2014.07.29
日本はあまりにも狭い|TABIPPO 清水直哉の想う、旅人が活躍する世界

日本はあまりにも狭い|TABIPPO 清水直哉の想う、旅人が活躍する世界

「若者が旅する文化を創る」をスローガンに、イベント・出版・メディアなど幅広い活動を行なっているTABIPPO代表、清水直哉さんにインタビュー。若者が世界を旅することで考え方や人生にどう影響するのだろうか?

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旅に出て人生を変えた男

時代は変わっても、いつだって人はみな旅に出る。

人はなぜ旅に出るのか?旅は何を与えてくれて、人生にどんな影響をおよぼすのだろうか?

ことインターネットの世界では、若い時期に異国の地に触れ、イノベーターとして素晴らしいプロダクトやサービスを生み出す人が多い。

Appleの故スティーブ・ジョブズはインドを放浪。Tumblr創業者のデヴィッド・カープも10代で来日経験があるなど、枚挙にいとまがない。

日本でも、山田進太郎氏はメルカリ創業前に世界一周を、gumiの国光宏尚氏は20代で中国、東南アジア、中南米など世界中を渡り歩いている。


TABIPPO_LOGO


今回お話を伺ったのは、TABIPPO代表の清水直哉さん。「若者が旅する文化を創る」をスローガンにイベント、出版、メディアなど幅広い活動を行なっている。

「学生時代の世界一周旅行が、人生の転機になった」と語る現在26歳の彼に、旅に出た理由、そして旅が自身の考え方・キャリアにどう影響したのか伺った。


TABIPPO 清水直哉

[プロフィール]
TABIPPO 代表 清水直哉 Naoya Shimizu

東京学芸大学にてサッカー漬けの日々を送るが、人生に悩み、世界一周の旅へ。旅で出会った同世代の仲間とTABIPPOを創設し代表を務める。卒業後、株式会社オプトへ入社。ソーシャルメディア関連事業の立ち上げに参画。新規事業の立ち上げ、最年少マネージャーの経験などを経て2013年11月に退職。TABIPPOにて創業を果たす。

THE普通大学生、旅に出る

― 清水さんが世界一周にいくきっかけは何だったんですか?


世界一周する2年前、まだ19歳の時にサッカーを現地観戦しにヨーロッパ各国を回ったんです。その時、ドイツの鉄道で世界一周途中の同世代の方に出会いました。当時の僕はほんとに特徴もない大学生。大学では週6日はサッカー漬け、残りの1日は夜中まで遊んで…という生活を送っていたんですね。そんな中、年の変わらない人が自分の足で世界を旅しているって結構衝撃で。

本気で世界一周に行こうと思ったのは、大学3年のとき。就職活動のタイミングでした。就活自体はよくわからないまま、ただただ選考が進んでいって。僕が通っていた東京学芸大学は、多くの人が学校の先生になるため就活をする人は少なく、周囲に相談できる人も限られていていました。更に、部活は平行して行なっていたので、どれも中途半端な状態になってしまい、なんだかすごく違和感を覚えたんです。

そんな時、ずっと頭の片隅にあった「世界一周」を本当にやろうと思ったんです。サッカーも就職活動も世界一周も全て納得行くまでやりきろうって決めて。

まず、計画的に留年するようにして、大学4年次は副部長を務めていたサッカーに打ち込みました。そして引退の翌日に世界一周の旅に出て(笑)。帰国した翌日から、2度目の就職活動をはじめました。

やりたいことができる自分になる

― TABIPPOは世界一周をされた際、各地で出会った仲間と立ち上げたんですよね。


そうです。エジプト、ペルー、ニューヨークなどで出会った同世代の人たちとTABIPPOを設立しました。

帰国してまず思ったのが「自分が旅で得た体験を、もっといろんな人にして欲しい」ということ。その話を旅で出会ったみんなに話すと賛同してくれて、最初は軽い気持ちでイベントを開催し始めたんです。最初は30人程度のイベント規模が、1年後には1400人もの方に来て頂けるくらいに成長しました。


― 清水さんを面白いなと思った一つに学生時代にTABIPPOを立ち上げて、いまでは法人化する程の規模にもなったにも関わらず、新卒でオプト社に就職を一度していることなんです。どうして、就職を一度しようと思ったんですか?


