2014年4月から社会人となった深澤さん。学生時代は情報工学を専攻し、慶應義塾大学の大学院を卒業。名だたる大手企業を断り、就職先として選んだのはベンチャー企業でした。初心者からエンジニアを志し奮闘中。日々、成長を続ける理系女子へのインタビューです。
WEB・IT業界で働く女性を応援、紹介する『教えてHACK GIRL!』。今回お話を伺ったのは、WEBマーケティング事業などを手がける株式会社Speeeの深澤彩さんです。
深澤さんは慶應義塾大学の大学院まで進み、『香り発生装置』なる機械を用いた匂いの研究をしていたそう。大学名、専攻から想像すると、大手有名企業であったり、専門分野の研究所へ就職する道もあったでしょう。
しかし彼女が選んだのは、WEB系のベンチャー企業でエンジニアという道。しかもエンジニアとして入社しながら、開発の知識や経験はほぼゼロだったとか。「WEBになんとなく興味があった」「自分でサービスをつくれたらいいかな…」という思いで飛び込んだ深澤さん。
会社選びの基準とエンジニアとしての奮闘について伺いました。就活・転職で悩むあなたに贈る、ベンチャー企業に入社したリケジョの奮闘記です。
― 大学院時代の同級生、ほとんどの人が大手企業に就職したそうですが、深澤さんが選んだのはベンチャー企業でした。なぜベンチャーに就職を?いわゆる有名企業に入ることもできたと思うんですよ。
同じ情報工学科からベンチャーに行ったのは、私ともう一人ぐらいですね。親からは「潰れない?」って心配されちゃって(笑)。
研究していた方面を勧められたこともありました。でも就職に直面した時に「WEBディレクターになりたい」と思うようになったんですね。もともと中学時代からインターネットに触れていて、自分でもサービスをつくりたいなと、なんとなく考えていました。
いくつか大手の話も聞かせてもらったんですね。でも大手だと、「この大きいサービスの一部、ここだけ」という話を聞くことが多くて、自分の中では全然響かなかった。外資系投資銀行のジョブにも参加したんですが、それもちょっと違うかなって。
ベンチャーだと、人が少ないこともあるんでしょうけど、「最初から最後まで、自分の責任でつくってもらうよ」という話を聞いていたので、じゃあ、ベンチャーのほうが良いのかなと思ったんです。
最後、他の会社とどっちにするかすごい悩んでたところがあって。1社は開発のスパンが1年がかりで、成果が出るまで1年必要でした。多分、意思決定とかも遅くなったりすると思うんですけど、スピード感があるほうが自分のためになるんじゃないかと思って。Speeeはどうかというと、任せてもらえる範囲やスピード感については期待ができそうでした。
あとは一緒に働く人の部分。Speeeの「いいな」と思ったのは、面談やインターン中に会う人みんな、ポジティブなフィードバックをくださるところなんです。どれもが的確でしたし、そのときの自分目線だったのが強く印象に残っていて。同じような条件の会社があったとしたら、最後は人で選ぶというのも大事だと思いました。
― 大手に行った友だちと比べて感じることってありますか?ぶっちゃけ大手行っておけばよかったかなって、あるかもしれないですし。
大手では研修期間が1〜2ヶ月くらいあったみたいなんですけど、「結構ひま」って話があったりして。人によると思うんですが、「ひますぎて9時に寝る」(笑)という声も聞いたり……。
対して自分は、入社当時からずっと苦しんできました。「開発、大変どうしよう!」みたいな。「CSSって何?」というくらい、エンジニアリングは初心者状態でしたから。
必死に勉強しましたよ。内定後にアルバイトで働かせていただいたのですが、その間にHTMLやCSS、Java、PHP、データベースもいじって、だんだん幅を広げさせていただいて。入社をしたタイミングでは、「まるっとシステム、これ作ってね」って言われて、私ともう一人の同期にメンターがついて開発という。
その後も別のシステムを任せてもらったり、リーダーとしてプロジェクトをまとめるような役割も任せてもらってます。まだ一年目なのに、色々な経験ができてるなって。本音を言うと毎日が必死過ぎて、「大手よりも」とか「経験を積めてる」なんて考える余裕はないんですけどね(笑)。
― 任される仕事の範囲やスピード感を考えると、大手じゃなくてベンチャーで良かったっていう実感があるんですね。
それはあります。現在、私が携わっているのは、外向けのサービスではなく、社内で利用するシステムなんですね。エンジニアリングのスキルがあったら、ユーザー向けのサービスに携わっていたかもしれませんが、私はほとんど初心者だったこともあり、社内向けの開発を任されているんです。
ユーザー向けのサービスでも、どこかの一部分だったらできたかもしれない。でも、やっぱり自分でまるっと開発するほうが、すべての工程に携わりながら多くの経験を積めると思うんです。
社内システムとはいえ、経営陣が利用するものなど重要な開発を任せていただいています。言われた通りにつくるのではなく、ヒアリングを重ねながら、仕様定義から行なっていく。自分の強みであるコミュニケーションを活かしながら、全社理解にも繋がる成長機会だと思います。
エンジニアリングをするにしてもチームをまとめるにしても、一部分じゃないから多くの成功や失敗ができる。これは、大手企業にないメリットかもしれません。
― ベンチャー企業を選んで、エンジニアとして歩き始めたわけですが。この先はどんなキャリアプランを描いていますか?5年後でも10年後でも。
いつかわからないですけど数年後には、出産したりすると思うんですけれども、その後も仕事を続けていきたいとは思っているんですね。でも私、赤ちゃん生まれたらずっとそばにいたいなと思うんですけど、なかなか社会復帰というか働くの難しいかなっていう印象がありました。
そんな折に上司から「エンジニアは、働くことと家庭を両立させやすい仕事だよ」と言われて、確かに開発なら家でもできるし、フリーランスみたいな働き方もあるなって。そういう状況になって依頼をもらえたときに、さらっとつくれるように練習しているところです。
― 練習っていうのは仕事以外でも?どんな物をつくっているんですか?
今ちょっとあんまり進めてないんですけども、やろうとしているのは音楽関連。音楽業界ってWEBサービスが少ないんですよ。特に私が趣味でもやっているオーケストラの情報。WEBスクレイピングを用いて、ホールの演奏会情報を取ってきて、まとめて見れるサイトをつくってみたいなと思って。
あとは、この曲をやっている演奏会を探したいという要望が、私の中に強くありまして(笑)。探せないんですよ、ネットで演奏会とか調べても。日づけで絞り込めないし、全然ヒットしないので、そこが困ってて。じゃあ、それをつくってしまえば、練習になるし私の欲求も満たせる。趣味と実益を兼ねることになるなと思ってます。
― なるほど。エンジニア初心者だったところから、将来の事まで考えて日々、チャレンジなさっているんですね。まずはオーケストラの情報サイトを完成させて(笑)、エンジニアとして一層のスキルアップを目指してください。応援しています。
[取材・文] 城戸内大介
編集 = CAREER HACK
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