2018.09.28
『CARTUNE』に学ぶ、全国の車好きが熱狂するグロース施策

『CARTUNE』に学ぶ、全国の車好きが熱狂するグロース施策

ヒットアプリの「初期ユーザー獲得法」「リテンション改善施策」などグロース術を紹介。取り上げるのは、クルマ好きのためのコミュニティ『CARTUNE』。全国のいわゆる「マイルドヤンキー層」が夢中になっている。

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「クルマ好き」が熱狂する『CARTUNE』

車のコミュニティアプリ『CARTUNE』、コスメのクチコミコミュニティアプリ『LIPS』、スマホ一台でゲームのストリーミング配信ができる『Mirrativ』の3社合同で実施されたトークイベントの内容をお届けします。


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- 『CARTUNE』について
 日本国内ナンバーワンのクルマコミュニティアプリ。愛車やカスタムパーツなどの写真を投稿
- DL数・ユーザー数・投稿数
 55万ダウンロード/アプリの月間アクティブユーザーは約30万人、1日に約7000件の投稿
- ユーザー属性
 東京ではない場所に住む20〜30代のいわゆる「マイルドヤンキー層」
- 企画・開発者について
 福山 誠さん(マイケル株式会社)が企画開発
 『ソーシャルランチ』や『MixChannel』など話題のサービスを生み出してきた人物。マイケル社は4名のメンバーが在籍

まずは「ユーザーの熱量」だけ見ればいい

MixChannelがヒット。次に何のテーマのコミュニティサービスをやろうかと考えていた時、ユーザーの熱量が高い領域はどこか、この1点を重視して考えていました。そのひとつが、クルマ好きのためのコミュニティでした。

既存のコミュニティサービスや、TwitterやInstagramなどをウォッチしたりして、色んなカテゴリを調査したりしました。

クルマ好きのためのコミュニティは特別に新しいものではありません。日本は自動車産業で大きくなってきた国でもありますし、多くの人がクルマに関わりながら生活している。趣味として楽しんでいる人も多い。50代くらいの方は「クルマ=青春」という人もたくさんいます。PCサイトがメインでしたが、ずっとクルマを介したコミュニティはありました。

スマホシフトが完了した今だからこそ、クルマ好きの熱量を集めるスマホアプリにはチャンスがある。そう思い、『CARTUNE』を開発するにあたります。

あと、僕の出身が広島の田舎なんですけど、クルマを趣味にしている人が多い。地元の友達もクルマのカスタムにハマっていたりして、年収以上のカスタム費用をかけてたりする。そのような原体験も決め手となりました。東京にいたらあまり意識しないけど、日本中に結構いるよなと。

はじめは「これ便利!」で使ってもらえばOK

コミュニティサービスの立ち上げの際には、まず投稿者をがんばって集めないといけません。その際には、「便利ツール」という立て付けでユーザーベネフィットを明確に提示できるかどうかがポイントです。

うちがリリース前後で実践していたことは次のとおりです。

・Twitterで見つけた熱量がありそうな人たちに、片っ端からDMして、アプリのベータテストに参加してもらうように依頼
・その際に、画像に写り込んだナンバープレートを自動で隠してくれる機能を推す

ナンバープレートを隠す専用のアプリは実は他にもありますが、全部有料でした。有料にもかかわらず、そこそこダウンロードされているようだったので、無料で提供したらウケるだろうと見込んで。想定通り、この機能が刺さって、効率的に初期の投稿者ユーザーを増やすことができました。

「新しいSNSを作ったのでやってくれませんか?」というユーザーベネフィットの弱い誘い方では、初期のテストユーザーでさえ集めるのに苦労したことでしょう。

ソーシャルログインさえ面倒?

投稿者を増やすという課題に対して、ユーザー登録フローなどはひとつの壁です。ソーシャルログインすらめんどくさいと感じて離脱するユーザーもいると思うんですよね。なので、ソーシャルログインやメールアドレス入力などをしなくても、そのまま投稿できるようにしています。

初めからログイン無しでも投稿や閲覧できるようにしていたので、ポジティブなインパクトがどれくらいあるか比較できないですけど、「インストールしたユーザーが1日以内にユーザー登録する率」は60%近くあります。かなり効いているのではないでしょうか。

成長指標は投稿者のみの数字を追う

こうしてユーザーに新規登録してもらった後ですが、コミュニティサービスの初期段階において追っていくべき数値は「投稿者のリテンション」だと捉えています。

当たり前ですが、賑わいのあるコミュニティのリテンションは高いですよね。そのような状態をどうやってつくるか。投稿者が投稿した後、どのようなフィードバックを受けるとリテンションが高くなるのか。分析したり考えたりしました。

