16歳の頃。高校へ通い、バイトや部活に励んだり、恋愛で忙しかったり…そんな普通の青春時代を過ごした人が多いのではないだろうか。しかし時代が変わったいま、15歳で起業するという選択も可能になった!?少年起業家が考える、これからの働き方や10代の過ごし方に迫る。
スティーブ・ジョブズ氏がアップルを上場させたのは、彼が25歳のときのこと。リブセンスの村上太一氏も25歳で上場を果たした。サイバーエージェントの藤田晋氏は26歳、ライブドアの堀江貴文氏は27歳、グーグルのラリー・ペイジ氏も27歳で自分の会社を上場させている。株式上場がゴールという気はさらさらないが、ことWEB業界においては、20代の間にIPOを経験している成功者・異端児が少なくない。
若手の成功という視点でみると、スタートアップ企業への数千万円~数億円という出資が珍しくなくなり、成功へのハードルが低くなったように思える。ばらまき型のVCに対して賛否はあるだろうが、特に若手が起業に挑戦する機会が増えたことを考えると、歓迎すべき傾向ではないだろうか。
今回取材をしたのは若手起業家のひとり、三上洋一郎氏。中高生・大学生向けのクラウドファンディングサービスBridgeCampを手掛けるGNEXの代表を務める。GNEXの設立は三上氏が15歳、高校一年のとき。16歳になった現在は、高校を中退し事業に専念している。
多くの16歳といえば、高校に通い、部活やアルバイト、恋愛に精を出している頃だ。この多感な時期に会社経営に一日の大半を注ぐ16歳の起業家は、「働く」ということをどう捉えているのか。彼が描く、若者目線のキャリア論とは。
― 15歳のときに、サムライインキュベートから出資を受けてGNEXを設立したわけですが、そこに至る経緯を聞かせてください。
中学一年の末に学生団体を立ち上げたんですね。中学受験が終わってヒマになって、将来の事を考えたときに、IT関係に就職したいなと考えた時期があって。Twitterでメンバーを集めて、部活みたいな感覚で始めたのが最初ですね。そこで考えたサービスを学生向けのビジネスコンテストに出したところ、サムライインキュベートの審査員特別賞をいただけました。副賞として500万円の出資確約だったんですけど、当時はまだ僕が13歳くらいで。15歳になって会社を設立できるまで、学生団体として継続してきました。
― 15歳になったところで法人登記をして、出資を受けたと。そして今のメイン事業となるBridgeCampが始まるわけですね。学生向けのクラウドファウンディングであるBridgeCampですが、このサービスを手掛けることにした理由と、三上さんが15歳で起業した理由がリンクするかと思うんですね。
自分の通っていた高校は中高一貫校で、同級生の間では「MARCH以上の大学に行けなかったら終わり」みたいな話があったんですね。それってすごく生きづらい、多様性がないって感じて。別に大学に行くことが絶対じゃないし、一流企業以外での仕事もありますし。人それぞれ自由なんですけど、僕は居心地の悪さというか、もっとダイバーシティみたいなものがあればと思っていました。
そんな中で、社会から求められているものが教育機関まで降りてきていないなというジレンマもあって。会社が求めている人材と、大学や高校が育成している人材とが別のベクトルに行っているじゃないですか。
かたやで、日本の教育には素晴らしい所もあって。世界と比較したら識字率や基礎学力はレベルが高いので、そこを維持しつつ社会に求められる人材を教育機関から出すためにどうすればいいかって考えたときに、高校に通いながら社会との接点を持つことだって思ったんです。僕も学生団体をやりつつ、4月までは学校に通っていましたし。辞めなくてもいいんで、社会との接点を持って自分の生き方を考え直す環境が必要だと思ったのが、BridgeCampを始めた理由ですね。
― 社会との接点を持つのは、これまでの大学を卒業してから…というよりも早いほうがいいと。確かに早いに越したことはないんですが、逆にいうと学校での勉強は不要であると?
そこはちょっと違っていて、中学までは勉強しておいた方がいいんだろうと思っているんです。たとえば、カナダって先進国といえば先進国じゃないですか。ただあそこの高校でやっているのって、僕らが小学校のころに学んだかけ算とか割り算とか、一次方程式を軽く触るくらいなんですよね。それでもGDPが低い訳でもなく、先進国としてやっていけているのは訳があるんだろうと。
だから、学力だけで考えたら中学から社会と接点を持っても良いんでしょうね。でも一部の人以外だと素養が少なすぎるので、伸び率があんまりないと思うんですよね。だから高校以上というところで僕らは主張しています。とりあえず中学までは勉強して、基礎学力を持った上で将来どういうことをやりたいのか見極められると思いますしね。高校の段階からにしても、今の社会人の方々と比べたら充分に早いわけで、付加価値を付けられると考えています。
― 社会との接点というと、高校生ならアルバイトという選択がありますよね?
