プロダクトマーケティングマネージャー(通称:PMM)なる職種が、ネット業界で注目される。『SmartHR』にてPMMを担う佐々木昂太さんとPMM兼CSの西川智聡さんが、自社での役割について解説してくれた。
【特集】「PMM」ってなに?
※全3本立てでお届けします。
#1 クラウドサインの場合:そのプロダクト、つくって終わりになってない?
#2 freeeの場合: プロダクトの価値を、社内外に浸透させよ。
#3 SmartHRの場合:新機能企画から「売り方」の開発も。SmartHRが置くPMMの役割
>>>[関連記事]「PMM」に関する記事一覧はこちら
『SmartHR』におけるPMMの役割を解説してくれた佐々木さんと西川さん。
現在、同社におけるPMMは4名。佐々木さんがPMM誕生の背景をこう語る。
「社員が100名を超えたあたりから、プロダクトマネージャー(以下、PM)がビジネス側の仕事を拾いきれなくなって、いろんなところでボールが落ち始めたんです。当時、複数の新規のアップセル・クロスセル向けプロダクトがつくられ、新料金プランができたりと、いろんな施策が動いていました。誰が営業資料をつくるのか、リリースのスケジュール管理は誰がするのか、そのメッセージは誰がつくるのか…。担当は決まっていないけど、やるべきことは山積みだったんです。超人であれば全てをこなすことができるかもしれない。けど、時間は有限ですし、そう簡単にはいかなくて。当時PMのビジネス的な仕事を支援する役割として、PMMが誕生しました。」
【プロフィール】株式会社SmartHR PMM 佐々木昂太
UCLA 数学科卒業。コンサルティングファームに入社し、DXを基軸とした事業戦略策定〜組織改革、アナリティクス、営業業務改革等のプロジェクトに従事。2018年よりSmartHRに経営企画として参画し、プライシングや新プロダクトの企画を手掛け、現在はPMMとして人事データ分析のプロダクトの事業責任者を担う。
SmartHRではプロダクトごとにPMとPMMがペアを組んでいるため、PMとPMMの相乗効果があるとのこと。では、具体的にPMMはどのようなミッションを担っているのか、佐々木さんは続ける。
「プロダクトの初期フェーズでは、PMF(Product Market Fit=自社サービスがあるマーケットに適合している状態)が全て。PMFをPMと一緒に目指していくことがPMMの主なミッションになります。
具体的にはプロダクトの新機能や売上計画、Go-To-Market戦略(社内外のリソースを活用して、顧客に価値提供し、競争優位性を達成するための計画)を決めてビジネス全体に伝えたり、PMとユーザーの要望を管理してどの機能をつくるか決めたり、各部門と一緒にプロダクト販売や運用の施策も共同で考えるのもPMMの役割です。開発からビジネス全体を俯瞰的に理解することで、点と点が繋がって問題解決の糸口を見いだせる瞬間が結構ありますね。」
では、PMとの協業については、具体的にどのような取り組みをしているのだろうか。大きく3つあると佐々木さんは言う。
「1つ目はPMMもスプリントプランニングに入って、開発チームと優先度や仕様などについて話し合うこと。2つ目に、ユーザーの要望管理を行うこと。当社では、Productboardという要望管理のツールを使い、CSやセールスが吸い上げてきたユーザーの生の声を参考にしながら、プロダクトのビジョンや企画に反映しています。3つ目が、新機能の企画。“PMFするならこれくらいの機能がないと難しいよね”というイメージをデザイナーやPMと共有しながら、最終的な仕様はPMが決めてくれますが、一緒に企画を考えるようにしています。」
PMMに就任したばかりの頃に苦労したことを佐々木さんは振り返る。
「新規プロダクトの場合、どれだけみんなにコミットしてもらえるかが鍵になります。僕は経営企画で各部署とやりとりをしていたので顔は利くほうだったんですけど、それだけでは周囲を巻き込むことはできませんでした。
既存プロダクトの場合は、営業もCSもプロダクトのことを理解しているので、既存の延長線で新機能の価値を伝えやすいですが、新規プロダクトを売る場合そうはいかない。そもそも価値や売り方がわからない、事例を持って語れないというのが当たり前なので、そこのギャップを埋めるのが大変でした。自分から営業同行や運用の手伝いを申し出たり、型を一緒につくったり。とにかく、関連部署と一緒に仕事しながら、ユーザーから褒められたり、厳しいことを言われたりする体験も含めて共有することで信頼を得る努力をしました」
最後に伺えたのは、PMMの醍醐味について。もともと同社でカスタマーサクセスをしていた西川さんはPMMの面白さをこう語る。
「自分でやり方を作っていける自由さがPMMの醍醐味なのではないかと思います。CSの場合、メソッドがすでに色々なところで共有されていて、こういうやり方だよねみたいなものがかなり確立されてきていたんです。一方PMMの場合、やり方そのものから作っていく必要があります。それに、企業によっても違うし、部署によっても人によってもやり方が全然違う。どういうスタイルでやっていくかを自分自身でつくりだせることがやりがいだと思いますね。」
佐々木さんも、PMMの自由さについて言及した。
「個人的には、自分のスキルとキャリアのレバレッジをかけられる職種だなと思っています。開発からビジネスまで仕事内容も幅広いし、フェーズによってやることが全く異なる。常に自分自身に求められる役割が変わっていくので、変化しつづけなければなりません。だからこそ面白いし、成長機会が多いなと思います。」
【プロフィール】株式会社SmartHR PMM 兼 Customer Success 西川智聡
BA(ビジネス・アーキテクツ)などのweb制作会社を経て、2015年にKaizen Platformにジョイン。カスタマーサクセスとして、証券、銀行、保険などの金融系 顧客を中心にリニューアル・アップセル活動に従事。 2018年よりSmartHRに参画し、カスタマーサクセス として新機能訴求の企画を推進。2019年7月よりPMM を兼務。
特集「PMM」ってなに?
※全3本立てでお届けします。
#1 クラウドサインの場合:そのプロダクト、つくって終わりになってない?
#2 freeeの場合: プロダクトの価値を、社内外に浸透させよ。
#3 SmartHRの場合:新機能企画から「売り方」の開発も。SmartHRが置くPMMの役割
4月から新社会人となるみなさんに、仕事にとって大切なこと、役立つ体験談などをお届けします。どんなに活躍している人もはじめはみんな新人。新たなスタートラインに立つ時、壁にぶつかったとき、ぜひこれらの記事を参考にしてみてください!
経営者たちの「現在に至るまでの困難=ハードシングス」をテーマにした連載特集。HARD THINGS STORY(リーダーたちの迷いと決断)と題し、経営者たちが経験したさまざまな壁、困難、そして試練に迫ります。
Notionナシでは生きられない!そんなNotionを愛する人々、チームのケースをお届け。