高いカメラを友だちに1日だけ貸す…壊さないか心配…そんな時に便利なのが「ミニ保険」だ。海外では旅行先の悪天候にも保険がかけられるユニークなものも存在するという。同保険をアプリで提供する『justInCase』。狙いは若者たち。保険のイメージを変えられるか。手がけた畑加寿也さんにインタビュー!
みなさんは、保険にどんなイメージを持っているだろう?
加入に必要な本人確認の入力項目が多すぎる... 最終的に補償される内容も多くて覚えられない...など思う方もいるかもしれない。
これらの日本の生命保険にある課題が、SMS認証による本人確認や、データに基づく最適化されたプランのレコメンドなどによって解決されていく。
こういった保険におけるテクノロジーの活用は「インシュアテック」と呼ばれ、新しい領域として注目されつつある。インシュアテックは、insurance(保険) x Technology(技術) を組み合わせた造語だ。
日本で数少ないインシュアテックスタートアップ、justInCase社の畑 加寿也さんはこう語る。
「中国では、スマホ決済が進んでいるということもあって短期の保険のバリエーションが豊富にあります。必要なときに必要な保険に入って、もしものときは保険金がその場でスマホに入金されるんです。」
インシュアテックとは一体なんなのか、そしてこれからの保険で重要になってくる「ミニ保険(少額短期保険)」について畑さんに話を伺った。
まずは、彼らのサービスである『スマホ保険』を例に、保険でテクノロジーがどのように活用されるのか見ていこう。主な特徴は3つある。
1. 保険加入がスマートに
2. ユーザーのスコアに応じて保険料が変動
3. SNS感覚で友人のスコアがわかる
保険加入がスマホでスマートに
保険の加入に必要なのはスマホが一台あればいい。最短、90秒で登録が完了する。入力も次の4つだけでいいという。
・電話番号
・スマホのIMEI(*)
・スマホの自撮り動画
・クレカ情報
(*)... IMEIは端末一台ずつに割り当てられた識別番号
「これまで生命保険などの契約は対面で紙をつかった入会手続きがスタンダードでした。一部ウェブでの手続きも増えていますが、本人確認書類や、必要な入力項目が多くあります。それをシンプルにしたかった。さらに加入のタイミングもユーザーが自由に決めれたらと思っていて。スマホの補償ならスマホを新調したその日にしか保険に入れない。これっておかしいなと思ったんですよね。」
ユーザーのスコアに応じて保険料が変動
保険料は個々人のライフスタイルに合わせてパーソナライズされる。
「端末のジャイロセンサーからデータを取得して毎朝スコアを計算します。移動が多い人や、スマホに衝撃を与える人はスコアが下がってしまう。スコアが低いほど保険料が上がる仕組みになっています。」
SNS感覚で友人のスコアがわかる
アプリで設定さえしておけば、友人と自分のスコアを比べることも可能だ。
「隣の芝生の青さが気になるように、友人がどんな保険にどれくらいお金を払っているのかって気になりますよね。そういったものを全部可視化していく。これには友達の入る保険や行動を参考に自分の保険について考えてほしいという意図があって。ライフスタイルに合わせた保険をそれぞれが考え自分で選んでいく。そういう世界観を僕らはめざしています。」
『スマホ保険』が他の保険と大きく異なるのは単価が安いところにある。月額の保険料は、AppleCareの半分以下だ。さらに補償の期間も3ヶ月と短い。これらは保険商品の中でも「ミニ保険」というジャンルに属する。必要性を感じたときのみ入れるオンデマンドな保険のスタイルは、今を大切にしたい20代にとっても求められるものになっていくかもしれない。
「これまでの保険、特に生命保険は色々なリスクを担保してくれるのが一般的でした。ですが、”この病気では保険金を受け取ることができません。” といった、例外についても多く書いてあるんですよね。そんなの全部覚えてられないじゃないですか。食事で糖質が多い人なら、糖尿病保険に入れるとか、必要なものだけ入れるような保険を作っていきたい。」
これまで最適化された保険は多くは存在してこなかった。にも関わらず、日本人の生命保険の加入率は80%以上(*)と高い。保険大国とまでいわれているくらいだ。「心配性」という国民性がありつつも、20代の加入率は56%と低い。保険に対する感覚は世代間でギャップがあるのかもしれない。
(*)… 公共財団法人 生命保険文化センター 平成28年度「生活保障に関する調査」(平成28年12月発行)
「生命のリスクって若いときからそんなに頻繁に訪れるものではないじゃないですか。あとはやっぱり今が一番大事と考えている20代も多いはず。そういった子たちのためにも、ある一定の期間内、極端に言えば一日単位で入れる保険もあっていいと思っていて。若い時ってお金がないですよね。長期にわたって無駄なお金を払わなくてすむようにしていきたい。保険の営業さんたちも “将来こんなことが起こるかもしれないので、今入っておかないと...” というバッドストーリーで需要喚起していくやり方をしなくてもよくなりますよね。」
現在、justInCaseが提供するミニ保険は、対象がモノに限られている。一方で、病気や怪我などのミニ保険は世界ではすでにスタンダードに。特に、スマホ決済が進む中国で普及しているという。彼らがビジネスをはじめるにあたっての着想もそこにあったそうだ。
「本当にいろんな種類のものがあるんです。熱中症保険や食中毒保険... 月見保険といった、どんなリスクに伴って入るべきかわからない保険まで(笑)。
ユニークな例でいうと、悪天候保険。旅行へいく前に入れる保険で、旅先で天気が悪かったら、保険金がもらえるというもので。ホテルでちょっといいディナーを食べたり、いいサービスを受けたりといったことが可能になるんです。中国は電子決済などの仕組みが進んでいるので、スマホのウォレットに入金。これが利用の促進につながっているといえるでしょう。本当に旅行にいってるかどうかや悪天候かといったエビデンスは、スマホの位置情報や天気情報から判断していましたね。」
最後に聞けたのは彼らのビジョンだ。
「短期の保険は、新しいサービスと相性も良いんです。民泊やUberは、ユーザーにとって新しい体験を提供しますが、もちろんリスクもありますよね。今後は日本からも新しいビジネスがどんどん生まれてくるでしょう。そういったときにユーザーが安心してその体験を楽しめるように僕らは保険という形でサポートしていく。その前にもまずは保険というものが若者にとってより身近なものにしていけるように努力していきたいと思っています。実験はまだまだ始まったばかりです。」
彼らはこれから、ミニ保険のバリエーションを増やしていくだろう。それと同時に、必要なときだけ必要な保険に入れる世界を僕らに見せてくれるのかもしれない。
※掲載時からタイトルと一部の内容を修正しています。(2018年8月30日 CAREER HACK編集部)
文 = まっさん
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