2015.06.09
ネイキッドのクリエイティブ思想 「クリエイターは異種配合でジャンルを超える」

ネイキッドのクリエイティブ思想 「クリエイターは異種配合でジャンルを超える」

東京駅の3Dプロジェクションマッピングを手掛けたことでも知られるネイキッドの代表・村松亮太郎さんと大屋友紀雄さんへのインタビュー。97年に創業したネイキッドはいかにしてさまざまななアウトプットを出し続けるのか?

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村松亮太郎率いるネイキッドとは?

動画/インスタレーション/デリレストラン/TV/映画/広告……

表現する媒体を問わない活動で、注目作品を世に出し続けているクリエイティブ集団 ネイキッド 。映画や動画/WEB/ライティング/デザインなどの異なるバックグラウンドをもったメンバーによって1997年に創業されたネイキッドは、いち早くモーショングラフィックスなどを用いたタイトルバックを制作。業界内でも一目置かれる地位を築いてきた。

最近では、東京駅の3Dプロジェクションマッピング『TOKYO HIKARI VISION』や大河ドラマ『軍師官兵衛』のオープニングタイトルバック、ネイキッドが拠点とする代々木上原の「街全体の体験をデザインする」というコンセプトで生まれた体験型飲食店『9STORIES』など、話題になるクリエイティブを数多く手掛けている。


老舗とも呼べるクリエイティブカンパニーは、なぜジャンルを問わないアウトプットを成し遂げ続けるのか。

「SCENE(情景)を創るクリエイティブワークを手掛けるのがいまのネイキッド」と語る代表の村松亮太郎さんと大屋友紀雄さんへのインタビューからネイキッドのクリエイティブ思想に迫った。

デジタル第一世代の制作会社

― いきなりちょっと失礼な話かもしれないですが、ネイキッドってなんの会社なのか形容しにくいんです。3Dプロジェクションマッピングなどの代表作は数多くありますが、創業は1997年。単なる制作会社ではないですし、○○の会社と一言で言いづらいというか。


村松:
そうですね。よく言われます(笑)。けど、そんな印象を持ってくださるのはネイキッドの姿勢をよく表してるんじゃないかと思います。

大屋:
私たちはデジタル映像第一世代の制作会社ですが、サイバーエージェントさんやライブドアさんとほぼ同じタイミングで創業しています。同じ時代の創業ではありますが、僕らはなるべく目立たないように、好きなことやりたいことをやり続けてきた感じなんです。


― 創業当初、「コレをやろう」みたいなことってあったんですか?


村松:
僕は映画が撮りたかったんです。ショートフィルムなんかはネイキッドとしても個人としても手掛けています。まぁ、初期にネイキッドが請けた仕事は、友だちの年賀状デザインでしたけど(笑)。

当時は映画を撮るのに10年くらい下積みを経ないといけない時代で、だったら自分たちでやっちゃえと。映像を撮る機材も背伸びすればなんとか手に届く価格に落ち着きだしていて、デザインと映像を掛けあわせたら面白いんじゃないかと思ったんです。それから色んなアウトプットにつながって。

大屋:
当時は競合となるような制作会社はほとんどいなかったし、いまもどこかと競争して仕事をするという感じではありません。制作だけじゃなくホントに「何でもやる会社」というイメージでしょうか。

NAKED 村松 大屋

(左/大屋友紀雄さん 右/村松亮太郎さん)

アウトプットはトカゲの尻尾。本質は変わらない。

― 新しいチャレンジには、技術から生まれるものとアイデアやコンセプトから生まれるものがあると思います。ネイキッドはどちらのアプローチを意識されているのでしょうか?


