「TOIECで〇〇点とる」じゃなく「英語を使って◯◯がしたい」が大切。こう語ってくれたのが書籍『英語日記BOY』の著者、新井リオさん。語学習得に近道なし。「学び」によって人生をハック! 新井リオさんの英語学習に対する考え方を伺った。
全2本立てでお届けします
[1]英語習得に、お金はいらない。日記だけで「英語が話せる人」になった青年、新井リオの発想
[2]著書『英語日記BOY』が大ヒット。 新井リオに訊く、自分を「目標達成の達人」にする方法
「僕、高校3年の6月の模試で英語偏差値38だったんです」
そう語るのは、デザイナー / イラストレーターとして世界中のクライアントと仕事をする新井リオさん。
高校3年で受けた模試結果に衝撃を受け、そこから猛勉強。わずか半年で第一志望の立教大学に合格。さらに20歳から英語の独学を始め、現在は海外で仕事ができるほどの英語力を身につけた。
さらには、自身が書いたブログが「英語独学」でGoogle検索1位に。『英語日記BOY』を出版し、Amazon本総合人気度ランキング1位となった(2020年1月 時点)
『英語日記BOY』の「はじめに」はこういった書き出しから始まる。
“5年前、お金がなかった僕は、最も効率のいい英語勉強法として「英語で日記を書く」ことを決めた。「参考書での勉強」も「英会話スクール通い」も「英語留学」もしていない。極端に言うと、僕は「英語日記を書き続け、英語が話せるようになった人」ということになる”
ー高校3年生のときに受けた模試で英語の偏差値が38だったんですよね。そこから、海外で活動するほど英語力を身につけるってすごいと思います。なぜ、そこまで英語の勉強に没頭できたのでしょうか?
ある時から、勉強って「食事」みたいだなと思うようになりました。お腹がすいている人がご飯を食べるように、知識を付けたい人が何かを勉強して体内に取り入れる。
好きな食べ物があるように、好きな勉強対象も存在するのではないかと考えました。まだ出会えていないだけで、どこかに存在するんじゃないかって。
じつは高校3年の夏までバンド漬けの生活だったので、全く勉強してこなかったんですね。当然成績も全然ダメで。
受験期になり、おそらく生まれて初めてちゃんと勉強をして…そこで気づいたんです。「知らない知識を自分の体内に入れることってこんなに気持ちいいことなのか!」と。
特に英語の勉強は楽しくて、ご褒美にさえ感じました。
ハンバーグが好きなんですが、好きなものを食べる時って「このハンバーグ、どうやってモチベーションを上げながら食べよう…」とか考えないじゃないですか。むしろすぐにでも食べたい!(笑)
ほとんどそのくらいの感覚で英語を勉強していました。
いま、英語の勉強が「やらなければいけない大変なものだ」という感覚はまったくないんです。英語がハンバーグと同じくらい好きなんです。
ーとはいえ、英語の勉強をしたくて、していてもなかなか身につかない人もいて。どうしたらいいのでしょうか。
それは、「英語を使って何をしたいか」が明確ではないからかもしれません。英語って、想像以上に「ツールのひとつ」でしかないんです。英語が話せるだけで年収が上がったり、世界中で働けるようにはなりません。「英語をスキルに掛け算」するからこそ勉強する意味があるし、その掛け算にゲームの攻略的な楽しさを見出すことができれば、継続につながると思うんです。
例えば、英語の勉強に行き詰まりを感じている人の多くは、「TOEICで○○点取る」とか、「英検○級に合格する」とか、英語をスコアや資格として見てしまっているんですよね。「英語オタク」のような人はそれでもいいと思うんですけど、多くの人がそうではない。だからこそモチベーションが続かなくなってしまう。
僕は「カナダで自分のバンドのライブツアーが決まったから、せめて曲間のトークだけでも英語で言えるようになりたい」という明確な勉強理由がありました。ツアーを成功させるために、何がなんでも英語を喋れるようになりたかったんです。
それに世の中にはいろんな勉強法のTIPSが溢れているけど、全てのジャンルの英語をペラペラになろうと思ったらキリがない。だからこそ、まずは「自分に合った英語」だけを追求するのが良いと思います。
そういう意味でも、日記くらい個人的な教材で英語を勉強するのが一番効率的だと思うんです。教科書例文をそのまま覚えても、日常生活でまったく同じ文章を使う場面は意外とないから。
他にも勉強を続けるコツはいろいろあると思うんですけど、一つ声を大きくして言いたいのは、どこかで「えいや!」と踏ん張らなければいけない瞬間があるということ。英語、というかすべてのスキルは、誰かに教えてもらうものではなく、極論「自分で勉強するもの」だと思うんです。勉強と練習をしている間のみ、上手くなり続けます。
いまはSNSがあるから、過去最大に「焦りやすい時代」だと思います。「あの人がこんなにすごいことをしている。自分も何者かにならないと…」と表面的な結果を急いでしまう。でも、僕が今まで出会った成功している人はみんな泥臭かった。本人がそれを努力と感じているかは別として、長く地道なステップを踏んできた人たちでした。
つまり、結果を出すのに時間がかかってしまうことを肯定し、今日やる勉強と練習に集中するのが一番の近道だと思うんです。
それに気付いてから、無駄な焦りを生まないように、そして限りある時間を大切にするために、『Twitter』と『Gmail』のアプリをスマホから消しました。ついつい見てしまうので。必要があればいちいちGoogleで検索して、ログインしています。そうでもしないと自分を律することができないんです。
ー『英語日記BOY』がヒットしていますが、先々で考えていることなどもありますか?
それでいうと、僕が5年間実践してきた「英語日記」という英語勉強法を、「留学」「英会話スクール」に続く第3の選択肢にしたいと思っています。
行きたい海外の学校があり、お金に余裕がある人はもちろん留学もいいと思います。ただ、「留学しないと英語が話せるようにならない」という常識が蔓延した社会だと、経済的に余裕がないけど英語を話せるようになりたい人の最初の努力が「お金を貯めること」になってしまう。1年間の語学留学の平均費用は300万円と言われているので。
5年前の僕はこの事実に悩み、卑屈にもなりました。でも愚痴を言うだけでは何も変わらなかったので、「英語が話せる」の定義をもう一度自分で考えるところからはじめてみました。
結果、英語が話せるとは、『いま言いたいオリジナル英語フレーズが瞬時に出てくる能力』のことだと思ったんです。
だったら、日記だ!と。僕たちは普段から教科書例文ではなく、「日記に書いてしまうくらいパーソナルなこと」を話しているじゃないですか。
なので、「英語日記」の考え方をもっと日本に浸透させ、留学・英会話スクールのような「社会に当たり前に存在する選択肢」にすることができれば、経済的な理由で英語学習に行き詰まっている日本人の数を減らすことができるのではないかとさえ思います。
だからこそ、『英語日記BOY』をより多くの人に届けるべく、いま、頑張っています。自分が書いた本ですが、「英語日記」は客観的にみても面白く新しい考え方だと思うので、本当に読んでほしいんです。これまでの英語に対するネガティブな思い込みが、全て塗り替えられると思いますよ。
>>>「2」著書『英語日記BOY』が大ヒット。 新井リオに訊く、自分を「目標達成の達人」にする方法
編集 = 白石勝也
写真 = 黒川安莉
取材 / 文 = 田尻亨太
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