プロダクトマーケティングマネージャー(通称:PMM)なる職種が、ネット業界で注目される。『freee』にてPMMを担う平山公規さんが、自社での役割について解説してくれた。
特集「PMM」ってなに?
※全3本立てでお届けします。
#1 クラウドサインの場合:そのプロダクト、つくって終わりになってない?
#2 freeeの場合: プロダクトの価値を、社内外に浸透させよ。
#3 SmartHRの場合:新機能企画から「売り方」の開発も。SmartHRが置くPMMの役割
※2019年12月10日に開催されたPMM Night(弁護士ドットコム、freee、SmartHRのPMMが登壇)よりレポート記事をお届けします。
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平山さんは『freee』においてPMMが誕生した背景についてこう語ってくれた。
「PMMを社内で置いたのは2018年。まず大きかったのは、“プロダクトがマーケットに届いていないのでは”という危機感でした。とくに『freee』は、法人向け会計ソフトや人事労務ソフトなど、サービスが細分化されていて。料金プランや機能もさまざま。事業部をまたいでプロジェクトを推進していく必要があります。その連携をよりスムーズにするために、“各事業部をつなぐ人が必要なんじゃないか”と、現在の体制になりました」
【プロフィール】freee株式会社 プロダクト戦略部 PMM 平山公規 2015年8月freee株式会社に入社。カスタマーサポート、カスタマーサクセスを経験し、 2017年1月からはインサイドセールスにてマネージャーに従事。その後、インサイドセールスのトレー ナーや新入社員の研修を担当。事業開発で新規協業を1年間推進した後、 2019年7月から現職。
『freee』におけるPMMのミッションはどのようなものなのか。
「まず“freeeのプロダクトとはこういうものです”ということを社内外に広めていくこと。つまり、プロダクト独特の価値、使い方が理解されている環境づくりが、僕のミッションです。これは社内も、社外、お客さま一人ひとりにもいえること」
社内向けの場合は、セールス向けの資料づくりや勉強会といった販売戦略やインナーマーケティングのような役割を担う。
「PMやUXのメンバーが開発と連携して商品をつくる人たちだとしたら、僕らはその届け方をつくるイメージです」
外部、顧客向けには、セミナー登壇をしたり、セールスをはじめ社外とコミュニケーションをとるチームすべての資料やツールに対してクオリティコントロールをしたり。
「人数が増えればあらゆるチャネルを使った発信を強化していきたいですね」
freeeの中で特徴的なのが「プロダクト戦略」という部署があることだ。
「プロダクト戦略の部署のなかにPMM、PM、UX、事業企画、アナリティクスといったメンバーが所属しています。他社だと、エンジニアや営業が同じ部署にいることもあると思いますが、freeeの場合、エンジニアが属している開発、サクセスや営業を行うユーザー事業、税理士さんとのアライアンスを行うパートナー事業、サポート、コーポレートは僕たちプロダクト戦略と違う部署になっています」
こうした社内外に向けた発信に加え、PMやUXへのフィードバックの仕組みづくりも現在注力しているポイントだ。
「失注や解約の原因を、普段からPMやUXチームにフィードバックできるような環境づくりに注力しています。
たとえば、同じ機能でも、使うユーザーセグメントが違えば、その機能がどんな意味を持つのか。捉え方が変わってくる。ビジネスサイドで拾い上げた機能の持つ価値を、ちゃんと言語化して、開発サイドに伝えていく。非常に重要なポジションかなと思います。
まだ全て整理できていませんが、PMやUXの人たちがわかるような仕組みやコミュニケーション文化をつくっていきたいと思っています」
ナレッジシェアのための社内ポータルも独自に用意しているそうだ。
「僕らは『ナレッジコア』と呼んでいるのですが、そこに全ての資料、ナレッジをまとめています。研修にも使えたり、当たり前のように話していたことも少しアンラーンされたり。じつはそのサイト、Google Analyticsを仕込んでアクセスを見ているのですが、1日100弱くらいは常に見られていますね」
開発やビジネスを中心にあらゆる部署と連携するPMM。部署間での連携について。どの部署と多く関わるか。プロダクトの状態やフェーズによって変わるが、「平均すると開発3割、セールス・サクセス6割、アライアンス・マーケ1割くらい」と現状について語ってくれた。
「たとえば、開発サイドと多く接点を持つのは、当然、プロダクトや新機能をつくる場合。さらに既存プロダクトのバリューを再定義する場合などですよね。パートナー事業の部署と接点が多くなるのは、新たにアライアンス案件が増えた場合などです。そして、セールス・サクセスとの関わりが増えるのは、ユーザー向けの資料をつくる場合や改善する場合などです」
常に「部署」と「部署」の間に立ち、こぼれ落ちそうなボールを拾っていく。最後に語ってくれたのが、PMMに必要な資質について。
「PMMっていろんなところに顔が利かないと務まらないんですね。“あの人なんか言ってるけど流しておこう”と思われたらおしまい。そうならないために、マーケットやユーザー、現場の声をできるだけ拾うことが大切だと思います」
PMMの仕事はじつに多岐にわたる。常にタスクに追われていることも珍しくない。
「忙しいは忙しいんです。ただ、僕が最初にPMMにアサインされたときに言われたのが、“めちゃくちゃ忙しいけど何をしていたかよくわからない、はダメだよ”って」
タスクに忙殺されるのではなく、よりバリューが発揮できる仕事をしていく、ということ。
「はじめはOKRやKPIもなく、何を追えばいいのかわからず、ずっと大変だったんですよね。でも、走り続けた先に、事業部の人たちから“いままで知らなかったことが言語化された”とお礼を言われたり、新入社員の全体研修を任されたり。何より開発側から“自分たちのつくったものの価値が言語化されて事業部の人たちに伝わりました”と感謝され、その価値が実感できました。大変さと表裏一体ですけど、縁の下の力持ちとして存在価値を発揮できるときが一番うれしいですね」
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