Google Playベストデザインアプリに選ばれた《Relux》。アプリストアのレビュー平均点は「4.3」と高評価を獲得する。この結果は偶然ではなく、狙いがハマった結果だという。デザイナーの唐橋健二氏とエンジニアの赤池勇人氏が登壇し、高評価を得るアプリ開発の裏側を明かした。
※Google Playの『ベスト オブ 2016』 に選出された企業が集結したイベント『App Talk Night』の内容をお届けします。[登壇:Loco Partners(Relux)、AWA、Fablic(FRIL)、NewsPicks、VASILY(iQON)]
一流旅館・ホテルのみを厳選した宿泊予約サービス「Relux」。同サービスは2年連続でGoogleのベストアプリを受賞しており、ユーザーから高評価を得ている。App StoreとGoogle Playのレビューの平均点は4.3(1月24日時点)を記録した。
これだけの評価を得ている要因について、運営元である株式会社 Loco Partnersのデザイナー 唐橋健二氏は、「Reluxのデザインコンセプトとユーザーニーズが一致しているため」と分析する。
「Reluxという統一ブランドにおいてもユーザーとの接点、そのアプローチはさまざま。PCやスマホ、他にはキャンペーンや紙のポスター、広告、ギフトチケットだったり、そしてReluxのバナー広告、ロゴのシールなど、いろんなデザインが存在します。その多種多様なデザインを表現し、ブラさないために、Reluxは3つのデザインコンセプトを定めました」(唐橋氏)
1. 統一性
多種多様なコンタクトポイントがあるなか、トーン&マナーがバラバラでは世界観を築き上げることはできない。そのためReluxはトーン&マナーを明確にするため、Reluxにふさわしい属性、ターゲットの設定をしたという。
例えば、カラースキームやフォント、写真の使い方、余白などビジュアルはもちろんのこと、Reluxが放つ言葉遣いにも統一性を持たせた。そうすることで、さまざまなデバイスで訪れても、Reluxというひとつの世界観を体験できるようになっている。
2. 引き算
Reluxは新機能の実装において、“1つ足したら1つマイナスにする”引き算という考えを徹底している。
「ユーザーは、年に数回しかReluxを使わない。そのため、本当にその機能は必要なのか。きちんと機能を検討して実装しています」(唐橋氏)
たとえば、エリア検索を追加するタスクを実行した際は、施設のピックアップという大きな機能を削除し、エリア検索を追加することにしたそうだ。このように機能を増やしすぎないことが、ユーザーの使いやすさにつながっているのかもしれない。
3. 体験
Reluxは宿泊予約サービス。「サイトを訪れた瞬間から旅は始まっている」と考えてサービスを運営する。面倒に思われがちな旅探しを、楽しい体験に変えるべく、デザインやアニメーションなど、体験を重視したものにしている。
このコンセプトを徹底してデザインを行っていった結果、ユーザーから高評価を獲得。いろんな感想がレビューとして届いたという。
「一番多かった感想が、『シンプルなデザインですね』というものです。広告もない、コンテンツもない、ただ施設を探すことに特化しているトップページ。これが「シンプル」と言っていただける理由かと思いました。
通常の宿泊予約サイトは、最近見た宿やオススメの宿、近隣の宿などいろんな情報が載っているのですが、Reluxはシンプルに施設を探すことに特化しているのが良かったのかもしれません」(唐橋氏)
他には、「眺めているだけで楽しいアプリです」、「使いやすいです」といった感想が多かったそうだ。
デザインコンセプトを明確にし、ユーザー目線に立って何度も細かく修正を繰り返していく。この地道な努力の積み重ねが、ユーザーから高評価を得るための第一歩なのかもしれない。
つづいて、Reluxのエンジニア 赤池勇人氏。「これまでの高評価を獲得できた要因は3つある」と語った。
「2016年末のGoogle Playベストアプリのカンファレンスでのこと。「ベストアプリをとるためにはどうしたらいいですか?」と質問されている方がいました。その質問に対してGoogleの方が答えていた内容が3つあるんですよね。自分たちが作り上げたものではなくて、それを参考にして、ちゃんと実践してきました(赤池氏)」
具体的にReluxが行なった3つのことをご紹介する。一見あたりまえの内容にも見えるが、徹底できているか、実践を怠っていないか。ぜひチェックしてみてほしい。
1. Googleのガイドラインに準拠していること
これはMaterial Designのガイドラインに準拠することが全てだという。ReluxのAndroidアプリはドロワーのアイコンにGoogleのMaterial Designのサイトからダウンロードしてきたものを色を変えて使用するなど、ガイドラインに準拠することを徹底している。
「弊社のアプリもは最初、iOSライクなAndroidアプリだったんですけど、どんどんAndroidユーザーに適したものに変えていきました。まだ対応できていない部分も多いのですが、色の使い方など、あえてガイドラインから外しているところ以外は、基本的にガイドラインに準拠しています」(赤池氏)
2. 競合アプリと比べてイノベーションがあること
ネイティブアプリ全盛の時代、競合アプリと比べてイノベーティブであることを維持するのは難しい。Reluxの競争優位性はどこにあるのか?赤池氏によると、開発体制が差別化要因につながっているという。
「弊社はSlack上での議論とスピーディな意思決定がとてもユニークだと思っています。これだけSlackを使い倒している会社ないんじゃないか、というくらい、Slack上で何でも議論し、ものの数分で意思決定されることもあります。もちろん、会話が流れてしまうといったデメリットもありますが、スピード面ではかなりの威力を発揮していますね」(赤池氏)
他にもユニークな取り組みとして、他社アプリの事例共有会を開催している。アプリのエンジニアとプロダクト側の人間が行う隔週のミーティングの冒頭で、それぞれが普段使っているアプリを持ち寄り、研究を重ねている。
また、数値で計測しづらいUI/UXも大事にする風土を築いてきたという気持ちいい、楽しいとか、カッコいいといった感情をデザインに取り入れていく。こうしたことがプロダクトの競争優位性につながっているのだろう。
3. ユーザーから価値を認められていること
最後にとても大切な考え方が共有された。それはユーザーから価値を認められることが第一である、ということ。
Reluxではユーザーが見たいものをとにかくシンプルに表示することを心がけているという。例えば、ホテルや旅館の写真、紹介文が十分伝わるようなインターフェース、機能の設計にしているそうだ。
「ユーザーが普段あまり使わないような機能は、最初は隠しておく。あとは、ユーザーの手間を削減し、ストレスなく使えるようにバックエンドやAPIも含めて改善に努めています」(赤池氏)
この3つの要素がGoogle Playのベストアプリを獲得するためには欠かせない。当たり前のことを当たり前のようにやっていく。これを継続していくことがベストアプリへの近道かもしれない。
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