村松:
絶対的な順序はネイキッドの中でもないですね。時代や技術、案件などが複合的に絡み合ってアウトプットに繋がるものなので。そもそも、「分ける」という考え方そのものがあまり好きでないんです。

ただ、社内では技術や様々なジャンルの情報が飛び交って共有されていますし、自分たちがいち早くチャレンジしていることもあるので、その下準備というか、どんなものにも対応できる文化はあるんじゃないかな。

大屋:
例を挙げると、モーショングラフィックスは当時誰もやっていなかったデザインと映像をデジタルによって掛け合わせで生まれたジャンル。どちらかというと、技術やソフトウェアの発達から生まれたものだと思います。

逆に3Dプロジェクションマッピングなんかは、前から似たようなものは世の中に存在していて。ただネイキッドが「SCENEを創る」というコンセプトでアプローチした結果、”新しい表現”として受け入れられたり。


― いち早く取り組んだ表現方法で認知を高めると、○○の会社、と自社を売り出したり、言いたくなるではないかとも思います。


村松:
いや、ネイキッドはいかにして表舞台に立たないかを考えて、ずっと好きなこと、やりたいことをやってた会社なんです(笑)。だからココ数年、いろんな見られ方をされるようになってしまって、「やばい、見つかってしまった」という感じですね。

ネイキッドは創業当初から「トカゲの尻尾論」みたいなことを言い続けていて。どういうことかというと、その時々のアウトプット(=トカゲの尻尾)は変わっていくけど、ネイキッドという会社の本質は変わらないと。そしてまた再生し続けていきます。


― 意図的に目立たないようにしたわけは?


村松:
ポートフォリオになるような代表的な作品を手がけること自体はとてもいいことだと思います。ただ、一番避けたかったのは消費されることなんです。固定されたイメージを持たれると、どうしてもそっちに引っ張られるじゃないですか。それに反発しようにも、意図しないベクトルを向いて自滅しちゃうことだってある。

大屋:
技術やアイデアのコモディティ化が大前提になっている時代には、”トカゲの尻尾論”のように、本質だけは変わらないようにしながら、簡単に真似されたり、安くならないようにするしかなかったんですね。

ただ東京駅の3Dプロジェクションマッピングから風向きが変わって、否が応でも表舞台に出てしまって。そうなったらもう一気にアクセルを踏もうと。それがいい意味でいまの私たちのプレッシャーにもなっています。

クリエイターの”プライベートワーク”はガス抜き化に注意

― 脱皮を繰り返す手段として、ビジネスの絡まない場所で実験を行なうクリエイティブ企業も多いと思います。ネイキッドでも積極的にそういった活動を行なっているんですか?


村松:
特に会社が禁止したり推奨してるということはないかな。ただこの話、履き違えちゃいけないことってあると思うんですよ。

というのも、ある意味プライベートワークって崇高なものとして捉えられがちじゃないですか。創作活動って、他者からの評価を伴うものだと思うんですけど、自己満足だったり、「自分で勝手にやっている」ってある意味"逃げ”だし、幼稚な行為にもなりかねないんじゃないかと思うこともあって。

大屋:
学生とかなら別ですが、僕らはプロとしてアイデアを形にすることでお金をもらっているのに、言い訳で固める活動に落ち着かないかって思うところはありますよね。僕らはもう18年もやってるからこんなこと思っちゃうのかな(笑) 。また、私自身は、やりたいことをちゃんとビジネスとして形にするというのも、クリエイティブの一環だと思っています。

村松:
言い方を変えると、クライアントワークでお金を稼ぎたい会社が、ガス抜きにそういう風に言ってやらせてるようにしか僕は見えないとも思いますね。それにみんな踊らされてるだけなんじゃないのっていう、身も蓋もないですけど。


― ネイキッドではどうされてるんですか?


大屋:
ネイキッドは異種配合を好む気質があるんです。受けた仕事を自分色に頑張って染め上げるっていう感じのほうが強いかもしれないですね。

村松:
あと、クリエイターに無茶振りする。実現しようとしている制作物に関する知識や経験がなくてもどんどんアサインしたり、本人が「やる!」といってスタートしたり。クリエイターの視野を強制的に広げさせていくことを心がけています。

あと、よっぽど筋の悪い仕事でない限り、会社として仕事は断らないです。キャパシティの問題なんかがない限り、仕事を選んだりしないです。ウチそんな立場でもないしね(笑)。


― 独立系の制作会社としてネイキッドがなぜ魅力的でいられるのか、分かった気がします。刺激的なお話、ありがとうございました!



文 = 松尾彰大


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