世界一周をして、人生で「やりたいことをやる」っていうのは本当に大切で、素敵なことなんだなということを初めて理解したんです。それこそ、僕がいま生きる上で一番大切にしている考え方です。そして一方で「やりたいことを、やりたいときに、やれる自分である」必要があるとも思いました。

そう思った時、僕は大学生活で本当にサッカーしかしておらず、勉強もなにもしていなかったので全然ダメだなと思ったんです(笑)。だから、社会人になったらとにかく成長をしないといけない。そこで軸としたのが、WEB業界のベンチャー企業です。そして、「この人たちと一緒だったらどんなに辛い仕事でも自分は成長していける」と思えたオプトに入社を決めました。

正直、オプト時代に自慢できるような成果は1つも出せなかったんです。新規事業の立ち上げに関わっていたんですが、本当に失敗ばっかり。そんな中でも、企画から営業、ビジネスの仕組みを体で学びました。2年半、みっちり社会人の基礎から学び、責任のある職務まで任せてもらえたことがいますごく糧となっています。

自分の選択肢を知る、増やす

― 社会人になっても、TABIPPOの活動は定期的に行なっていたそうですね。


TABIPPO 清水直哉

学生ボランティアを募ったり、土日を使って年に1度は規模の大きいイベントを主催していました。年々動員数も増え、2014年2月に行なったイベントは4400人の方に参加していただけました。4月にTABIPPOを法人化し、書籍の出版や企業のマーケティング支援などを行なっています。

そして、これからやっていこうと考えていることが「旅という経験をした若者の価値を世の中で上げていく」ということです。もちろん一概には言えないことはわかっています。ただ僕らは若いうちに「旅」を経験している人たちに、すごい可能性があると思っているんです。

彼らこそ、これからの新しい時代を作っていく人たちであり、グローバルに活躍ができる、真の“グローバル人材”ではないか、とも。

TABIPPOが、そういった旅人のキャリアをサポートして、企業との架け橋になることで、採用担当者が旅という経験を認めるような世の中を作っていく。そうして若いうちに旅を経験した人たちが、世の中でどんどん活躍できるような世界観を作っていくことが僕らがやっていきたいことのひとつでもあります。


― 社会に新しい価値を提示する、非常に面白い取り組みですね。
最後の質問なんですけど、今回の企画のテーマの背景に「なぜイノベーターは旅をするのか?」という問いがあるんです。清水さんは、旅がどんなカタチで人生に影響をあたえると思いますか?


一つ、高城剛さんの言葉を借りると、『アイディアは移動距離に比例する』ということかもしれません。そして旅は「自分の選択肢を知る」そして「選択肢を増やす」きかっけを与えてくれます。

ただ僕の失敗談でもあるんですが、人は選択肢を持ちすぎると逆に悩んじゃうんですよね(笑)。だからこそ、間違った選択をせずに納得のいく選択ができる自分になることが必要ですね。

また個人的な印象ですが、リスクをおかして世界中を旅するような人には、《“あたりまえ”だとされてきた常識や枠組みに縛られず、多様な文化や価値観に柔軟に対応でき、行動が起こせる人》が多いと感じています。

月並みな話かも知れませんが、旅をすることで自分の考えをきちんと整理したり、日本のことがよく分かるんです。いや…、「よく分かってなかった」ということがわかるんですよ(笑)。世界を知ると、日本がいかに特殊か、どれだけ狭い世界か、身にしみて理解できる。その気づきを自分の中で腹落ちしてるかということは、どこでどんなふうに生きていくにも、きっと大切な、貴重なことだと思いますね。


― 「自分の可能性や選択肢を知るために旅に出る」そして、「自分の成し遂げたいことを実現できる自分になる」。なにか現状にくすぶっている人や悩みを抱えている人にとって、行動や考えを変えるきっかけになるお話だったと思います。ありがとうございました!


[取材・文] 松尾彰大



編集 = 松尾彰大


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