2018.05.09
マーケティング担当者必見、シリコンバレー流のユーザー調査|高橋クロエ

マーケティング担当者必見、シリコンバレー流のユーザー調査|高橋クロエ

シリコンバレーを拠点に活躍する日本人、高橋クロエさん。海外に進出したい日本化粧品メーカーからリサーチやマーケティングを請け負う。今回彼女に聞いたのは、SNSを活用したシリコンバレー流の市場調査について。マーケティング担当者自らが「コミュニティ運営者になる」という驚きの方法だった―。

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はじめに | 高橋クロエとは何者?

アメリカでは、どのような市場調査が行われているのか。特にシリコンバレー流の市場調査方法に明るい高橋クロエさんを取材した。

彼女は、2014年にY Combinator(米国で最も注目されるスタートアップアクセラレータ/ベンチャーキャピタル)から生まれたプログラミングブートキャンプ「Make School」に初の日本人として参加。

卒業後、カナダでフリーランスデザイナーとして活躍。スタートアップの日米ローカライズを支援してきた。

2018年現在、日本コスメの情報プラットフォーム『Cosme Hunt』を運営しながら、日本国内大手化粧品メーカーのコンサルティングを担っている。

日本国内ではまだまだ「調査」にSNSを活用しているマーケティングの担当者は多くないかもしれない。特にtoCビジネス、そのユーザー調査に興味がある方は必見だ。

市場調査はコミュニティへのアクセスが鍵になる

SNSを活用して市場やユーザー調査をする―。ここで想像するのは、自社商品におけるターゲットユーザーたちのFacebookやInstagram、Twitterなどをウォッチするというもの。

ただ、クロエさんは「ウォッチするだけでは足りない」と語る。それは表層的なニーズやインサイトは把握できても、ピンポイントで自社商品における課題が把握できないからだ。

マーケティング担当者たちが行なうべきは、そのコミュニティに参加していくということ。そこで交わされる会話ややり取りからユーザーのインサイト/価値観を探っていく。

ただ、そもそも商品によってはコミュニティが存在していない、特定するのがむずかしい、自身と年齢や属性が異なり、コミュニティに参加できない…という問題もある。

そのような時、クロエさんが実践しているのが、自らコミュニティ運営を行なうというものだ。その方法はシンプル。具体的な実践法について見ていこう。

マーケティング担当者、自らコミュニティの主催者になるべし

Facebookグループをつくる

クロエさんがユーザー調査のために活用しているのが、「Facebookグループ」だ。国籍関係なく、日本コスメが好きなユーザーにコンタクトを取り、そのグループに参加をしてもらう。

同グループ内でのコミュニケーションからアメリカ市場における日本コスメ需要を探るというわけだ。

例えば、「今度日本に1週間の旅行に行くので、オススメの日本コスメや化粧品を教えてください」というアメリカ人ユーザーに対し、他のユーザーが回答をしている。

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ユニークなのは、コミュニティ上でQ&Aが頻繁に行われるということ。

アメリカで購入した商品の写真をアップ。「これってハンドソープですか?それとも洗顔フォーム?誰か教えて」など使用用途について質問が寄せられている。

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マーケティング担当者がコミュニティを持っている、その強みは計り知れない。

たとえば、モニターを募りサンプル品を試してもらう。ユーザーにも喜ばれ、コミュニティは活性化。ダイレクトな声が知れて、商品の改善にも活きる。

ここで1点疑問としては、なぜFacebookグループなのか。クロエさんはこう語る。

アメリカのミレニアル世代はFacebookのタイムラインにはほとんど投稿しません。ところがFacebookグループをアクティブに利用している人は多い。友人をタグ付けしてコミュニケーションしたり、趣味に関する情報収集やサークル活動を行なっています」

当然、Facebookのグループの活用度は、各国で差がある。だから自分がリーチしたいユーザーがどのプラットフォーム(SNS)にいるか、見極めないといけない。クロエさんは美容やコスメに興味がある人たちが集まるイベントなどに出向き、ヒアリングするなど、さまざまな試行錯誤して導き出した。


コミュニティを活性化させるべし

マーケティング担当者自らが「コミュニティ運営者になる」という有効性は感じられた。ただ、コミュニティを維持するのは、そう簡単ではない。気をつけるべきポイントはあるのだろうか。

「目的を調査におくのではなく、みんなのための“場づくり”をする。ここに尽きると思います。自分がそのコミュニティを大切にするんです」

コミュニティを活性化し、ユーザーが自然と投稿したくなる。その運営者に徹するということ。どうすれば、安心してコミュニケーションをしてくれるか。心得として「郷に入れば郷に従え」の観点も欠かせない。できるだけユーザーに近い距離感で投稿する。

「例えば、NYのミレニアル世代に絶大な人気を誇るコスメブランド『Glossier』は、すごく上手なやり方をしているので、すごく参考になると思います。具体的にはこのTweet。『金曜日はもう仕事なんかしてられない!』現代の忙しい女性たちの気持ちに寄り添っていて、消費者の心の中にひょいと潜り込んでくる感じが巧みですよね」

マーケティング担当者、自らが有識者としてのポジションを築く

高橋クロエ

クロエさん自身がユニークなのは、現在、アメリカ国内で「日本コスメの有識者」として知られているということ。「Allure」「Vogue」「Into the Gloss」など名だたる米国メディアからのオファーも少なくない。

それは、アメリカにおいて、日本のコスメを扱っている企業はまだまだ少なく、クロエさんが独自のポジションを得ているからといっていいだろう。では、どのようにしてこのポジションを築いたのか。

「アメリカの美容系メディアを20媒体ほどリサーチし、アジアコスメについて取り上げられている記事を数えてみると、韓国コスメがテーマの記事は90記事。一方、日本コスメは4記事しかなかった。日本のコスメを英語で発信できる人がいなかったんですよね。だから自らSNSで発信することを強化していきました」

SNSを活用するだけでなく、実際に会いに行くコミュニケーションも欠かせないとクロエさんは語る。

「世界最大の化粧ブランド「L'Oréal」で最高マーケティング執行役員を経て、投資家をされている女性に出会いました。アメリカで日本のスキンケアやコスメを広めたいと熱弁したところ、彼女はメンターになってくれたんです。アメリカ中の美容業界のコミュニティを紹介してくれました。現地にしっかりと根を張って、自ら足を動かして対面で想いを伝えることはとても重要です」

こうしてアメリカの美容系メディアとも太いパイプを持ち、関係構築をしていったという。その結果、アメリカのメディア、もっといえばアメリカの消費者たちが、日本コスメをどう捉えているか、クロエさんのもとには、現地でしか知りえない情報が集まってくる。これをプロダクトやコンサルティングに活かしているのだ。

グローバル化が前提となる時代、いかに自身のストロングポイントを見つけ、価値を発揮していくか。キャリアという観点からも、シリコンバレーで活躍するクロエさんのケースは参考になるはずだ。

D2Cモデルのコスメブランド「Glossier」をはじめ、アメリカでは「ビューティーテック(美容テック)」が盛り上がっている。シリコンバレーでも幾つものスタートアップが生まれ成長しているという。2018年度、日本でも「ビューティーテック」が注目されはじめるだろう。

cosme hunt日本化粧品の情報プラットフォームサービス『Cosme Hunt』。現在、北米で展開中。


文 = 大塚康平


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