100万口コミを突破したマンション口コミサイト・マンションノート。月間90万UUを集めるまでに成長したサービスを創業期から支えるのが今回お話を伺った小原氏だ。フロントエンド、サーバサイドの両面を一人で担い続け、現在も少人数での開発を続けるマンションノートの開発スタイルとは?
▽博報堂出戻りと起業を経て見つけた「絶対正義」の口コミサービス|マンションノート 藤井真人
【Profile】
株式会社レンガ 取締役
小原和磨 Kazuma Ohara
大学を中退して、2004年にシステム開発会社へ入社。20代前半からリードエンジニアとして10名のエンジニアを率いる。2009年にエニグモに入社。2011年、ITベンチャーを取締役CTOとして共同創業。2012年、創業メンバーとしてレンガに参画し、現在は開発担当取締役としてシステムの全領域を担当する。
― 90万UUまで成長したマンションノートですが、どのようにして少人数のエンジニア・デザイナーで完全内製しているんでしょうか。
「できるだけ作らない」と「むちゃくちゃ働く」です(苦笑)
施策の検討などをしていると「ないよりもあったほうがいいよね」という感じで、ついつい作らなきゃいけない機能が増えていってしまう事が多いんですね。
当然、作るものが増えればそれだけ時間がかかってしまうもの。少人数体制という前提でサービスを最速で成長させるには「なくていいものはないほうがいいよね」という考え方になってきています。
初期の頃はそこまでそういう考え方が会社内で定着していなかったので、ローンチの前に削除する事になった機能もたくさん作っていました(苦笑)。
その後、マンションノートの運営を続けていくうちに、「あったほうがいいよね」という事で作った小さな機能がほとんど使われないといった事も見られるようになりました。むしろ機能や要素を減らした方がユーザーの反応が良くなる事もあったりして。それなら検討や開発の時間がもったいないという事で「ないほうがいいよね」という考え方が会社の文化になり、そもそも「作らなきゃいけない量を減らす」というスタイルになっています。
とは言え開発リソースは限られているので、常にフル稼働でむちゃくちゃ働いています。現在もエンジニアが2名、デザイナーが1名の体制で開発を続けています。
― 作る作らないの判断基準や優先順位付けは?
みんなでディスカッションしながら判断しています。誰かが強烈なオーナーシップを持っていて決めると言うよりは、ユーザーにどれだけ価値を提供できるかどうかにフォーカスして決める感じですね。
具体的な流れとしてはまず、アイデアや課題をみんなで持ち寄り、ディスカッションを通してブラッシュアップします。そこから施策に落としこんで、それぞれの施策の価値と工数を想定しながら優先順位を決めていきます。
これを社長からカスタマーサポートまで全員参加でやっているので、検討には時間がかかってしまう事も多いのですが、そのぶん一歩一歩着実に進む事ができているように感じています。
こういったプロセスを「なくていいものはないほうがいいよね」という感覚をみんなが持って進めていると自然と作らなきゃいけない量は減っていきますね。
プロセスのチューニングは永遠の課題だとは思いますが、こういったプロセスを経る毎にメンバーもこなれてきていて、プロセス自体の改善案も出てくるので、良い方向に進めているのはないかと思います。
― 選んだ選択が「間違っていた」という場合もあるかと思います。
当然あります。なので、新しい施策をリリースした後は細くモニタリングや調整を行ないながら「何が間違っていたのか」について理解を深める事も重要です。私たちの場合は少人数という事もあり、ひとつの的(ゴール)に向かって一本道を進むイメージでなんです。もちろんまっすぐ直線の一本道を進み続けるのが理想ですが「間違っていた」「期待と違った」となればすぐに別の道を探るようにしています。
いまやらなきゃいけないタスクは450個も残っている状態なんです。全部できたらいいのは間違いないんですが、開発ラインがほぼ1本しかないので、ラインを増やしていく取り組みは今後積極的に行ないたいと思っています。
― 小原さんはフロントもバックエンドも、どちらもこなすエンジニアだと伺っています。ご自身のキャリアを伺えますか?
子供の頃からの夢がプログラマだったんです。図書室でプログラミングの本を探して意味もわからないのに読んでいるような小学生でした(笑)。実際にプログラムに最初に触れたのは高校の時にPCを購入してからです。
それからプログラムを学ぶには実践した方が早いのではないかと考えて、大学を2年で中退してシステム開発会社で5年くらい働きました。最初はプログラミングばかりだったのですが、だんだんと設計や要件定義、テスト、保守などいろいろな工程に携われたので、多くのスキルを身につける事ができました。また、20代前半のうちに開発チームのリーダーとして10人程度のチームを任せていただけたのも良い経験だったと思います。
― 実装スキルとマネジメント、エンジニアに求められるどちらの経験も20代で一気に経験されたんですね。
大学をやめてまで職業エンジニアになったので、ハードワークは当たり前という感覚でした。休日出勤も結構していましたし、休みだとしてもプログラミングの勉強ばかりしていて。ただ、好きでやっているので何の苦もなく、気がついたら5年くらい経っていましたね(笑)
それから「頑張って作ったモノもリリースすると終わりになってしまうのが寂しい」というか「一つのものをしっかり作り続けてみたい」というような気持ちがでてきたので、エニグモに入社してBUYMAの開発に携わりました。代表の藤井と出会ったのもそのタイミングです。その後ベンチャーの創業にCTOとして参画して1年で6つくらいのサービスを立ち上げた後、レンガに創業メンバーとしてジョインしました。
― さらにtoCとサービス立ち上げ、CTOの経験されたからこそ、レンガで少人数でプロダクトをローンチさせ成長まで請け負えるエンジニアに。
経験もそうなんですけど、僕は好奇心が強い方で、割と何にでも興味を持ちやすいので、バックエンドであってもフロントエンドであっても大きな違いやハードルは感じず、既存の仕組みを理解して、どうしたらうまくいくんだろうとずっと考えている人間なんです。
それがだんだん広がっていくと、使いやすいサービスってどういうものだろう、役に立つサービスってどういうものだろう、どうすれば良いサービスを作っていけるのだろうとか、そういう範囲まで興味が移ってきていて、今のところ日々楽しく仕事をさせていただいております(笑)
― 子供の頃夢見ていた職業につけているからですね!
たしかにそうですね(笑)。全く飽きないです。
― それでは最後に、スタートアップで少人数開発に携わるエンジニアに必要なスキルや考え方は何だと思われますか?
組織やチームメンバーによってそれぞれの会社で変わってくると思いますが「新しい分野や自分の不得意な分野でも興味関心を持って取り組める」ことかと思います。僕は社内で「慣れる事に慣れましょう」という感じで話すんですが、自分はココマデというような不要な線引をせずに、どんどんスキルと経験を獲得していく姿勢が大事なのではないでしょうか。スタートアップでは何もかもが絶対的に不足していますからね(笑)
― 少人数開発には選択と集中、そして各々の高いモチベーションが必須というお話は、創業したばかりのスタートアップや新規事業に携わる人にとても参考になったのではないかと思います。ありがとうございました!
文 = 松尾彰大
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