ランサーズ、BANK、Origami....PMとして数々のスタートアップを経て、現在急成長中のライブ配信サービスを手掛けるDouYu Japanで働く齋藤祐介さん。そんな彼が、PM1年目に味わった苦い挫折経験とは?
全2本立てでお送りいたします。
【1】ただの伝書鳩だった。PM1年目に失敗から学んだ「鵜呑みにしない」スタンス
【2】中国語を喋れない僕が、中国の開発チームと信頼関係を築くためにやったこと (11月13日(金)公開予定)
ー PM1年目を振り返って、一番糧になっていることはなんでしょうか?
入社してすぐに担当した、社内で使う業務ツールの開発は大きかったと思います。
はじめてのPM経験かつ、ちょうど先輩のPMが退職してしまったタイミングで。PMが一体なんなのかもよくわからない中で、いきなり任されてしまった状態でした。
役員の発案ではじまったプロジェクトで、すでに大枠の要件は固まっていました。「あとは詳細を詰めて、すぐにリリースして」というかんじで。急ピッチで開発を進め、なんとかリリースには漕ぎ着けたんですが...誰にも使ってもらえなかったんです。
ーなんと...使ってもらえなかった理由はなんだったのでしょう?
もともとの要件が現場のニーズを正しく捉えられていなかったんです。
チームや部単位で使うことを想定していたのですが、それぞれのチームで求められる要件が違いました。
「役員が言ってるのだから間違いない」と、思考停止してしまっていた自分がいたんだと思います。言われた通りにつくればいい、と。
でも、それはただの伝書鳩になっているだけだったんですよね。鵜呑みにせずに一次情報をちゃんと取りにいくべきだった。
ほんとにその要件は正しいのか。マストの要件なのか。PMである自分が確かめて、理解できていなければ、誰のためにもならないプロダクトになるのだと痛感しました。
もうひとつ、いまの糧になっている失敗があります。
入社1年目の後半に担当した、データベースの刷新プロジェクトです。設計が複雑で、技術的にも難易度の高いプロジェクトでした。
しかも当時チームにはエンジニアが1名しかおらず、最初「工数的に2年リリースまでにかかります」と言われてしまって。リソースも増やせないし、どうしようかと悶々と考えながらも、ただ仕様書を綿密に練ることに時間を割いていたんですよね。
でも、あるときCTOに呼び出されて。
「どれだけ良い仕様書つくっても、現時点でのユーザーへの価値ってゼロだよね」って。
当時の自分には「ユーザーに価値提供する」という視点がすっぽり抜けていたことに、ハッと気づかされました。
ー 周りの人に相談する、というのもむずかしかった?
そうですね...。「仕様をきっちり決めてから、デザイナーとかエンジニアさんに依頼しないといけいない」と勝手に思い込んでいたんです。自分の殻に閉じこもって、悶々と一人で考えてしまってました。
一刻も早くリリースして、ユーザーに価値を届けるにはどうしたらいいか。CTOの言葉をきっかけに、エンジニアに勇気を出して相談しました。
結果、データベースを直接いじらずに、ミニマムの工数で検証できる方法を見つけることができました。
ー エンジニアとの連携は、とくに開発知識の乏しいPMにとっては苦戦するところだと思います。齋藤さんはエンジニアとどのようにコミュニケーションを取ってましたか?
もともと開発知識がゼロだったんですけど、「エンジニアに意見をもらう」のではなく「エンジニアに意見を当てる」のを心がけるようになりました。
エンジニアも、開発に関してとんちんかんなPMを信頼できないと思って。SQLを独学で勉強して、データベースの基本的な構造をインプットした上
で、エンジニアに「自分はこう考えたんだけど、どう思いますか?」と意見をぶつけるようにしていました。
意見は間違っててもいい。自分なりに調べて勉強して、間違ってもいいから当ててみる姿勢はとても重要だと考えています。
ー これまでPMとして大事な「スタンス」について伺ってきましたが、とくに「テクニカルスキル」においてPM1年目に身につけておくべきものってなんだと思いますか?
ドキュメンテーション力だと思いますね。
僕自身、社会人2年目のときに先輩に注意してもらって。最初からもっとやっておくべきだったなと反省したんです。
当時は「とにかく詳細に伝えなければいけない」と思って、不必要な情報まで書いてました。
SQLでの分析とかUIデザイン力とかハードなところはいつでもやろうと思えば身に着けられます。でも、ドキュメンテーション力って、注意してくれるやさしい上司がいないと重要性に気づけないと思うんです。1年目から勉強しておくと武器になると思います。
ー たしかに、リモートワークになって、より一層重要になっていますよね。
そうだと思います。確かに顔合わせたら早いんですけど、理想はSlackとかでパッとまとめて、一瞬で意思決定できること。スピードが格段に上がるので、今後PMに強く求められていくかなと思いますね。
取材 / 編集 = 野村愛
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