BANK 創業期に入社し、即現金化アプリ「CASH」のプロダクト責任者をつとめていた岡田麻里さん。2020年3月から仲間と共同創業し、経営にも挑戦している。そんな彼女にもあったPM1年目。開発もビジネスもちんぷんかんぷんだった彼女。突破口は「貪欲なインプットとアウトプット」にあったーー。
【プロフィール】岡田麻里(おかだ・まり)
1991年生まれ。東京都世田谷区出身。法政大学を卒業後、デザイン会社である株式会社グッドパッチに入社。アプリやWeb制作支援を行う自社のプロトタイピングツール「Prott」のカスタマーサポートを経験後、プロダクトマネージャーとして開発計画の策定や機能開発のディレクション、開発チームマネジメントに従事。2017年6月より株式会社バンクへ入社。事業責任者・プロダクトマネージャーとして、事業立ち上げ・アライアンスや運用構築、プロダクト改善に従事。2019年11月より株式会社メディアドゥにてAIを活用した音声認識サービス「Smart書記」に参画し、2020年3月エピックベース取締役として共同創業。
ー もともとCSがキャリアのスタートだったと伺いました。PMにシフトしたのはなぜだったのでしょう?
はじめてPMになったのは、グッドパッチに新卒で入社して1年目の頃です。もともとはCSを担当していて、社長の土屋尚史さんに呼ばれて「岡田さん、PMやってみない?」と言われたことがきっかけでした。
当時の私はプロダクト開発の経験も知識も一切なく、突出したスキルもなくて...。はたしてPMが務まるんだろうか....と不安しかなかったです。面談では「やります」とは答えたものの、後からだんだん怖くなってきて、泣きながら帰った記憶があります。
とくに苦労したのは、開発メンバーとの連携でした。当時の私は開発のプロセスや専門用語がさっぱりわからず、コミュニケーションに苦戦していた記憶があります。ミーティングでも自分だけが場違いなことをいってるんじゃないかと常に不安でした。
ー 開発スキルや知識のないPMも多いと思います。岡田さんは当時インプットのためにやっていたことはありますか?
ゼロから開発を学ぶために、仕事終わりや休日の時間をつかって、実際にアプリ開発をしました。さっぱりわからなかったのでものすごい時間かかったんですけど...ググったり、社内のエンジニアに聞いたりしながらなんとか形になりました。
技術系の知識は本でインプットするだけでは使い物にならないので、自分で手を動かしながら逐一調べていくとより理解が深まったと思います。
他にも、つくるだけでなく、習得したインプットをブログで情報発信するのもいい機会になりました。
「アドベントカレンダー」という、毎年12月にエンジニア界隈で開発関連の記事を発信するイベントがあるのですが、当時社内でも何人かのエンジニアがブログを執筆していて。私はエンジニアではないけれど、開発を学ぶ絶好の機会だなと思ったんですよね。「私も書かせてください!」と手をあげました。
学んだことを「誰かに伝える」ことによって、改めて勉強し直しますし、振り返りの機会になりました。情報発信ってどうしても後回しにしてしまいがちなので、「書きます!」と宣言してアウトプットの機会を先につくっちゃうのはおすすめです。
ー開発のほかに、意識してインプットしていたことは?
ビジネス書は手当たり次第読み漁っていたと思います。
いかに売り上げにつなげていくのか。
事業をグロースさせていくのか。
当時の私は、こういった視点がすっぽり抜けてしまっていたため、ビジネスサイドの人の考えがさっぱり分からなかったんです。意思決定の背景を理解するのにも、かなり時間がかかっていました。
そんな私の状況をみかねた上司から「本読んで勉強したほうがいいよ」とフィードバックをもらって。それから社内の人におすすめ本を聞いたり、Twitterのタイムラインに流れてきたおすすめ本はすぐにamazonでポチったり。気になる本は一通り目を通すようにしていました。
あとは、社内の先輩が実際にどうやっているのかを知るために、Slackに残っている議事録やプレゼン資料を片っ端からチェックしていました。立場の違う人が同じ方向を向くためにはどうしたらいいのか。社内にはノウハウがたくさんあったので、とても参考になりました。いま思えば、直接先輩に聞いて相談すればよかったのですが...聞く勇気がなかったんですよね(笑)
本を読んだり、先輩のやり方をインストールしていくうちに、意識するようになったのは「ビジネスサイドの視点で提案する」こと。いままではビジネス側の状況や課題を知らずに、開発サイドの視点でしか考えられていなかったんです。
ビジネス視点でなにが重要指標になっていて、なにが課題になっているのかを知ること。その上でどんなアクションが必要なのかを考えること。開発とビジネスが対立せず、むしろ協力関係になるように、歩み寄っていく姿勢を心がけていきました。
ー BANKでは事業責任者にもチャレンジされていましたが、一番教訓を得たことはなんですか?
PMにタスクが集まりがちだからこそ、メンバーに「任せていく」ことも大事な仕事だと思います。なにが重要なタスクで、誰になにを任せるべきか。その視点をもちながら、強いチームをつくっていくこと。その大切さは、BANKでプロダクト責任者を経験するなかで、痛感したことでした。
当時の私は、プロダクトの意思決定も、メンバーのマネジメントもすべてひとりでなんとかしなきゃと意気込んでしまって。結局タスクが溢れてしまい、体調を崩したことがありました。いま思えば、「PMなんだからなんでもやらなきゃ」と肩に力が入っていたんだと思います。
私ひとりで考えていても答えは出ないし、いくら時間があってもたりない。メンバーと一緒に考える場をつくろうとおもい、朝会や「本音で話す会」というミーティングを設定して、意識的に雑談の頻度度を増やしていきました。
職種や立場の違うメンバーが、なにを課題と捉えているのか見えてきますし、一緒にどう解決していこうかと考えられる場にもなっています。
ー 最後にいまPM一年目を過ごす方に向けてメッセージをお願いします!
1年目を振り返ると、本当に失敗だらけで落ち込むことが多かったけれど、心に決めていたのは「必ず次は改善する」ことでした。
そのために徹底していたのは振り返りをすること。プロジェクトが一区切りついたタイミングや、リリースしたタイミングなど、必ずまとまった時間をつくって反省会をするようにしていました。
実際に起きていた事象、思いつくことをガーっと書き出して。なにが課題だったのか。どうするともっとよかったのか。次になにを活かすのか。すべて記録していました。
失敗したことから逃げると、また失敗しっぱいして身につかない。愚直にやり続けていくと、スキルが積み上がっていくと思います。
取材 / 文 = 野村愛
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