・ネットなどさまざまなメディアとの関係を構築し、調整を図りながらプロジェクトを進行していく。メディア業界での経験や人脈を活かすことができるというわけだ。

また、コンテンツマーケティングにおいては多くのユーザーに親しまれるような記事・動画などのコンテンツの制作を担うことになるが、ジャーナリストの能力に重なる部分もある。

企業や製品を、宣伝のために好意的に伝えるコンテンツを作るマーケターと、あくまで企業から独立した立場で時には批判的に表現するジャーナリストでは、マインドセットでは真逆だが、スキルセットとして実は近しい。

そして、日本でも起きつつあることだが、米国においてはジャーナリストをはじめ、記者・特派員職はどんどん「食っていけない職業」になっている。

前掲のグラフでは、PR職に何倍も差をつけられ、記者・特派員職の収入が10年前から激減しているのが見て取れる。そして、米国におけるニュースエディター(新聞をはじめとする紙媒体における記者・特派員職)の数は、15年前の6割程度にまで減ってしまった。急速なネットメディアの興隆によって、紙のメディアの収入がどんどん落ち込み、既存の大手メディアでレイオフが相次いだためだ。

Pew Research Center

(出典:Pew Research Centerよりグラフ筆者作成)


一方のネットメディアは少人数で運営されるところが多く、既存メディアの人材の受け皿にはなりきれていないのが現状だ。

米国のキャリア情報サイト「CAREERCAST」が毎年発表している有望な職業のランキングにおいては、2015年と2016年で連続して新聞記者は最下位となっているほどだ。

ニューヨーク取材で垣間見たメディア界隈の実情

実際、筆者は2015年の2月から5月にかけてアメリカのメディア業界の現状を探るベくニューヨークに滞在して取材活動を行ったのだが、ジャーナリスト達が集まる懇親会に参加し、その実情を垣間見た。聞こえてきたのは、

「最近Wall Street Journalをやめることになって職探しにきた」
「翻訳の仕事をメインにしながらなんとか副業でジャーナリストをしている」

こういった大変厳しい声だ。

そんな彼らが頻繁に利用しているというのが「Contently」というマッチングサイト。これは、フリーの記者やカメラマン、イラストレーターなどのコンテンツの作り手と、コンテンツマーケティングの担い手を探す企業とを繋げるサービスだ。

2010年にできたこのサービスは、2015年には既にニューヨークだけで5万人以上のフリーランスの登録者を抱えるに至っていた。落ち込みが激しく求職者が続出するジャーナリズム業界と、積極的に人材を探しているコンテンツマーケティング業界をうまく橋渡しする存在だ。今後もこの傾向が続く限り、同サービスの重要性は高まると考えられる。

Contently

ContentlyのHPトップより)


冒頭のランキングには入っていないが、2017年中に大型のIPOが期待されているSnapchatも、メディア対応に力を入れているスタートアップの1つだ。

CNNやWall Street Journalなどのメディアと提携して、同アプリ内でオリジナルのニュース動画を配信する仕組みであるDiscoverという機能を2015年から強化してきた。

このサービスに関連して、ニュース部門のトップを務めているのも、もともとCNNで敏腕記者としての名声を築いたPeter Hambyという人物である。

衰退激しいジャーナリズム業界から成長まっさかりの業界への転身という事例は、参考にできる。少し視点を変えるだけで、自分のスキルが活かせて需要のある他業種が見つかることもある。その可能性は今後も広がっていくはずだ。


文 = 大熊将八
編集 = CAREER HACK


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