結果、短絡的ではありますが、「投稿したらすぐにLikeがくる世界観」を突き詰めることにしました。

投稿者が投稿してからどのくらいの秒数でLikeをもらったかを指標として、TOP画面の表示コンテンツやUI、リロードタイミングや、通知まわりなどを改善していきました。すると、投稿へのリアクションが増え、投稿自体が増えた。さらに投稿者だけでなく、閲覧者を含めた全体的なリテンションが上がっていきました。

初めのころは本当にリテンションが低かった。ですが今では、7日後の継続率は30%を超えている。比較的高いところにきたと思います。

もうひとつ、アプリのTOP画面は新着コンテンツ重視になっています。そうすることで、新規ユーザーも古参ユーザーも関係なく、露出機会が平等になります。ユーザーをフラットに扱うコミュニティ設計なので、古参問題もおきにくいのかなと。

日々やっていることとしては、コミュニティのパトロールです。クルマとは関係のない内容が投稿されたりするので、そのあたりも検知してコントロールしています。具体的には、クルマなのかそうじゃないのかを画像認識で自動的に判別したりして、露出を制限したりなどを行っていますね。クルマ以外の投稿でもフォロワー同士でコミュニケーションしていることもあるので、非表示や削除などの対応はしていません。

Twitterを攻略せよ

つづいてプロモーションについて共有をすると、コミュニティサービスのグロースには「Twitterのハック」が不可欠だと思います。

MixChannelのときは「モバイルアプリプロモーション広告」がリリースされた直後だったので、かなり安く効率的に施策を打つことができました。その時代によってベストな施策は変わりますが、広告含めTwitterでのユーザーグロースをどう攻略するか。アプリの成長に大きく関わっています。

現在のうちのTwitter広告の運用手法ですと、車種ごとにユーザーターゲティングして、それぞれにオンボーディングフローを用意しています。

たとえば、「ヴェルファイア」という車種のキーワードで広告を表示する。そこを経由し、アプリがインストールされたとします。すると「ヴェルファイア」の投稿一覧などがアプリを立ち上げてすぐに表示される。これはかなり効いていますね。おすすめです。

「Flutter」を活用

開発環境についてもをお話すると、「Flutter(フラッター)」というクロスプラットホームな開発エンジンを使っています。このプロダクトはまだベータ版でグローバルで見ても実戦投入は少ないのですが、うちとアリババが先行して「Flutter」を使っています(笑)

「Flutter」を使うことで、少人数でも効率よく開発が進められ、プラクティスを貯めることができます。少人数チームでエンジニアは自分を含めて3名のみですが、iOSとAndroidの両方、頻度高いアップデートを可能にしています。

『CARTUNE』内でやり取りされる情報はデータの宝庫です。先ほども少しお話したように、車の画像がめちゃくちゃ集まってくるので、画像認識を活用してサービス改善に役立てています。投稿内容によっては車体が端によっている画像もある。そこで、車体を認識して、自動的に真ん中に寄せてタイムラインに表示するなどの処理をしています。

そうすることによって視認性が高まり、CTRやエンゲージが上がり、結果ユーザーのリテンションにつながるんです。投稿にハッシュタグは付いてないけど、「痛車」を認識して自動でまとめてあげるとかもやっています。

画像以外にも、ユーザーの投稿から車体カスタムの知識やヒントが得られたり。自動車パーツのデータベースから商品情報を出したりしています。

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オフ会は、コーヒーとステッカーを提供。そっと支援する

運営するなかで、すごくおもしろい事象は、北海道から福岡、沖縄まで、全国各地で毎月オフ会が開催されていることです。

ユーザーが自発的にやってくれていて。全国に広がったきっかけは、とあるグループが「オフ会します」と連絡してきてくれたこと。すごくいいなと思ったので、『CARTUNE』という名前の使用許可に加えてコーヒーと特製ステッカーを送って支援させてもらったんです。

すると「オフ会やりました」と参加者が投稿してくれた。その投稿をみた別のユーザーが「俺もやりたい!」とどんどん広がっていきました。真のクルマ好きのコミュニティがちゃんとできているんだと認識できた出来事でした。

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クルマをいじるという趣味ってお金がかかるんですよね。新品や中古品のパーツを、買ったり売ったりして調達しながらみんな楽しんでいる。私の思いとしては、売り手と買い手が重なっているクルマコミュニティの経済をもっとぐるぐると効率的に回るようにしていきたい。そのなかでマネタイズとかできたら面白いなと考えています。今までよりもお財布に優しくクルマいじりが楽しめるできる世界観を作っていきます。


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ミラティブ 赤川隼一の失敗に学ぶ、愛されるプロダクトの作り方


文 = 大塚康平


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