2023.10.12
深刻な「AI人材」不足、どう解決する!? デジタル人材育成でIPOしたアイデミー 社長 石川聡彦の視点

深刻な「AI人材」不足、どう解決する!? デジタル人材育成でIPOしたアイデミー 社長 石川聡彦の視点

2023年6月にIPO(新規上場)を果たしたアイデミー。デジタル人材育成を主軸とする彼らだが、いかにしてAI活用・DX推進の“内製化ニーズ”を捉え、IPOに至ることができたのか。同社ならではの強み、そして上場を決めた理由とは。代表である石川聡彦さん(30)が抱く「志」と共に伺った。

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アイデミーについて
「先端技術を、経済実装する。」をミッションに掲げ、企業のデジタル変革(DX)に伴走するアイデミー。2014年6月、東京大学工学部に在学中だった石川聡彦氏により創業。当初は「お弁当デリバリー」をはじめ、さまざまな事業に挑戦。その後、石川氏自身、専攻の水処理の研究に機械学習による解析を応用したことを原体験に「AI/DXに関するデジタル人材育成」に着目。個人向けのオンラインプログラミングスクールから始め、法人向けオンラインDXラーニングへと展開する。
企業変革の基盤となるDX推進およびAI/DX内製化を支援するプロダクト・ソリューション事業によって、2023年6月に新規上場。伴走型支援、さらに研究領域のデータ活用促進、GX領域の人材育成支援等も開始へ。DX推進、ChatGPTをはじめとする生成AIの普及、人的資本経営、リスキリングへの投資、デジタルスキル標準化、GX推進など企業のAI/DX内製化ニーズに応え、事業成長を続ける。

『Aidemy Business』
デジタル人材育成支援のためのオンラインDXラーニング「AI/DXプロダクト」

『Aidemy Practice』
デジタル時代に必要なDX・ITスキルを実戦形式で学ぶ「AI/DXプロダクト」

『Modeloy』
デジタル変革をコンサルティング型で伴走支援する「AI/DXソリューション」

『Aidemy GX』
デジタル技術による業務改善・コスト削減、新規事業創出の事業革新と、脱炭素を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)を同時推進していく上で欠かせない「GX人材育成」を行うサービス

『Lab Bank』
2023年7月31日にリリースされた新サービス。マテリアルズ・インフォマティクス、研究開発領域に特化したマネジメントサービス。研究データのデジタル化や一元管理を実現し、企業のDXを推進する。

『Aidemy Premium』
個人向けプログラミングスクール・デジタル人材育成支援「AI/DXリスキリング」

エンタープライズ企業の約7割が「AI・DXの内製化」に挑戦

はじめに、どういった企業ニーズがあり、どう応えているのか、市場動向と事業について伺ってもよろしいでしょうか。

そうですね。まず僕らが注目してるのは「AI・DXの内製化」というテーマです。わかりやすく言うと「AI・DXに関連するシステムを社内で作りたい」という企業様に対し、「人材育成」と「コンサルティング型の伴走」でご支援させていただいています。

じつはエンタープライズ企業の約7割が「AI・DXの内製化」に挑戦している調査データがあり、ニーズが拡大しています。

ただ、「全てを内製化していく」ということではなく、必要なものは社内で作りつつ、外にお願いすべきところはしたり、使うべきSaaSを選んだり、棲み分けができる状態を目指す。いかに「AI・DXを外部に丸投げする」といった状況を無くせるか。これが全産業で必要になると考え、プロダクトとソリューションを提供しています。

そもそもですが、なぜ「外部への丸投げ」は問題なのでしょうか。

いまや日本企業の競合は、国内の同業他社ではなく、海外の巨大なIT企業ですよね。例えば、国内の自動車メーカーが意識してるのはテスラであり、小売企業であればアマゾン。当然、そういった海外企業はデジタルに相当なリソースを割き、国内市場のシェアを奪いにきています。どう彼らと勝負していくか。産業を問わず、内製化をやらない理由はありません。

アイデミーは「先端技術を、経済実装する。」をミッションに掲げているのですが、「教育」はゴールではなくあくまで入り口。育成をした人材が活躍し、カルチャーを変え、新しい技術・新規事業が生まれる。経営にインパクトを与えていくところまで支援していく。こういった事業コンセプトは、支持をいただいているポイントだと思います。

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アイデミー「事業計画および成長可能性に関する説明資料」より
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230621507753/

人材育成・コンサルティング・開発は、地続きのテーマ

「社内にAI・DX人材が足りない」という状況はイメージがつくのですが、より分解すると、どういった悩みが企業側にはあるでしょうか?