僕はアルバイトもアリだと思っているんですが、ここは単純な理由といろいろ考えている所の二つあって。ひとつは進学校が増えてきている中で、アルバイトが禁止されている高校が山のようにあるんですね。うちもアルバイト禁止でしたし。もうひとつが、視野が狭くなってしまうっていうのがあって。高校の段階で知っているアルバイトって、コンビニの店員とカフェの店員とか、小売・サービス業ぐらいしかない。
要は自分が普段接している業界だけ。そこでアルバイトするよりも、お金はもらえないかもしれないけれど、自分のやりたいことを考えるようなきっかけをつくって、自分の将来に対して投資をできるようなことをしていくことで、価値が上がると思うんです。高校生からすれば1万円を稼ぐって、時間も労力も大きいじゃないですか。その段階で数万円稼ぐよりも、付加価値を高めておけば、将来にわたって数百万円得られるかもしれない。そういった長期の目線をもって、自分のやりたいことに取り組みたいというのが個人的にはありますね。
― 三上さんって同級生と比較したら、数年間早く社会に出たわけです。その中で実感している、働くことやキャリアについて思うことってありますか?大人世代の就職とか働くことへの想いとか。
最終的には全ての人たちが、自分のやりたいことで家族を養っていける社会ができればいいかなって思うんですね。職業としてやりたいことっていうよりは、解決したい社会の雰囲気みたいな話なんですけど。ただ今の就職というレールに乗ってできるか考えたときに、なかなか難しいだろうなって。何十年も働く中で、確実にやりたいことの軸がブレるだろうと思っているんです。転職を余儀なくされるみたいな話で。そのとき心配せずに、自分の価値だけで生きていける社会っていうのができないかなって。
― 自分に価値をつけるとか、キャリアを選択できるようになるために、起業をしてみたり、同世代の学生に考えるきっかけを提供したいと。若者に投資するVCの存在があったり、時代としても後押ししてくれているように思いますね。
お金の使い方としてベンチャー投資っていうのは、すごく良いと思っていて。僕らからすれば500万って大金じゃないですか。投資家の方からすれば大きな出資じゃなく、でも受ける側としたらとてつもなく可能性が広がる金額になる。起業家や国内の産業を育てられるのであれば、意義のあるお金の使い方だと思っているんです。
僕は大学卒業までに、会社を潰した経験を持っておいて良いかもと思う人間で。もちろん、成功させることができたらそれが一番ですよ。潰れてもいいと思いながら会社をやっているわけではないので。つまり、仮に倒産することになっても、その経験を将来に活かせるのであれば価値があるということです。大きな選択に踏み切れる勇気を付けるって言ったらアレですけど、どんな経験でもポジティブに転換すれば、自分にアドバンテージというか、付加価値がつくことになるのかなって。
もちろん社会人の方々って、ちゃんと収益を上げる必要があるのは理解しています。逆に学生のうちは非常に低リスクで。失敗したとしても、大きな経験を持った上で就職するなり、再スタートを切れる。ある種、大人たちに守られているんだと思います。僕で言えば、両親や投資家の方々から支援を受けている状態ですし。
― 特に投資をしてくれたファンドへの責任はありますよね、これは学生だったとか若いとかに関係なく。
何かしらの形で、僕らのモデルだとM&AじゃなくてIPOモデルになってくると思うんですけど、お返ししていきたいです。ファンドから「未成年で上場期待しています」と言っていただくこともありました。夢の拡がる話とは思うのですが、「未成年で上場」というのが目的ではなくて、自分たちの会社や事業の軸をどこに置くか、結果的にどういったEXITが最適なのかを模索していければ良いかと思います。
― 16歳と思えないほど冷静に物事を考えていますね。大学進学も考えているということですが、是非、世の中をいろいろ知った上で、自分の信念を貫いていただきたいなと。16歳らしくない考えを持ちながらも、とても好青年だなって印象でした(笑)。
[取材・文] 城戸内大介
編集 = CAREER HACK
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