例えば「AI・デジタルに詳しいリーダー層を育てたい」「全社員のリテラシーを底上げしたい」「AI・DXの実装ができるエンジニアを育成したい」などの声があり、社内だけでは対応できていない状況があります。

会社によってもバラバラですし、もっと言えば、部署ごとに課題が違うことも多いです。目的が混在したまま、とりあえず研修だけが計画されている…といったケースも少なくありません。

いずれにしても、どこか一つの課題を解決して終わり、というケースはほとんどないのが現状です。例えば「100人が在籍する事業部」において「AI・DXに詳しい方を3人、リーダー層として育てていこう」となったとします。それが上手くいったとしても、他の97名がAI・DXに抵抗感があれば浸透しません。何より実装できるエンジニアの育成も必要だったりするわけです。

さらにいえば、育成を経て「いざ、実行していこう」となった時、実務のノウハウが必要となる。そこでOJTを含む伴走型のソリューション、コンサルティングで、世の中のビジネスモデルを変えていくところまで伴走させていただきます。一見すると人材育成、コンサルティング、開発は、分担されたテーマのように見えますが、お客様のゴールは同じとも言えます。

実際、過去1年間の全ての事業が成長していますが、特に法人に対するコンサルティングの伸び率が高くなっています。このAI・DXの実装支援をさらに加速していきたい。こういった背景もあり、お客様となるのは人事の方々よりも、AI・DXを推進するプレイヤーのみなさんがほとんど。ここも他社が提供するサービスとの大きな違いだと思います。

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デジタル人材育成サービスにおける強みについて「学習システム・コンテンツの質と量にあると思います」と答えてくれた石川さん。「BtoBの“Netflix”をイメージいただくといいと思うのですが、どれだけ質の高いオリジナルコンテンツが提供できるかが勝負。その点、私たちは2017年から先行してAI・DX人材に特化したコンテンツを拡充し、職種別・レベル別・目的別に180以上のラインナップを揃えています。23万人以上というユーザー数も日本屈指で、そこから得られるインサイトやフィードバックも活かすことができる。このコンテンツの質と量が早くに評価されたことは強みにつながった部分だと思います」

より大きなインパクトを社会に与えるための「上場」

続いて上場についても伺わせてください。創業から9年、サービスとしての「Aidemy」開始から6年とスピード感のある上場だと思うのですが、決めた理由があれば教えてください。

いろいろな考え方があると思いますが、私としては、より大きなインパクトを、より早く社会に与えていけると考え、上場を決めました。ベンチャーキャピタルからの資金調達にしても、上場にしても、自分の持ち株比率で言えば、どんどん低くなるわけですよね。ただ、会社として及ぼすことのできる影響力は大きくなっていく。よくメルカリの小泉さんの「ピザ」の話を思い出すのですが、すごく共感をしていて。

起業家には自分のオーナーシップにこだわる人と、自分の仕事で社会により大きなインパクトを与えたいという人がいるとも思っています。よく“ピザ”に例えて話すんですが、小さいピザを全部食べたいか、大きいピザの一部分を食べたいかと問われたときに、僕たちは“大きいピザの一部分でもそっちの方が大きいよね”って。
(引用)https://superceo.jp/tokusyu/manga/100466

まさに自分も“大きなピザの一部分”を選ぼうと。まだまだ小さい会社ですが、売上500億円規模の会社を目指していこうと思った時、いずれ上場のステップを踏むことになるケースのほうが多い。それなら早い方がいいと考えました。もちろん、社会的信頼の獲得や、ベンチャーキャピタルから資金調達をしていたので、一定のリターンを返すことで、日本のスタートアップのエコシステムにも貢献がしたい。そういった思いもあり、決断をしました。

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「先端技術の経済実装」を加速させていくために

最後に、今後の目標について伺わせてください。

早期に実現したい目標としては、売上500億円、営業利益100億円を掲げています。日本に4000社あると言われるエンタープライズ企業のうち「1000社」と平均単価「5000万円」でお取り引きいただく。実際、既に5000万円以上でのお取り引き企業様もありますし、エンタープライズ企業の開発予算から考えれば、わずか数パーセント。そういった意味では、無理な目標では全くないと思っています。

もう少し長い目でいえば、ミッションに掲げる「先端技術を、経済実装する。」を加速させていきたい。私自身の考えですが、新しい技術とか新しいテクノロジーが生まれることで変革は加速度的に進んでいくと捉えています。例えば、それまで「刀」で戦ってきた戦も「火縄銃」というテクノロジーが出てきたことで戦い方が変革された。「電気」という技術が発明されたことで、人々の生活は大きく変わりました。この時代の変革におけるキードライバーは、間違いなくAIを中心としたデジタル技術です。

デジタル技術といった時、現在は生成AIがブームですが、その移り変わりも早いと感じていて。取り組むべきテーマは変えていくべきだと思いますか。

それでいうと10年、20年というスパンでみれば、ソフトウェアやデジタルが中心にあることに変わりはないと捉えています。人間は3年くらい同じことを言い続けると飽きてしまうので「言葉」が変わるだけなのかなと(笑)なので、本質はそこまで変わらないはず。いずれにしても、ソフトウェアを軸に、さまざまな産業の境界線が無くなるなか、日本の企業は、IT・デジタルを主戦場とするグローバル企業と戦っていかなければいけない。私たちもそのパートナーとして伴走していければと思います。

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(おわり)


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取材 / 文 = 白石勝也


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